
昨日の、
空力とは 1の続きです。
空力特性を考えるには、空気抵抗係数、揚力、ヨーイングが重要なんですが、ヨーイングまでを考えて車体デザイン、設計している市販車は無いと思います。
ヨーイングは、主に横風の影響に効いてくるのですが、一般的にCD値の減少とヨーイングの影響は、形状的にトレードオフになることが多いです。
CD値を下げると言うことは、車体に沿って空気をなめらかに流して、渦が発生しないようにきれいに車体から剥離させると言うことですが、そうすると横風に弱くなってきます。
横風に強くするには、エアダムスカートなど車両前部の圧力を増やしてやるか、車体後半の横面積を増やす(くさび形)と、乱れた進路を引き戻す力が発生して安定します。
先にも書いたように、巷に溢れるセダンが軒並みCD値0.3を切るほどになったのは、コンピュータの進歩による流体シミュレーションの進歩が、大きく貢献しているのは間違いありません。
日本車でも、底面にカバーが付けられたり、マフラーなど処理されたり、タイヤハウス内の空気の流れも計算されるようになってきました。
W203でCD値0.26となっていますが、スケールモデルによる実験が行われていた時代は、長らくCD値0.3が一つの壁でした。
今のレガシィは、フロントタイヤの前を見ると、何か高さ2cmくらいの板が出ているのを見つけることが出来るはずです。
この小さな板、10年前だとポルシェやベンツなど特にヨーロッパ車の多くには付いていたにも関わらず、日本車ではまず見られないもので、評論家も気が付いていませんでしたし、気が付いても何か空力に関係があるのではないか?程度の知識でした。
今でも評論家はそうだと思いますが、日本の自動車メーカーではこの小さな板の重要性に気が付きました。
こうした整流板は、ボルッテックスジェネレーター(Vortex Generatot=渦巻発生器)と呼ばれ、飛行機などでは応用されているものでしたが、走行時は板の前の圧力が高くなり、後ろ側の低圧になる部分に高圧部から空気が流れ込み、安定した渦を発生させることによって、剥離しかかった境界層を安定させて、トータルで抗力を減らすと言うものです。
フロントタイヤ前にこのVGがあることによって、高速走行時のタイヤハウス内の空気の流れが安定して、ハイドロプレーニングの発生も抑えることが可能のようです。
http://microaero.com/pages/k__vgkits.html
↑では、小型飛行機ようですが、マイクロVGのキットも売られているので、オカルトグッズを試すならば、これをボンネットやルーフなどに取り付けることにより、空気の剥離を防ぎCD値が向上して燃費や最高速に効きそうです。
VGは飛行機が本家だと思いますが、元はフクロウの羽根が音を立てないことにヒントを得て開発されたと言われ、F1だけでなく新幹線などに応用されている実績あるものです。
しかし、市販車では格好や安全性の問題から、目立つところには装着しないでしょうから、VGによる空力改善の余地は残されているはずです(笑)
また最近は、CD値の他にゼロリフトなどと、フロント、リアの揚力も取り上げられる事が増えてきました。
R34GT-Rなどは、200km/h時に約150kgのダウンフォースがかかるように、デフューザーやリアウィングが付けられていますし(ウィング角度によって調整可能)、フェラーリなどはボディだけで同じ位のダウンフォースを得ていると言われます。
ダウンフォースも、フロントを強くするとオーバーステア傾向になるので、一般的にはリアを強くして、安定性は増すようにバランスを取っています。
アウトバーンのある国では、250km/hでリミッターが働くよう、紳士協定があるそうですが、それもオーナーの判断で外すことが可能で、300km/h近く速度の出る車が各社から販売されています。
そのような車でも、インプやランEVOのような巨大ウィング無しで安定性を確保できるようになったのも、初期のアウディTTが高速走行時の安定性を確保できなかったのも空力設計のせいであることを考えると、空力って大切ですね。
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技術解説 | クルマ
Posted at
2005/04/12 13:49:12