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イイね!
2006年04月19日

バネ下荷重の低減効果とは

ご質問シリーズ、
バネ下荷重の低減はバネ上の10倍の効果があるというのは本当か?
オカルトではないか?との質問がありましたので考えてみたいと思います。

よく雑誌やホイールメーカーの広告に、バネ下荷重の低減は、バネ上の○倍の効果と書かれていますが、この○倍という効果の値は4~15くらいの幅があり明確なデータはありません。

また、何がどう10倍なのか説明されているものもみたこともありませんが、車が好きな人は皆信じて、バネ下荷重の低減は10倍近い効果があると言います!

この数字を突き詰めていくと、0-400mのタイムへの影響度合いであったり、車内振動計の評価であったりはっきりしないしのが実状です。

某国産大手タイヤメーカーによると、バネ下荷重の影響を評価したことは無いと聞いたことがありますが、それは本当かもしれません。

それは、何を(加速、振動、燃費など)、どんな条件で比較するのかで変わるので当たり前ですが、バネ下荷重の低減はバネ上を軽量化するよりも、色々な意味で効果があるのは疑いようの無い事実ですし、物理法則からも説明できます。


例えば、模型のタイヤなど同じ直径で、軽い円盤と重たい円盤を、軸を持って回したり、転がしてみれば違いがわかるはずです。

ホイール(タイヤ)などの回転体は、フライホイール効果(GD^2)があるので、軽いほど加速が良くなりますし、発進停止が多いほど燃費は改善されます。

また、回転体でないサスの軽量化は、動くときの慣性が小さくなるので、追従性が良くなると予想できます。

先に、数字の根拠が見えにくいと書きましたが、例えば加速と燃費を考える場合は回転体の持つエネルギーが効いてきますので、バネ下と言ってもブレーキディスクやタイヤ・ホイールの軽量化が効きます。

一方で振動に対しては、バネ下についている重量の慣性力が効いてきますので、ブレーキキャリパーなどの固定物の重量も効いてきます。


 ご質問では、ホイールの軽量化だったのでそれを例に考えてみます。

剛体の運動エネルギーは、重心の運動エネルギー(mv^2)/2と、重心まわりの回転のエネルギー(Iω^2)/2(慣性モーメントI=(mD^2)/8)の和になることから、具体的に、215・45/R17の標準ホイールが9.3kg(+タイヤ10kg)で、これを軽量の6.3kg(+タイヤ10kg)にした場合・・・簡略化のため重量分布は一様とすると、タイヤ直径は0.625mで軸はタイヤ重心を通るので、重心まわりの回転エネルギーを考えると、

標準のI=0.942kg・m^2
軽量のI=0.796kg・m^2

となり、1本のタイヤの持つエネルギーの差は、0.073ω^2Jで4本では0.292ω^2J

時速60kmにおけるωは、16.98π rad/sなので、そこまで加速するエネルギーの差は830Jとなる。

また、そのものの運動エネルギーは、1本あたり3kgの差なので25Jで4本で100Jの差となる。

 タイヤ1本あたり3kgの軽量化、合計で12kgのバネ下重量の低減によって、60km/hまでの加速におけるエネルギーで930Jの差が出る。

 これは、大きいのか小さいのか...

 今、ガソリンから走行するまでの総合効率をざっと15%とすると、ガソリン1gで7500Jのエネルギーとなるので、0-60km/hの加速を8回行ってわずか0.13%程度の燃費改善。

しかし、この合計エネルギー930Jをバネ上で減らそうとすると、111.6kgの軽量化が必要なので、その差は111.6/12で9.3となり、あながち10倍の効果は嘘とも言えない!


 振動(乗り心地)に関する評価はもっと複雑になるので興味のある人だけ暇つぶしに考えてもらうと良いが、乗り心地は逆にバネ上が重くなっても良くなるし、単純にバネ下を軽くしても、バネとダンパーを替えなければダンパーが勝ちすぎて乗り心地が良くなるとも限らない。

 と言うことで、エネルギー面から考えると、バネ上の10倍近い効果があると言えるが、実燃費に現れる差は1%程度と気温や運転の仕方によって隠れるような誤差範囲と考える。

 また、乗り心地に関しては人間は思いのほか感度の良いセンサーなので、バタつき感の変化などを感じるが、車内にセンサーを積んで計測すると、段差を超えるときのGの変化は下2桁目のオーダーでしょう。

 こう考えると、な~んだと思うかもしれませんが、レース、特にF1のように加減速が多く、最高速も300km/hに届くような世界では、ホイールの軽量化は決して無視できない差になって現れるので、こぞって軽量の鍛造ホイールを採用します。

 結論、
◇加速に要するエネルギーについて言えばバネ下荷重の低減は、バネ上の10倍の効果 というのはあながち間違いではない。
◇他の燃費、乗り心地については条件によって差が大きいので○倍と言うには無理があ るが、効果はある。
◇乗り心地は、バネ上荷重を同じとした場合で、かつバネ下の軽量化に合わせてバネ、 ダンパーを調整すると乗り心地は良くなる。
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Posted at 2006/04/19 21:11:07

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この記事へのコメント

2006年4月19日 21:27
加減速の効率アップには必ず効きます。
ホイルよりも、ブレーキカーボン化が軽量化にはものすごく効くようです。
でも、足回りの軽量化の一番の問題はコストパフォーマンス。
予算が限られる私どもプライベーターでは優先順位が重要です。
同じ費用でタイムを稼げるところはどこからなのかという順番ですね。
トータルで問題項目を列挙して、それぞれの項目において秒あたりいくらなのかを計算していく。
足回りの軽量化がその中の何番目になるのか、そしてそのことによって失うもの、もしくはバランス等の問題で調整項目をクリアできるのか?
私は最優先課題はおなかの軽量化です。笑
コメントへの返答
2006年4月19日 23:30
こんばんは!
レースなど加減速が多く、タイムを競う場合にはタイヤ、ホイール、ブレーキ他の回転体のモーメント低減は効きますね。クラッチ、フライホイールなどの交換によって、エンジンの性格が変わったようになりますし...
足回りの軽量化、高剛性化はかなり優先順位は高いでしょう!やはりホイール1本250グラム落とせば、お腹回り10キロに匹敵するならば、お腹周りの優先順位は(^^;
2006年4月19日 21:29
追加です。
軽量化しても、活かせるサスセッティングと活かせるサスの精度を上げなければをある意味無駄どころか、タイムが落ちることもあり得るようです。

とにかくトータルデザインです。気がつかないことが意外と大きな壁になって立ちはだかる世界ですね。
一つだけ改善しても結果が出ないことで落ち込むことばかりです。笑
コメントへの返答
2006年4月19日 23:38
フェラーリは良く見たことがないのですが、ピロアッパーはじめリンクのピロ化は消耗部品を増やすけど、非常に効果がありますね。

煮詰まってくるほど、1ヶ所を詰めても効果は小さく、全体的にバランス良くレベルアップを図る事が必要になりますね。きっと、その領域まできているのでしょう。

軽量化→馬力アップ→補強→足回り強化→最初に戻る(笑)
2006年4月20日 7:46
うーん、感覚的な難しい話を計算でやってみる所が凄いですね。
サーキットのように結果がすべての場合と、複雑な条件と目的のバランスが大切な公道は別ですが、それでも人は時々微妙な変化も好悪判断していきますよね←なにが正しいかはまた難しいですが(汗)。
本来は重量を変えたらバランスを取り直すのが正しいです。が、多少アンバランスでも結構楽しいですよ・・・なんか言い訳っぽいですがw。
コメントへの返答
2006年4月20日 21:48
人のセンサは相対比較においては敏感ですけど、すぐに基準が分からなくなるところが難ありです。でも、インチアップなどは誰でも変化がわかりますよね。

言われるように、とりあえずやってみて、なんだかバタつくようになっちゃったなぁとか楽しいです。私の場合、やり始めるととことんハマりますので危険ですが(^^;
2006年4月21日 9:16
質問したげしゅです。丁寧な解説、ありがとうございます!

>わずか0.13%程度の燃費改善。
>111.6kgの軽量化が必要なので、その差は111.6/12で9.3となり、あながち10倍の効果は嘘とも言えない!

うう~む、そうですか・・・
(某欧州ブランド高級ホイールさん、ごめんなさい)
嬉しいような、納得できないような、複雑な気分です。
燃費って112キロ軽量化しても0.13%しか改善されないものでしょうか?0.13%って誤差ですよね・・・
やはり「○倍の効果」というのは加速(減速)度によるのでしょうね。クルージングではぜんぜん効かないわけですし。
自分の体感では、発進の出だしより高速道路の追越加速に効果があるように思います。あくまで体感ですが。加速度は発進より低いはずですが、絶対的な慣性が大きいせいでしょうか?
それにしても、56kgの人ふたり分、ほどではないような・・・

燃費に関しては、加速が良く(たぶん!)なった分加速してしまっているので、全く改善していません。

まあ、お金をかけたので「計算上は10倍!」てことで納得します。
ホントにありがとうございました。

そのうちオイルのことも教えてくださいね。0W20、入れてみたい・・・(ASEAじゃなくACEAでしたね、すいません)
コメントへの返答
2006年4月22日 1:27
こんばんは!

酔っぱらって書いたので、要点がいまいちですがそう言うことです(笑)
でも、バネ下荷重の低減は、車のパフォーマンスを上げるには優先順位の高い有効な手段ですので、ホイールを替えるならBBSなどの鍛造物にするのは、間違いの無い選択です。

良く分からないオカルトチューンより1024倍は効果があるし、ドレスアップの満足度を加えると4096倍くらいは効果があるので投資としては間違っていません。

燃費については、0発進の60km/hまでの加速でを8回としていますが、実際は通常走行の中でもっと頻繁に加減速をしているので効いてきますし、エンジン出力の比率からみると1本3kgの軽量化は、ほとんどの人が運転してわかるくらい加速の体感に差が出る事でしょう。

高速からの追い越し加速のように走行抵抗に大きな力を使っている時(エンジンが8割くらいの力を絞り出している状態)から、さらに加速する際にはバネ下のホイール、ブレーキなど回転体のモーメントを減らすことは加速感に効いてきます。

燃費についての評価は、一番難しいです。燃費を記録すると、街乗りから高速で8~13km/lとか大幅に差があるように、条件以上に運転パターンに左右されるからです。

げしゅさんが書かれているように、加速が良くなった分踏んでいる(踏んでいるから加速が良い?)、燃費が良くなると思い無意識にアクセルを抜いているという運転状況と、気温による空気密度の変化など何が原因かふつう判断出来ないです。

でも一番は、払ったお金に対して効果や見た目など含めて自分自身が満足できるかですから!
2006年8月29日 22:23
12kgのバネ下軽量化がバネ上111.6kg相当というのは効果が大きすぎると思ったので再計算してみました。

タイヤホイールを均一な円板として扱うなら
その慣性モーメントは1/2Mr^2です。
直線運動としての慣性はもちろんM。
速度vで走るとき、角速度ω=v/r。
タイヤが持つ回転エネルギーは
1/2Iω^2=1/2*(1/2*Mr^2)*(v/r)^2=1/4Mv^2
一方タイヤの運動エネルギーの方は1/2Mv^2なので、合計で3/4Mv^2。半径rが消えます。

つまり、質量分布が均一なタイヤは、回転しないときと比べて1.5倍のエネルギーを蓄えることになります。よってタイヤの軽量化による慣性軽減は、バネ上の1.5倍の質量の削減に相当することになります。

>時速60kmにおけるωは、16.98π rad/sなので、
時速60km(16.67m/s)におけるω=円周速度/半径=16.67/0.625=26.67rad/sでは?ここでπは出てこないと思います。
19.3kgのタイヤ+ホイールの慣性モーメントも0.5*19.3*0.625^2=3.8程度にはなると思いますがいかがでしょうか?

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