2006年04月29日
エステルベースのオイルと製造国による違いとは
エンジンオイルについてのご質問をいただいていたので、思いつくままに書いてみます。
オイルについては、過去にも色々と書いていますので興味のあるかたは、カテゴリのもくじあたりから探してみて下さい。
疑問1:エステルは水分に弱いそうですが、並行ものと正規ものって本当に違うのでしょうか?エステル主成分のオイルは日本で使うには向いていないとの説もありますが・・・
◇見解
そもそも、エステルとは?というところから考えてみましょう。
モチュールなどが出している、とっても高いオイルはエステルベースであることが書かれているので、何だか素晴らしい成分のように思われていますが、高校の化学で習っているし、どの家庭の台所にあるものです。
化学的に言うと、アルコールと酸(カルボン酸)を反応させて、アルコールが脱水縮合して出来る、-OCOC-や-COOC-のような結合を持った物の総称です。
独特のフルーツのような香りをもつため香料として使用されたり、繊維のポリエステルもそうですし、オリーブオイル、菜種油、ラードなどにも入っています。
エンジンオイルに用いられるエステルは、原油からの抽出は効率が悪いため、植物油や動物油脂から化学的に抽出したものです。
先に書いたように、脱水縮合していますので、水によって加水分解されるという欠点を持っています。これが、エステルは水分に弱いという理由です。
現在は、色々なエステルが作られていますが、モチュールの資料を見ても、どのタイプのエステルを使用しているかは書かれていません。
おそらく、エンジンオイルとしての使用に耐えるように、結合も考えられているはずですので、1年1万キロ程度の使用に耐える安定性は持っているでしょう。
それよりも注意する必要があるのは、エステルはゴム類を膨張させるという攻撃性を持っていることです。
特に古い車に使用する際にはオイル滲みの原因になることがありますので注意した方が良いでしょう。
平行物と正規ものについてですが、これは差があると言えます。
それは、製造に用いている原油輸入国が違うからです。
日本は資源が無い国なので、原油を輸入に頼っており、その9割近くをOPEC加盟国(中東のサウジ、カタール、アラブ、ベネズエラ、リビア、イラン、イラク、アルジェリア、ナイジェリア、インドネシア、クエート)から輸入していますが、ヨーロッパではこうした国からの輸入度は低く、北海油田やロシア、イギリスあたりから輸入していて、中東への依存度が10%程度の国もあります。
主要国では、ロシア、イギリス、カナダは原油の自給率が100%を超えます。
一見、原油は全て同じようですが、精油して出来るオイルは、原産国によってパラフィン系やナフテン系と言われるように潤滑性能が異なります。
そして、日本が輸入している中東物は、残念ながら潤滑性能に劣ると言われるナフテン系のようです。
実のところ、ヨーロッパで入手出来るオイルの質もアメリカなどで産出する物よりもおとるため、戦争などで良い原料の輸入が出来なくなることを恐れて、高性能潤滑剤の研究を行いエステルベースのオイルが開発されたという話がありますが、真実のほどはわかりません。
日本では、原油を輸入して精油所を持っている会社はそれほど多くありませんが、このオイルから国内で製品が作られます。カストロールをはじめ、海外メーカーも日本法人というか、委託製造をする子会社を設立していて、その工場でつくられています。
エンジンオイルはその20%が添加剤と言われるくらい、添加剤の質やブレンドが各メーカーのノウハウになりますので、完成したオイルとしては十分にエンジンが求める潤滑性能を満たす物ですが、ベースオイルの質が異なる輸入品の方が潤滑性能が優れるということがあります。
どこの国の物が良いかは色々と試してみて下さい(^^)
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技術解説 | クルマ
Posted at
2006/04/29 20:43:47
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