
これも、自動車メーカーによって色々と呼び方がありますが、VVT(Variable Vaive Timing)と言われる、可変バルブタイミング機構は、1982年にアルファロメオが最初に付けて以来、今では付いていないエンジンの方が少ないくらい普及しました。
多くの場合は、吸気側のみに付いていますが、吸気・排気バルブともコントロールするエンジンも徐々に増えつつあります。
あくまで、バルブタイミングの位相制御なので、バルブを早く開けば閉じるのも早くなりますし、遅く開くようにすれば閉じるのも遅くなります。(ここ注意点です)
また、リフト量はホンダのVTECやポルシェのバリオカム、レガシィで採用する可変バルブリフト機構によることになります。3次元カムを採用すれば、バルブタイミング、リフト量を制御できるし、そうした特許は既に取られていますが、まだ量産エンジンでは採用されていません。
コントロール巾は、吸気側で約±25度連続、排気側で約±15度連続なので、うまく制御すれば擬似的にミラーサイクルらしきことを行えますが、そうした使い方をせず、回転数や負荷状況により細かく制御して、燃費向上(ポンピングロスの低減)やトルク向上(慣性吸気の有効利用)、排ガス浄化(燃焼効率向上)に役立てています。
--------- 機構 ----------
カム軸を回すスプロケットとカム軸の間に位相を変化させる機構を組み込み、油圧により双方の位相関係を変えて、バルブの開閉時期を早くしたり遅くしたりします。
まだ使用している車もありますが、第1世代の機構は、油圧でプランジャーを動かして、その外側に螺旋状に凸を作り、それにかみ合うスプライン(凹溝)を回して位相を変えていました。
最近のものは、スプロケットを内外二重構造にして、内側、外側からそれぞれベーンを出し、それぞれのベーンに挟まれた扇形の空間に、油圧を掛けたり抜いたりして位相を変えています。
--------- 問題点 ----------
回転する部分に油圧を送り込むため、漏油しないようにシールが必要で、機構が複雑になります。また、油圧パワステと同じで、制御弁もミクロン単位の高い加工精度を求められるため、コストアップに繋がります。
他にも、油を使うと、粘度などが温度によって左右されることや、エンジンを始動時には油圧が掛からないため、始動時には低速時の位相に戻っていなければならなく、このために強いリターンスプリングを使って戻るようにしてあります。
そのため、油圧系は、低速時の位相以外でバルブタイミングを変化させるためには、このスプリングに以上の力を常に出す必要があり、油圧ポンプの負担になり燃費の悪化に繋がります。
また、油圧で動かすため位相を大きく変化させるためには、1秒程度の時間が必要となり、急なアクセル操作には瞬間的に追従できないと言う問題もあります。
ただし、運転する際には大きな問題とならないので、各社とも油圧を用いていますが、何故か日産が以前からこだわりを持っていて、97年のローレルから、3方弁を用いて20%反応を速くしたのに続いて、2001年のスカイラインでは、ソレノイドを採用して、高速な変化を可能としています。
--------- 動作モード ----------
・説明中の「早い」「遅い」は、上死点、下死点での開閉を基本として、それに対する動作とします。
・通常の動作は、カムによって駆動されるため上死点、下死点においてオーバーラップする時間があります。
・先の説明にあるように、開タイミングを遅く(早く)すると閉タイミングも遅く(早く)なります。
1.アイドリング域
・吸気側を遅らせてオーバーラップを減らして、吸気側への燃焼ガスの吹き返しをなくし、アイドリングを安定させて燃費向上を図る。
2.中負荷域(発進加速)
・吸気側を早く開き、オーバーラップを大きくして、わざと吸気側に排気ガスを流入させることにより、燃焼温度を下げてNOxの低減、炭化水素を再吸入して排出HCの低減を図る。
さらに、吸気管の負圧を緩和することにより、吸入時のポンピングロスを低減して、燃費向上と排ガス清浄を図る。
3.軽負荷域(定速走行)
・吸気側を遅らせてオーバーラップを減らして、吸気側への燃焼ガスの吹き返しをなくし、エンジン回転数の安定を図る。
4.中低回転・高負荷域(停止からのフル加速・登坂)
・吸気バルブの閉じタイミングを早くして、吸気が沢山入った段階でバルブを閉じる。
・排気バルブが開くのを遅くして、爆発力を有効に使いトルクを向上させ、エンジン回転を安定させる。
5.高回転・高負荷域(高速走行・追い越し加速)
・高回転域では流速が早くなり、ピストンが上がり初めても慣性吸気が行われるので、吸気バルブの閉じタイミングを遅くして、充填率を高め出力向上を図る。
・排気バルブを早く開き、排気ガス圧を早く抜き、ピストンが下死点から上昇しやすくする。
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これに、バルブリフト制御が加わると、低回転時はスワールを作るようにしたり、さらに複雑になってきます。
以前は、アクセルペダルはスロットルバルブを開閉して、ECUはエアフローメータから燃料を算出してインジェクターに指令を出して・・・と単純だったため、ROM書き換えによるチューンが簡単でしたが、今のエンジンは、エアフローメータだけでなく、アクセル操作や各種情報が電気信号でECUに取り込まれて、スロットルバルブ、バルブタイミング、可変インテークマニホールドなど多くの部分を制御するので、お手軽に燃調マップを書き換えて・・・とやることが難しくなってしまいましたね。
一部で売られている、ECUは、ブースト圧と燃調くらいしか調整されていないと思いますが、どこまでやっているのか興味はありますね。
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技術解説 | クルマ
Posted at
2005/04/18 17:13:53