ラジエター水チューンとはのような怪しい話ではありません。
以下の冷却理論は、車関係の本にはおそらくどこにも書かれていませんが、最近の研究報告などから考えると多分正しいと思います。
ラジエターに入れている冷却水ですが、水ではなく不凍液に色々な物が添加されています。
エンジンを長持ちさせたいなら、オイルを指定サイクルの半分で替えるよりも、オイルは指定サイクルで良いから、クーラントをきっちりと交換すべきというのが持論です。
本題からはずれますが、乗用車の平均寿命は約9年と言われ、15年も前の車、特に国産車はセルシオやクラウンなど一部を除いてほとんど見かけません。
なので、古い車は必然的に古いベンツであったり、BMWであったりするのですが、たいていは冷却水がらみの部分から、エンジンにダメージを与えて寿命となっている印象が強いです。
LLCはエチレングリコールまたはプロピレングリコールを主成分として、水酸化カリウム、燐酸など毒性を持つ物質を含みますが、以前は、さらに毒性が強いけど、強い防錆作用を持った車には良いクーラントがありました。
しかし、環境面から防錆剤もノンアミン系に変わって、またエンジンも腐食に弱いアルミ合金製に変わって、地下水等を使用したために腐食してしまった例は増えています。
だいたい、ヘッドで冷却水とオイルが混ざるような事態が発生すると、オーバーホールまでする人はまれで、廃車にされてしまうことが多いので、長く乗るつもりなら気を掛けたいところです。
私は50%濃度(メーカー指定)のクーラントを定期的に交換していますが、冷却性能だけを考えると、濃度は低い方が性能は高いのです。
本題に戻りますが、ご存じのように冷却水はエンジンを適度に冷却するために、エンジンブロック内を流れてラジエターで放熱して90℃位に保たれています。
エンジンのシリンダ内壁温度は約150℃になりますが、冷却水路の液側の金属面での温度は約135℃ くらいになって、クーラントの沸点(約120℃)よりやや高くなっています。
この、エンジン内部の冷却水路の金属壁表面をミクロ的に見た場合、どのような熱伝達が起こっているのか解析されておらず、冷却水を沸騰させずに強制循環させるのが良いと思われていました。
しかし、原子炉の冷却系の解析が進み、沸騰熱伝達特性について色々なことがわかってきました。
そのあたりをもとに、エンジン内を考えてみると、エンジンブロック内の冷却水経路の金属表面では、クーラントの沸点を少し超えているので、沸騰して泡が出ています。
これは、バブリングと呼ばれる現象で、この泡は流れている冷却液(バルク)のところに到達すると液に戻ります。
このバブリングによって、冷却液側の金属壁表面がかき乱される状態を、サブクール沸騰と言って、サブクール沸騰での熱伝達は強制対流熱伝達の数倍の熱移動能力を持ちます。
※サブクール沸騰:流体のバルク温度が沸点に達していない状態の沸騰を言い、沸点に達している沸騰を飽和沸騰と言う。また、鍋でお湯が沸騰しているように気泡が次々と発生して離脱している状態を核沸騰と言います。
なので、エチレングリコールの濃度を上げすぎると、沸点が上がって冷却液が金属壁表面で沸騰しなくなり、サブクール沸騰ではなく強制対流熱伝達となって逆にオーバーヒートを起こしやすくなります。
冬の北海道でオーバーヒートが起こったりするのは、雪などによるつまりの他に、クーラントの濃度が高く、サブクール沸騰が発生しないためと言うことも関係するのではないかと思います。
オイルは、温度がかからなければ2年程度では劣化しませんが、クーラントの防錆効果は2年もすればかなり落ちますので、クーラントは程々の濃度(30%~50%)にして、1年から1年半くらいで交換するのが大きな出費を出さない予防策かと思います。
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技術解説 | クルマ
Posted at
2005/08/16 21:13:18