2005年02月02日
オイルができるまで
オイルってどうやって出来ているのでしょう。
最近耳にするエステル・・・何だか凄そうですが、植物油から合成された物で、家庭で料理に使っているサラダ油でも、グリセリンと脂肪酸が結合したエステルです。
エステルは水分による加水分解に弱く、ゴムへの攻撃性が強いため添加するにしてもあまり多くは添加できません。
(このあたりは5年くらい前の出光興産の技術情報にも詳しく書かれていたので興味のある人は探してみて下さい)
モチュールが最高としている、コンプレックスエステルでも加水分解に対する安定度では、鉱物油に及びません。
多くのオイルは鉱物油をベースにしている訳ですが、鉱物油は原油から直接精製して作られます。
一方、化学合成油は試験管で作っていそうですが、原油から精製されたナフサもとにしたもので不純物が少ないベースオイルが出来ます。ですから、化学合成オイルだってもとは原油です。(エステルは先に書いたように植物油ベースです)
この石油が何故出来たかは、いくつかの説がありますが、現在は生物起源説の「ケロジェン起源説」が有力とされています。詳しく知りたい人は、ネットで検索してみてください。
この地下深くで出来た石油を、原油と呼び、原油を常圧蒸留装置で沸点の低いものからガス、ガソリン、アスファルトなどに分けた中で、沸点の高い重油を減圧蒸留装置で真空状態で蒸留し、潤滑油原料とガソリン原料に分離します。
さらに、溶剤脱瀝装置で重油にプロパン・ブタンを混合し、潤滑油原料とアスファルトに分離します。 この潤滑油原料と水素を水素化精製装置で高温・高圧の状態で反応させた後、粘度グレードごとに潤滑油を精製します。
最後に、溶剤脱蝋装置で潤滑油にMEK・トルエンを混合・冷却しWAX結晶を析出させ濾過すると潤滑油ベースオイルができあがります。
このベースオイルに、各種添加剤をブレンドしてエンジンオイルが完成します。この、添加剤のブレンドのしやすさでも鉱物油が化学合成油より優れています。
日本の原油は中東から運ばれた物で、これから作られた潤滑油はナフテン系オイル(脂環族)と言われる物で、世界的に見ても潤滑油の95%はこのナフテン系です。
これに対して、北米の油田の一部で出る原油からはパラフィン系オイル(脂肪族)が出来ます。
ナフテンとパラフィンは、鎖状と環状と言う違いがありますが、潤滑性能はパラフィン系の方が高いとされており、このため、パラフィン系オイルを持たなかったヨーロッパで化学合製油の研究が進んだと追われています。
(時々ディスカウントショップで安く売られている、米国産のChevronなどクォーターボトルに入ったオイルは日本の物よりも性能が良いと言われます)
こうして、オイルができるわかですが、オイル選びは潤滑性能だけではないところが難しいところです。
車の話では、ベンツが評価される一番の理由として、突出した性能は無いけど全ての点でバランスが取れていて、総合的にまとまっていることだと言われますが、オイルもこれと同じです。
なぜなら、エンジンオイルは潤滑性能だけでは成り立っておらず、防錆からシールとの相性など色々な項目があるからです。
例えば、材料工学では常識ですが、パッキンに使われる代表的な耐油性ゴム(NBR=アクリロニトリルとブタジェンを乳化重合して凝固した物)の「油」とは非極性である鉱物油を意味しています。
ですから、高性能オイルの代表のように言われるエステルは極性があるため、オイルはゴム分子間に油が入り込み膨潤という現象を起こしてパッキンがダメになります。(エステルはゴムを膨張させます)
エステルに対して、化学合成油のベースとして一番多いのは、PAO(ポリアルフォオレフィン)といわれるもので、ナフサベースですがこちらはゴムを収縮させる性質があります。
よく、化学合成油を入れるとオイル滲みがおきやすいと言われ、その理由は化学合成オイルは分子が小さく、浸透率が高いからなんて言われますが、設計に考慮されていない添加剤や成分によって、パッキンがダメになっているだけです。
それならばゴムを改良して、さらに耐油性の強いものと考えがちですが、車と同じでバランスが大切で、エンジンに使用されるものは、耐油性、耐熱性、酸化安定性、耐寒性などなど多くの項目で平均的なバランスが必要となります。
耐油性だけを考えれば改良することは出来ても、そうした場合は他の性能のバランスが必ず崩れます。
実はゴム関係のトラブルで多いのは、ブレーキフルードで、あまり気にせずディーラーで見てもらっている人は良いのですが、変にこだわる人がスーパードット○などの、沸点の高いものを使用すると、ゴムが膨潤して高い確率でトラブルが発生します。
ということで、車を長持ちさせるのは潤滑性能だけに特化した高性能オイルとは限らないところがオイル選びの難しい点です。
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技術解説 | クルマ
Posted at
2005/02/02 20:20:57
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