
サスペンションの役割って何だろう・・・と言うところから構造を眺めると、なかなか面白いと思う。
車と言う乗り物は、いくら馬力があっても、制動力があっても、その運動は路面と接しているタイヤとの間に働くニュートン力学に支配されている。
そう考えると、良いサスペンションとは、色々な運転状況の中で一番タイヤと路面の接触面積の積分値を一番大きくできるものと言える。
競技などシビアにタイムを競うほど、いかにタイヤのグリップを有効に使うかで差が出てくる。
F1などでは2003年頃からサスペンションに合わせてタイヤを作るのではなく、タイヤの設計理論が先にあり、その情報をチームに提供してサスペンション設計に反映しているようである。
この逆転の発想をした天才がいたのはミシュランであり、BSはそれに気が付いて後追いをしているような感じだ。
それならば、どんな状況でもキャンバーを0に保てるサスペンションがタイヤの性能を使えることになるし、タイヤもコーナーリングフォースでよじれるので、ミシュランのパイロットスポーツ2みたいに、そうした状況で接地面積が最大になるようにプロファイルを設計したタイヤもあり、サスペンションとタイヤでの相性により相乗効果を生んだり、合わなかったりする場合も出てくる。
マルチリンクの時にも書いたように、タイヤがサスペンション設計に見合ったGを発生しないでグリップを失うようなものだと、設計本来の特性が引き出せない事も考えられる。
サスペンションの常識としては、カーブでは車体の外周側が沈み込み内周側が伸びるため、その時にタイヤを垂直に接地させるようにネガティブキャンバー(正面から見るとハの字)が付けられている。
上の写真がレガシィのフロントのストラットサスペンションであるが、カタログに定規を当ててみると、フロントのストラットの方がリアのマルチリンクよりもキャンバーが付けられている。しかし、昔の暴走族に見られたように必要以上にキャンバーをつけると、直進の時はタイヤの内側が接地するようになり、片減りが発生するだけで良いことはない。
そこで、アッパーアームとロワーアームを設けて、平行四辺形みたいに繋いだダブルウィッシュボーンが多く採用されるようになった。
下の写真はRX8のフロントのダブルウィッシュボーンサスペンションであるが、基本に忠実にアームを長く取りながらも、なるべく同じ長さとして、ダンパーも極力タイヤよりに取り付けている。
これが、トヨタのクラウンから採用されているダブルウィッシュボーン(アリストの焼き直し)は、アッパーアームがタイヤハウスのかなり上の方に付けられて、長さも短くなっている。そうすると、カーブで車体が傾いた際のキャンバーの変化が出てくるので、ダンパーやバネのセッティングのポイントが狭くなり、懐の深いサスペンションを作りにくい。
また、レバー比と言う言葉があるが、これはダンパーの取り付け位置が、ロワーアームの途中だと車輪の上下のストロークに対してダンパーの動きが縮小されてしまう比を言い、コンパクトに出きる一方でダンパーの精度が高く無ければ、きっちりと特性の出ない足になってしまう。
こうしてサスペンションや標準でのキャンバーを見ると、それに合うタイヤも見えてくる。
単純に平坦な路面で考えると、キャンバーの変化が少ないサスペンションはBSのような、角が立っているタイヤを生かせるし、キャンバーが変化を許容するサスペンションはミシュランのように接地面からサイドが柔らかくて角が丸いタイヤの方が合っていると考えられる。
競技だけを考えれば、バネを固めてそれに見合ったダンパーにハイグリップタイヤと言う方向で良いが、街乗りを考えるとバネは柔らかくしてストロークはなるべくかせいで、ダンパーは揺れを1発で収束させるくらいに硬めにして、それに見合ったタイヤを選択するのが良いと思う。
また、国産車はアッパーマウントが柔らかすぎてダンパーの特性が出ていないものも多いので、パッキンをはさんで締めるか、足回りに手を入れたり競技をするような人ならアッパーマウントのリジッド化をすると、ダンパーの性能が出て見違えるように変わることがあるのでやってみる価値はあると思う。
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技術解説 | クルマ
Posted at
2005/02/05 00:30:29