
最近、採用する車も増えたCVT(Continuously Variable Transmission)であるが、最近はヴィッツクラスだけでなく、2000ccクラスまで広がり、一部では日産の3500ccのエンジンに対応出来るユニットが作られている。
何故CVT搭載車が増えているかと言うと、通常のATよりも安くて軽く作ることが出きるからである(エクストロイドCVTは除く)。
また、CVTは燃費が良いと言う思いこみがあるが、伝達装置としてみた場合の効率は悪く、燃費は悪くなるが、上手くエンジン効率のいい回転数を使っているから結果的に通常のATよりも少し燃費を稼ぐことができる。
CVTの構造は、基本的には2組のプーリーにベルトを掛けて、そのプーリーの幅を変化させることによって、連続的に変速比を変えるというもの。この発想自体は、かなり古く19世紀には特許が出ている。
しかし、自動車用として実用化されたのは、オランダのファンドーネ社が金属駒のベルトを開発したのがきっかけで、このベルトと電磁粉体ユニットによる発進クラッチを開発した富士重工が、レックスに採用したのが最初だったと思う。
現在では、この金属駒のベルトに加えて、アウディが用いているサイレントチェーン方式、愛知機械が開発した乾式ゴムベルトを用いたものがある。
金属ベルトを用いたものはどうしても特有の高周波があり、金属駒がプーリーを叩くヒーンと言う高い音が感じられ、チェーン式はそれよりも低く気にならない音で、ゴム式が一番静かであるがまだ大きなトルクには耐えられないため、軽自動車での採用しか無かったと思う。
伝達効率については、MTが一番効率が良くギア2組で伝達効率は97,8%であり4速などの直結では99%近くなる。
次いでプラネタリーギアを用いた一般的なATで、ギアの伝達損失に加えて変速用油圧を作る必要があるため、95,6%となりトルコンが滑っている状態ではそれよりもずっと伝達効率が落ちる。
一番効率が悪いのはCVTで、大きなトルクを伝える際にベルトが滑らないように、非常に高い圧油を作り、強烈な力で押しつけるためその圧油を作るための動力的損失(エンジン出力から取る)と、ベルトを挟み込む時と離れるときの摩擦も大きく、伝達効率は92,3%程度と言われる。これにトルコンが組み合わされたものは、発進時以外はロックアップするようであるがさらに効率は落ちている。
CVTも発売当時は、アクセルを踏むとエンジン回転数が先に上がって、それから加速が始まるという違和感があったが、最近はかなり制御も上手くなってきている。これは、エンジンの効率が一番いい3000rpmあたりをなるべく使おうとした結果であるが、うまく効率のいい回転数や、なるべく回転数を一定に保つように制御することによって、ATよりも燃費を稼げるようになってきた。
しかし、人間の感性に合って(エンジンからタイヤまで直結で、トルクの伝達が途切れず変速ショックが無い)、伝達損失も少ない理想のトランスミッションは何かと考えると、VW・アウディが開発したDSGが現時点では最高と思われる。セレスピードやフェラーリのF1システムでも、変速時はブリッピングを行うものの一瞬駆動力が抜けて、失速した感じを受ける。(自分がクラッチまで操作しているとわかっているので違和感は感じないけど)
最後にCVTのメンテナンスだが、変なところで交換して普通のATFなど入れられたらベルトが滑って走らなくなってしまうし、ベルトの種類、クラッチの型式によってCVTフルードが違うので、絶対に用品店などで交換せず、ディーラーで交換してもらうのがいい。
フィットで既に20万km乗っている人が雑誌に書いていたが、交換サイクルも整備書通りで問題無いと言うことなので、多くのCVT車は無交換とされているので、余程のことが無い限り補給や交換はしない方が良いと思う。
スカイラインGT-8で採用している、エクストロイドCVは日本精工の1技術者が、長い年月を掛けて開発に成功して、ジャトコトランスファーにてユニットとして完成させたことは、色々と紹介されているが、そのCVTフルードはトラクションフルードと呼ばれ、圧力が掛かるとフルードがくさび状に絡み合って、滑らずに伝達すると言う特殊なものを用いている。
この話に関しては、フルードの開発を行った出光のHPが詳しいので、興味のある方はご覧下さい。
http://www.idemitsu.co.jp/lube/cvt/cvtbody.html
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技術解説 | クルマ
Posted at
2005/02/09 19:17:11