
よく、新車が発売されるたびに、曲げ剛性が50%アップしたとか説明されるが、そもそも剛性って何だろう?
剛体、剛性と言う言葉はあるが、良く使われる剛性感と言う言葉は無い。
イメージとしては固くて、捻れずガッチリしていると言う感じで使っているのだろうとわかるが、剛性は物体の捻れなどに対して破壊に耐える能力なので、正確には剛体感と言った方が良いのではないだろうか...
まあ、言葉は置いておいて、耳に馴染んだ剛性で話をするが、車の剛性には静的(スタティック)なものと動的(ダイナミック)な物があり、必ずしもこの2つはイコールではない。
静的な剛性はボディを機械で徐々に力を掛けて捻れを測定すればわかるが、車のボディは走行中に路面からの鋭い突き上げや、ブレーキなど色々な力が加わるため、ゆっくり捻ったら大きな力に耐えるものでも、どこか一箇所をに強い力を掛けたら捻れたり、一部に振動が残ったりすることがある。
このため、強い衝撃が入力された際には、上手く力を分散させるような構造でないと、動的な剛性を高める事が出来ない。
車にとっては、動的な剛性が強くないとサスペンションを正確に動かすことが出来ないため、剛性は大切だが、あまりに強固にするとその中で弱いところに応力が集中して亀裂が入ったり、入力、出力のクッションがサスペンションと一部のブッシュだけになるため、挙動がシビアになる。
動的剛性を最初に真面目に考えたのはベンツであり、日本ではそれに遅れること10年くらい、初代ロードスターの開発を行ったマツダの技術者だったと思う。ベンツというと、誰もが巌のようなガッチリとしたボディを思い浮かべるが、今となっては数値上はベンツを超えている国産車もきっとあると思う。
しかし、乗った感じは多くの人がベンツの方がしっかりしていると感じる。ここが、剛性感と言う言葉が使われる所以なのだろう。それは、ドアの取り付け、窓枠とパッキンが当たった時の音、シートとボディの結合、内装の立て付け、耳からの軋み音などにより、人間の感じる剛性感は変わってくるからだろう。
人間の感覚は機械の検出よりも鋭い所がある一方で、要素によって簡単に騙されたりもする。なので、剛性感の高い車はわかるが、本当に剛性が高いか一般の人が乗った感じで判断するのは難しい。
日産フーガの発表で、剛性はBMWの5シリーズを超えて、ポルシェ並と説明を行っていたが、誰が乗ってもBMWの方が剛性感を感じるだろう。
ボディの簡単な判断方法は、歩道などに斜めに乗り上げて捻れ感、異音がしないか、キャッツアイを走りながら踏んだときのショックの伝わり方などからある程度の感じは判断できる。
サスペンションの取り付け剛性は、取り付け部の補強などを覗き込むのが分かり易い。ハードブレーキングから荷重を残してハンドルを切ってみたりした感覚では、どこの剛性が悪いかまでは判断は難しい。
車のホイールベースは、サスペンションの構造もあり、フルブレーキを掛けたり、フル加速をするとミリ単位でなくセンチ単位で変化するので(許容していると言う方が正しいが、最大2センチ程度だろうか)、しっかり固定するところは固定して、動くべき所はしなやかに動かすのが大切になってくる。
レガシィはと言えば、日本車としてはかなりボディ剛性は高いところにあると感じる。車重とタイヤサイズの関係でショックをいなしきれていないが、ボディの固さが伝わってくる。ドアを閉めたときの「ドスン」と言う音は、パッキンの材質や当たりでチューニング出来るのでここで判断する事は出来ないと思う。
W202はレガシィよりも剛性は低いはずだが、乗っていて剛性の低さを感じることはない。
これは、強い入力を受け止めずに上手く分散させる構造のボディになっているのと、シートレールが強固でシートとボディの一体感や、内装の組付けなどがしっかりしているため、乗り手に上手く剛性感を感じさせるのだと思う。
どちらにせよ、車体の剛性は十分なレベルまで上がってきたので、今後はサスペンションとボディを総合的に考えてた設計になって行くのではないだろうか。
Posted at 2005/03/01 12:04:51 | |
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