
レガシィがリアにマルチリンクサスを採用して2代目ですが、基本的にBP/BLになった際にサスジオメトリは見直されていないので、スバルにとって初めてのマルチリンクと言うことになると思います。
マルチリンクが最初に採用されたのは、1983年に発売されたメルセデスベンツのコンパクトクラス(190シリーズ)だと思いますが、その後各社も追従して採用して、現在は後輪のサスペンション形式としては標準になった感があります。
マルチリンクは当初5リンクとも言われたように、プリングストラット(通称アッパースラストロッド)、キャンバーストラット、プッシングストラット(通称ロワースラストロッド)、トラックロッド(通称タイロッド)、スプリングリンク(通称ロワアーム)の5本の独立したリンクによってハブを支持しています。
そのため、縮み、伸び、ブレーキ、加速、遠心力によって巧みにハブの向きを回転させる事が可能となります。
セッティングは微妙で、ベンツでも最初のコンパクトクラスでは非常に安定性が高く評価が高かったのですが、翌年に出たミディアムクラスでは最後までセッティングが決まらず苦労した経緯があるようです。
現在でも各社の考え方によってアレンジが異なり、プジョーなどは遠心力によりパッシブステアさせて旋回性を高めようとしたものや、ベンツのように安定性を重視したものなどありますが、次第にコンパクトクラスに非常に似た方向に収束してきているように感じます。
レガシィも各リンクの取り付けを見ると同じ方向に見えますが、プリングストラットかプッシングストラットの取り付け位置の関係か、長さが短いようで旋回時にリアが巻き込む癖があるように感じます。また、今の車としてはスプリングリンクも短か目であり、次回には修正してくるだろうと思われます。
マルチリンクの基本的な動きは、サスが縮むとトーインになりホイールベースが縮み、サスが伸びるとトーインになりホイールベースが伸びるように各リンクが働きます。
例えばブレーキング時には、ストラットだとサス全体が後ろ方向に捻れてトーアウトになりますが、マルチリンクの場合その力によってトーインになるようにして安定を出すと共に、お尻を下げるようにして前輪に大きく荷重が移るのも防止する一種のアンチノーズダイブのように動きます。
ですから、テストドライバーの想定した限界時の挙動(基本的に弱アンダーな動きとか)は、標準タイヤのグリップによってマルチリンクが統制するようにチューンされているはずなので、グリップが変わったり、バネやダンパーを替えると想定した限界挙動と変わってきます。
このあたりは、ジムカーナをやられる方なら、タイヤやバネを替えたら操縦性大きく変わったりするのを経験したことがあると思います。
あと、レガシィではスプリングとダンパーが同軸に配置されていますが、欧州車の多くや日本車では日産のFMプラットフォームを使った物では、スプリングとダンパーを別に配置しています。
別に配置するメリットは、それぞれ別のブッシュによって入力が可能になること、全長を縮めて荷室への張り出しを小さくすることなどがあります。また、ダンパーの交換の際にバネなど外さなくてよく整備がやりやすいです。
よくレガシィと比較されるRX-8は車体構造(衝突時の力の吸収や、室内保護のやり方)、マルチリンクとも非常にベンツに似ており、研究(真似?)したなぁと思ってみていますが、レガシィのリアマルチリンクは設計者が机上の理論で設計した感がありまだ熟成の余地があるので次のプラットフォームの設計変更時は楽しみです。
Posted at 2005/01/25 18:45:11 | |
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