マルチリンクサスペンション 1
マルチリンクサスペンション 2
マルチリンクサスペンション 3
マルチリンクサスペンション 4
から続いています。
しつこくマルチリンクサスについて書いてきたが、暇な人はもう少しお付き合い下さい。
6月22日に新しいCクラスであるW204型が発表になったが、マルチリンクサスに何か変更はあったのだろうか?
雑誌ではリアの接地性は上がったとか、乗り心地が劇的にと書いているがおそらくマルチリンクの設計自体は変わっていないと思う。
それなのにどうして乗り味が変わったように感じるのだろうか?
ここが、サスの奧が深いところで、多少でもサスに手を入れたことがある人なら感覚はわかると思う。
通常、バネとダンパーを替える位だがこれでも挙動は変わってくるし、同じサスだとしてもフロントを少し下げても変化は判る。これはロール時の重心の変化から、各タイヤの接地圧が変化するからだが、これだけでもオーバー、アンダーを調整することが出来る。
まして、新設計で車体剛性が変わったり、トレッド幅が変われば別物だし、フロントサス形式を替えたり、バネとダンパーの調整でフロント・リアのロールを調整したりするだけで大きく車の性格は変えることが可能だ。
なので、車両実験部隊の経験者の力量がモノを言ったのだが、今ではマルチリンクも計算機設計されるようになり画像のようなイメージで扱う。
具体的には、構成部材の形状変数として前輪27,後輪29,車体への取付位置で前16、後22、バネ、ダンパのバネ定数と減衰係数、スタビライザのバネ定数前後で合計100個もの設計変数を決め、これに制約条件として、前後、上下の取付位置についての制約条件や、アンダーステア特性にするための制約条件が52個が加わる。
あとは、シャシー条件、自動車特性、運転感覚などを目的関数とした23個の指標と組み合わせてコンピュータが最適解を求める。
言ってしまえば自動車用CADが各自動車の個性を無くしたように、足回りに置いても今後はコンピューター計算されて同じような解にたどり着くところまで進んでいるが、実際の設計の現場に導入されるのはもう少し先になると思う。
マルチリンクサスは外力によりトウとキャンバーを積極的にコントロールできるが、サスの基本であるトウとキャンバーを変化させずに接地面を正確に追従させる能力はダブルウィッシュボーンには劣るので完全に使いこなすのは難しい。
このことは、レガシィでも3代目、4代目でマルチリンクサスを採用したがロール時にトーインが強めに出て、左右のキャンバー変化による接地圧の違いから巻き込むような癖があり改善されないまま、新しいインプレッサではダブルウィッシュボーンへ切り替えた。
こうした、マルチリンクサスの基本設計に起因する癖は、シャシーの設計から見直さなければ根本治療は図れないため資金がかかる。
スバルでは、2世代毎にプラットフォームの見直しを図るようなので、次のレガシィにはインプレッサで採用したダブルウィッシュボーンを載せてくると思うが、スバルのような規模の会社で限られた資金とリソースの場合はダブルウィッシュボーンの選択は正解なのだろう。
自分の周りの人達を見ていると、車を買う人のうちサスの形式や僅かな乗り味の違いにこだわる人なんて1%もいないのが現状ではないだろうか。
車を趣味の対象として考えたり、選んだり、運転を楽しむ人こうしたサスペンション形式なども参考にして見てもらうと新しい発見があるかもしれない。
反対に、格好が気に入った車があったならば細かいことなど気にしないで選んでも不満は出ないレベルまで今の車は進歩しているし、もうすぐその差さえも縮まって行くと思う。
Posted at 2007/07/01 11:08:04 | |
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