観閲式後編です。
<第10特科連隊>
続いては第10特科連隊です。

第10特科連隊は第10師団をや野戦砲による火力支援をおこなう特科部隊(砲兵部隊)で、昭和32年に姫路駐屯地で創隊され、昭和35年に豊川駐屯地に移動して現在にいたります。

まずは本部中隊。
第10特科連隊は5個大隊を有する本州有数の特科部隊で、中部方面隊では唯一の特科連隊になります。

続いて情報中隊です。
対砲レーダや気象レーダなどを装備して連隊の射撃に必要な情報を提供する部隊です。

装備は偵察用オートバイ、対砲レーダ装置JTPS-P16(手前)、気象測定装置JMMQ-M5(奥)です。
JTPS-P16はアクティブフェイズドアレイアンテナを装備し、敵部隊が発射する火砲の砲弾を探知して発射地点の特定を行う装備です。
JMMQ-M5は火砲の砲弾の射撃に影響を与える気象条件を測定して味方部隊の火砲の射撃精度を向上させるための装備になります。

続いて第1大隊です。

まずは第1大隊本部管理中隊です。
昭和37年に部隊編成完結してきたときは第1大隊は軽砲(105ミリりゅう弾砲)を装備する部隊でした。

続いて第1大隊第1中隊です。
装備は155ミリりゅう弾砲FH70です。
FH70は英・独・伊の欧州3国で共同開発された野戦砲で、陸上自衛隊では昭和58年度よりライセンス生産をはじめ、全国の特科部隊に配備されています。

続いて第1大隊第2中隊です。
装備は155ミリりゅう弾砲FH70です。
FH70は給弾システムが自動化されていてコンピュータと連動させて正確な射撃が可能なようです。
射程も非常に長く、通常弾で24キロ、ロケット噴進弾で実に30キロもの最大射程があるようです。
陸上自衛隊がそれまで使っていた155ミリ中砲の最大射程が通常弾で15キロ、操作人員19名が必要だった当時陸自最大射程を誇っていた155ミリ加農砲M2の強装薬弾でも23キロでしたから、わずか9名の操作人員で射撃が行えるFH70の高性能さがわかります。

続いて第2大隊です。
まずは本部管理中隊です。
第2大隊は昭和37年に部隊編成が完結されたときは第1大隊と同じ軽砲を装備する大隊でした。

続いて第2大隊第3中隊です。
装備は155ミリりゅう弾砲FH70。
FH70は牽引砲ですが、このように大型トラックにより牽引されます。
FH70の操作には1門あたり9名の人員が必要ですが、牽引車に操作要員も搭乗していっしょに移動・展開することができます。

続いて第2大隊第4中隊です。
装備は155ミリりゅう弾砲FH70です。
FH70は牽引砲なので移動時にはこのようにトラックにより牽引されることが必要ですが、補助動力装置を装備しているので最大速度時速16キロで移動することができます。
これにより陣地展開・移動を速やかに行うことができます。

最後は第3大隊です。
まずは本部管理中隊です。
第3大隊も昭和37年の部隊編成完結時には軽砲を装備する大隊でしたが、昭和63年より第5大隊にFH70が配備されて以降、平成8年までに全ての大隊にFH70が配備されました。

続いて第3大隊第5中隊です。
装備は155ミリりゅう弾砲FH70です。
FH70の155ミリ砲の砲身は実に6メートルといいますから、中砲とはいえかなりの大型の火砲だと思います。
走行時の長さは9.8メートルにもなりますから、牽引する側の大型トラックよりも長いわけです。
演習場へ移動する際には一般道路も走りますから牽引車運転のときは気を使うんでしょうね。

ラストは第3大隊第6中隊です。
装備は155ミリりゅう弾砲FH70です。
第10特科連隊は5個大隊に約60門のFH70を装備していましたが、平成26年3月の部隊改編で第4大隊、第5大隊を廃止、火砲のFH70の保有数も約半数に縮小されてしまいました。
第4大隊、第5大隊には計6個中隊により編成されていました。
<第10後方支援連隊第2整備大隊特科直接支援中隊>

次は特科直接支援中隊です。
第10特科連隊の火砲、車両等を整備補給を行う部隊です。
後方支援連隊の本部は春日井駐屯地にあります。

装備は整備車と重レッカ。
重レッカは装甲車両の砲塔エンジン、火砲など重量物を吊り下げる装備で、重装備の整備には欠かせない車両です。
<第10高射特科大隊>

続いて第10高射特科大隊です。
第10高射特科大隊は第10師団の対空防御を行う部隊です。
もともとは第10特科連隊第6大隊として編成されていましたが、平成3年に第10高射特科大隊として改編されています。

まずは本部管理中隊です。
本部管理中隊には対空戦闘指揮装置や対空レーダを装備しています。
写真の手前は対空レーダJTPS-P14、奥が低空レーダJTPS-P9で、敵の航空機を補足・追随するものです。

続いて第1中隊です。
装備は93式近距離地対空誘導弾です。
91式携帯地対空誘導弾を高機動車に搭載した車載地対空誘導弾システムです。
35ミリ高射機関砲L90の後継として配備されたもので、陸上自衛隊では平成6年度から部隊配備が始まりました。
第10高射特科大隊には平成16年に導入されています。

続いて第2大隊です。
装備は81式短距離地対空誘導弾です。
国産初の地対空誘導弾で、第10高射特科大隊がまだ第10特科連隊第6大隊だった昭和63年に導入され、平成22年には改良型の81式短距離地対空誘導弾(C)の配備が導入されています。
<第10後方支援連隊第2整備大隊高射直接支援中隊>

続いて高射直接支援中隊です。
春日井駐屯地の第10後方支援連隊隷下の部隊で、第10高射特科大隊の火器や車両の整備補給を行う部隊になります。
装備は整備車と重レッカ。
<第6施設群>

続いて第6施設群です。
こちらは第10師団隷下の部隊ではなく、上位組織の中部方面隊を施設作業支援を行う部隊で、第4施設団隷下に編成されています。

まずは本部管理中隊です。
装備は中型トラック。
第6施設群は本部管理中隊、第370施設中隊、第371施設中隊が豊川駐屯地に、第372施設中隊が鯖江駐屯地に、第369施設中隊が岐阜分屯地に置かれています。

続いて第370施設中隊です。
奥の車両は道路障害作業車です。
施設部隊は陣地や橋、道路を開設するだけでなく、有事の際に敵部隊の侵攻速度を遅らせるために道路や橋などの破壊や障害の設置を行います。
この車両はアタッチメントを取り付けることで舗装道路上に迅速に障害を構築することができます。

大型トラックに牽引されている装備は83式地雷敷設装置です。
対戦車地雷を迅速・広範囲に敷設することができる装備です。

中型セミトレーラに載せられているのは油圧ショベルです。
掩体や掩体壕の掘削、土砂の積み込み作業などを行う装備です。
自衛隊専用の特別な装備ではなく、民間の油圧ショベルとほぼ同じ仕様なんだそうです。

続いて第371施設中隊です。
奥には作業装置付の大型トラックがみえます。

大型トラックに牽引されているのは渡河ボートです。
簡易なFRP製のボートで部隊が河川の渡河をしたり災害派遣などに用いられます。
数隻ならべて簡易な橋とすることも可能なようです。

こちらは92式地雷原処理車です。
背中に大型のコンテナを背負っていますが、ここには地雷処理用ロケット弾が2発装填されています。
ロケット弾に爆薬ブロックを接続して投射し、接続してある爆薬に点火することで地雷原を爆薬で誘爆させて車両用通路を開設します。

こちらは75式ドーザです。
中型ドーザと同等の作業能力と高い機動性、装甲を付与されたもので、第一線部隊の機動支援に使われます。
カンボジアPKOでもゲリラの脅威からまもるために75式ドーザが派遣されています。
ドーザとはいえ、最大速度は時速45キロにもなります。
<中部方面後方支援隊第104施設直接支援大隊第1直接支援中隊>

豊川駐屯地に駐屯する部隊ラストは直接支援中隊です。
第6施設群の車両や重機などを整備補給を行う部隊で、第104施設直接支援大隊本部は大久保駐屯地に置かれています。
<第10戦車大隊>

観閲行進最後は今津駐屯地に駐屯している第10戦車大隊です。
装備は74式戦車です。
<第10飛行隊>

観閲飛行してるのは明野駐屯地に駐屯している第10飛行隊です。
装備はUH-1J多用途ヘリコプターです。

観閲官が降壇、国旗が退場して観閲式が終了となりました。
以上、観閲式の模様でした。
訓練展示に続くよ。
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