先週日曜日午前1時、残務をすべて片付けた私はある決心をした。
今日は数週間ぶりのフリーな日曜日、天気も路面状況も良好のようなので
「今日こそ、エンジン始動だけじゃなくSMを動かすぞ!週間天気では来週は雪、今年の乗り納めだろうから。」
家に帰って、風呂に入り、目覚ましを午前4時にセットし布団に入る。目をつぶる。
「ドックン!ドックンドックン!」
心臓の鼓動が脳天に響いている。自分で脈をとると、115回/分、全く眠れない。
たかが1台の旧車に乗ると決心しただけなのにこのザマ。「SMに乗る」という緊張感は、アニエッリ総司令に変身する前の優しい女性に「結婚してください」と向こう見ずな発言をした時の緊張感にとても似ている。
精神統一をはかり、なんとか睡眠に入る。
午前4時、セットした目覚ましがなる。
私はすぐさま身支度を整え、SMの保管場所に向かった。
まだ夜は空けていない。シャッターを開けると暗がりにSMの妖艶な姿が浮かび上がる。運転席のドアを開ける。
「ふっ!」
気合いを入れて、エンジン始動の儀に入る。
「クゥワンクゥワンクゥワン(セルモーターの音)
ババババババ~ん!バフォっ!バフォっ!スドド~ん、スドド~ん!ズドン~!ズドン~!スドド~ん!ズドン~!ゲロゲロ、カチ、ゲロゲロ、カチ!ゲロゲロ、カチ!」
今回も無事エンジンを始動することが出来た。エンジンを2000回転でキープ、暖気させる。
ちなみにこの「ゲロゲロ、カチっ!」はBXやエグザンティアの場合は「シューっ、カチっ!」である。
SMはエンジン暖気と車高上がり待ちの2種類の「待ち」が必要である。
この時点で、私の気力はほとんど消耗している。しかし、今日はちゃんと走らせる!と決めたのだから、引き下がることは出来ない。
エンジンが温まり、アイドリングが安定したことを確かめ、クラッチペダルを踏み、シフトレバーをガチャンと1速に入れ、ゆっくりと発進する。
表通りに出てゆっくりと加速する。
「グォ~ん、ガチャン(2速)、グォ~ん、ガチャン(3速)グォ~ん~」
3000回転でシフトアップしてゆくと、3速に入った時点で、ハイギアードなSMは法定速度を越えてしまう。
SMを走らせている時の感覚は、他の車を運転する時の感覚とは超異次元である。エンジンは雄叫びを上げているのに、乗り心地はふんわりピタッ!この異質の組み合わせが、頭脳をカオス状態に陥らせる。そこに、異常感知センサー(異音、異臭を感知)をMAXに作動させながら、各種計器類をモニターしながら、超クイックなステアリングとストローク皆無のブレーキスイッチとギアシフトを操作しながらの運転は高度な頭脳ゲームである。
R45を北へ20キロ程走り、無料供用中の三陸自動車道へ入る。入り口のコーナーで3速から2速にシフトダウン、コーナーを抜け、加速する。
「グォ~~~ん、カチャ(3速)、グォ~~~~ん、カチャ(4速)、グォ~~~~ん!カチャ(5速)」
各ギア5000回転まで引っ張り加速すると、私の全神経は快楽のステージへと登りつめる。乗り心地はさらにフラットになり、エンジンはやっと本来の力を出し始める。
ときより無駄なシフトダウンをしてみる。
「ぶォんっ!(中ブカシ)カチャ!(5速から4速へ)バゥォ~~~~ん!」
SMにはターボ車のような強烈な加速Gがあるわけでもない、大排気量車のような背中から押し出すようなトルクがあるわけでもない。しかし、SMの加速には激濃密なドラマと官能がある。
そして小休止。
この時、私は「SMに自販機はめちゃくちゃ似合わない」と学んだ。
冷たい缶コーヒーを1本飲み、帰路につく。ちなみにSMを運転する際、冬でもホットは飲まない。クールダウンしたいからである。
SM格納し、帰宅しすぐさまソファーに倒れ込む私。全身を気だるさと「もうSMとは接したくない」感に包まれる。そこには理性が働いていた。
つづく。

Posted at 2013/12/15 00:58:54 | |
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