86年頃、851やPASOあたりから一斉に装着され始めたもので、カジバ傘下入りを象徴するような量産車的デザインで、造りは良い。
↑上の写真のペグホルダーは、SSの初期のものに採用されていたもので、これ以後の写真のもの(黒塗り仕上げ)とは若干異なります。
現車に装着されていたものですが油圧式ブレーキランプスイッチが故障していたので、後期機械式スイッチのものと丸ごと左右とも交換しました。
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【余談】
80年代に入ったあたりから、イタリアに限らず欧州二輪車業界は、
ベベルギヤ駆動初代Vツインシリーズを終了させたドゥカティばかりでなく、ボクサーツインの生産打ち切りを予定していたBMWも同様、小規模生産前提の手工業的、半ば工芸品的な生産体制からの脱却期にありました。
とうに量産体制を確立していた70年代末期日本車は、
例えば大型車両は並列4気筒、中型車両は並列2気筒など、各社殆ど同じ形式の、横並びで新鮮味が薄いラインアップが完成。
今では国内で”絶版車”としての評価が高まっていますが、
当時それらを指して”UJM”=Universal Japanese Motorcycles
=どれとでも替わりが効く(=高機能安価でも、押しなべて涙滴型タンク、アップハンドル、厚手シートで性格付けが半端な)日本製モーターサイクル、と欧州市場で揶揄されながらも、
80年代初頭、折しも国内市場に空前の二輪ブーム到来で劇的変革期を迎えることとなる。
そんな革新期の日本車へのコンプレックスとでもいえそうな、(日本人たる青年期の筆者からすると)没個性量産車的マイルド風味のデザイン処理・製造工程変更が、ドゥカティ(セル始動後期MHR)やビモータ(SB4以降のデザイン使いまわし)、マランカ(水冷車種)といったマニア向け最右翼の存在にまで蔓延して、
このペグ周辺デザインは、迷走しているように感じられた当時のイタリアンデザインを象徴するようでした。
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実用面においては、このペグは足応えが柔らかく、左右に長めで、長距離走行には向いているかもしれませんが、
どこで踏んでいるかわかりづらく筆者の好みとは合わない上、ホルダー部分も含め見た目に軟弱で、安物アルミホイールのごとく裏返した方がカッコいい気がするほど(笑)
※実はかなり凝った造形です。
社外品キットあるいは自作品(準備中)に交換する前に、
よりソリッドでドゥカティらしい細身、かつブロックパターンが粗く滑りにくそうな、M900モンスター(初代)の純正フットペグの流用を考えてみました。
側面から見て、後方・下方に寄り過ぎているように思えるペグ位置を設定したメーカーの意図を確認したい、という欲求も大きい要素です。
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左がモンスター純正品、右がSS純正品です。大きさ(太さやボリューム感)がまるで違いますね。
日本メーカーと比べ遥かに小規模生産ゆえ、できるだけ設計や工作の共通化を図っているに違いない、と考えて、手元の部品で仮合わせしてみると、
①可倒式の軸心ピン径が、SSは8mm、Mは6mm
②フットペグいちばん奥~可倒軸心間距離が、SSに比べてMは2mm少ない
③ペグの取り付け部(ピン穴)外幅が、SSに比べてMは約4mm少ない
ということは、
①→SS用ホルダー軸穴に肉厚1mmのカラーを入れる
②→SS用ホルダーの、ペグいちばん奥との接触する壁面に、2mm厚のスペーサーを取り付ける
③→M900ペグとホルダーとの間に入るスペーサー(2mm厚×2枚)を使用する
これらを対策すればボルトオンで装着出来そうです。
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SS用・M用ペグの間にある、右側が①カラー(輪切りにして使用)、左側が③ホルダーとペグの間に入るスペーサーです。
②のスペーサーは上の建築金物(2mm厚、亜鉛めっき仕上げ鉄材)を素材に使用、マーキングした位置で切断して穴も活用。切り口が錆びても下側になるので目立たないはず。

大した精度は要らないので電気ドリルで
ホルダーに穴を開け、M4タップを立てる。(写真のような目線で取り付けブラケット部との平行を立体的に意識して、ほぼ直角に穴あけ成功)
M4皿ビス1本(ねじロック塗布)の取り付けだが、回転はブラケット間で自然と規制される。ペグを踏めばスペーサーは壁面に押さえつけられるので、アルミ鋳造製ペグに対し摩耗しにくい鉄製ならばOK。
個体差などでペグが下向きになってしまう場合もシムを入れれば調整可能です。

M用ペグは仕上げが粗く、可倒軸部分が金型の合わせ目で結構ずれていてブラケット幅にうまく収まらないので、やすりで段差を削る。

元々のホルダー側穴にリターンスプリングを引っ掛けて組み付け完了。
可倒軸リターンスプリングも6mm径のM900用ピンとともに使用。
ピンは穴に通しやすいよう、先端に丸みをつけてあります。
ペグ前後のスペーサー位置を入れ替えれば、前後各2mm移動も可能です。
※当初は旧ドゥカティMHRと同様に、可倒軸のリターンスプリングなしで組んでみたのですが、
後退角が付いていることと、グリップが上がったせいで、踏みかえようとするたびにペグが靴底に付いて折りたたまれてしまい危険なので、かなり面倒な思いをしてリターンスプリングを組んだのが実際のところ。
可倒軸の抜け止めクリップを、SSのスナップリング留め(錆びやすい)から、Mと同じEリング(めっき仕上げ)に変更し、車体外側から差し込めるようホルダーを切削加工して出来上がり。
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遥かに軽快でスポーツ度が増して、見違えるほど好ましい雰囲気。
これぞスーパースポーツ!
跨って踏んでみると、細身で面圧が上がったことでのソリッド感向上と共に、
靴底へのペグのグリップは大幅に向上しました。
また、ペグが短くなり、必然的に車体内側に近い部分を踏むので、車体の挙動への影響度も変わったようです。
社外品と組み替える前に、純正品の潜在能力を掘り起こす改造も、地味ながらマニアとして追求する価値のある楽しみの一つと思います。