
ようやくドゥカティらしい、走りの扱いやすさが得られてきたので、次の段階に備えてタイミングベルトを交換しました。
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【作業手順】
①ベルトカバー、スパークプラグを取り外す。
②3ヶ所のプーリーを、Oバンク圧縮上死点の合わせマークに合わせる。
(⑨の作業が終わるまで動かしてはいけない)
③各バンク可動側ベルトテンショナーを取り外す。
④Oバンク(水平側)→Vバンク(垂直側)の順にタイミングベルトを取り外す。
⑤固定側、可動側ともテンショナーベアリングの動きを確認・清掃。問題があれば交換。
⑥ベルトの奥になるシリンダー外壁面を清掃。
⑦Vバンク→Oバンクの順に新しいベルトを取り付ける。
⑧各バンク可動側テンショナー装着、合わせマークのずれがないか確認。ずれていたらベルト装着をやり直し。
⑨Oバンクのベルトテンション調整、可動側テンショナー本締め。
⑩クランクを数回転させてから②の位置に合わせ直し、ベルトテンションに変化がないか再確認。
⑪クランクを正方向(タイヤと同じ回転方向)に270度(3/4回転)回し、Vバンクのベルトテンション調整。
⑫クランクを数回転させてから⑪の位置に合わせ直し、ベルトテンション再確認。
⑬ベルト周辺に異物(外したボルトなど)がないことを確認し、ベルトカバー取り付け。
⑭再度念のためクランクを数回転させ、不自然な抵抗や引っ掛かりがないことを確認。
⑮スパークプラグを取り付け、電源ON、エンジンを始動。
異常がないことを確認し作業終了。
ベルトのテンション調整については、以前の記事をご参照ください。
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【作業のポイント】 ※思い出したことがあれば随時追記します。
●一般的にショップ作業の場合、トラブル予防の意味で、ベルトと同時にテンショナーベアリングも交換するのが一般的と思われます。
筆者は経過観察予定、バルブタイミング変更も試してみたいので、今回は点検にとどめ、テンショナーベアリングは交換せず。必要に応じて交換します。
②古いベルトを取り外す前に各2ヶ所、合わせマークのところにマーキングをして、
新しいベルトにも同じ位置にマーキングを写しておく。
④⑦ベルト脱着にはコツと少々力がいるが、道具でこじったりせず手で作業する。
てこでベルトの一部分に力を掛けた場合、その部分だけ片伸びしてタイミングが正確でなくなる可能性と、内部組織にダメージが及んだ場合は破損に至る危険性がある。
●先にクランクケース側プーリーにベルトを掛けてから、ヘッド側プーリーにベルトを掛ける。
現車の場合、Oバンク側プーリーに、何か道具を当てて(マイナスドライバー?)てこにしてベルト装着したような痕跡(傷)があり、装着時にベルトを傷つけないようダイヤモンドやすりでカエリや傷の突起を修正した。
●Vバンクプーリーはバルブスプリングのテンションが掛かっていて、合わせマーク位置から動いてしまうので、片手でプーリーを押さえながら、マークに合わせてベルトを装着する。
●Oバンクプーリーはベルト外れ止めの”堤防”があるので、ベルトを装着しづらい上、
下の写真のように、ベルト下側からテンションを掛けるとカムシャフトは時計回り方向に動くので、その分を見越してベルトを装着する。
当方の場合、ベルトがたるんだ状態でひとコマ分進み遅れ位のタイミングに合わせ、プーリーの端にベルトを掛けながらOバンクプーリーを手で回してベルトを載せるように掛けた。
ベルトを装着したら、手でテンションを掛けた状態で各プーリーの合わせマークを必ず確認する。
●装着したら、O/Vバンクの別と、ベルトに回転方向の矢印を書いておく
※注意:上の写真は間違って矢印が逆向き。このエンジンはクランクシャフトとカムシャフトは逆回転の関係になります。
●念のためタイミングとは反対側のカムシャフトエンドホルダーを外し、標準のカムシャフトであることを刻印(OHT。車種や年式でバリエーションあり)で確認して作業した。
(一般的に見慣れないと思われる扇形のプロファイルは、デスモドロミックの閉じ側カム)

というのも、作用角が大きいハイリフトカムの場合、バルブが閉じている時間が短いので、圧縮上死点付近でプーリーを回し過ぎると、ピストンに当たってバルブを曲げる可能性があるかもしれないので、知識・経験のある専門家に任せた方が安全と思われる。圧縮上死点でバルブ傘部とのクリアランスが狭い、高圧縮ピストンが組まれている場合も同様である。
こと長年を経過した2バルブVツイン ドゥカティの場合、エンジンにも何らかの手が加えられていることが少なからずあるので、所有車両のエンジンの仕様を把握する意味でも折を見て各部を確認することをお勧めしたい。
現車の場合、吸気ポートは粗削りの切削がされていた上、今回確認したシリンダーバレルは99年の鋳込み刻印があるテクノル社製(オイルラインには変更はない模様)で、何らかの理由で交換されているようである。間違って(?)高圧縮ピストンでも組まれていれば儲けものだ(笑)
⑧テンショナーベアリング装着ボルト/ボルト穴はロック剤のカスを掃除してから取り付ける。
強めに締められていてボルトが曲がっている場合は交換する。
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【作業総括】
●エンジンの構造や作動メカニズムは概念として知識を持っているが、実際にバルブ駆動系の組み付け作業をすると、想像以上に気を使い、知識・作業の精度が問われることを痛感した。
スポーツカムシャフトが組まれている場合はダイヤルゲージやタイミングホイールで圧縮上死点やクランク角を正確に管理する必要があり、場合によってはバルブタイミング同調のため調整式プーリーやオフセットキーを必要とし、遥かに難易度は上がる。
●以前(30年以上前)分解整備した900MHR(ベベルギヤでカムシャフト駆動)の場合は、タイミングマークを合わせさえすれば、組み付けの際に絶対にずれることはなかったが、
ベルト(やチェーン)によるカムシャフト駆動の場合、テンションの掛け方でタイミングがずれることを見越した作業が必要と気づいた。
●とはいえ、タイミングベルトは軽量で、整備性もよいので、正しい知識と慣れは必要だがスポーツバイクに適した構造だと思う。
ドゥカティ2バルブVツインの場合、長期にわたって作られ、車種間で共通部品も多く、カジバ傘下以降の時代は製造台数も飛躍的に増えていて、部品供給難の心配が少ないこともありがたい。
自分で作業をしないまでも、オイル交換時などにベルトテンショナーの錆びや固着、動きの悪さを点検すれば、大出費となり、危険も伴うベルト切れやコマ飛びを未然に防ぐことは可能と思われる。
テンション調整でバルブタイミングも適正化・同調できればエンジンの回転フィーリングも向上するので、意欲のある方は正確な資料や経験者の助言の元、実践されると愛車への愛着が増すこと間違いなし。
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Posted at
2025/03/25 14:39:34