• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

灸太郎くんのブログ一覧

2025年06月25日 イイね!

DUCATI SSの整備【60】リヤホイール/タイヤのサイズダウン

DUCATI SSの整備【60】リヤホイール/タイヤのサイズダウン以前、ご近所の腕達者にご試乗いただき「曲がらない」評を頂戴しておりましたが、
このところの試運転時の挙動(進行方向と並行する舗装の継ぎ目などでのパンク時のようなよろめくような反応)から、
センター部ばかりが擦り減ったタイヤプロファイルに大きな問題があるのではないか?と思い当たるようになり、交換を思い立ちました。

以前からサイズダウンを試してみたいと思い仕入れておいた、M400の中古ホイール・タイヤを装着してみます。

リム幅は4.5インチ、タイヤサイズは160/60-17。
プロファイルを比べてみると、センターの丸みがまるで違っています。
(左が160/60-17、右が使用中の180/55-17)
使用中のタイヤトレッド面を触ってみると、中央部分1/3程度と両外1/3ずつとの境目辺りに峰があるような減り方になっています。こりゃあダメだ(笑)
alt

気になる外径の違いは摩耗の影響もあり、今履いている5.5インチ幅リム・180/55-17の組み合わせと比べ、実測半径で2~3mm程度の差なので、二次減速比(=チェーン・スプロケットサイズ)や前後車高調整はそのままと出来るのは嬉しい誤算。

この時代(916系片持ちホイール支持車両以外)のドゥカティは、各車リヤホイール周辺寸法は共通(スプロケットオフセット量にバリエーションがあり)なので、アクスル径が合えばボルトオンで流用可能ですが、
その割に純正品を流用してのサイズ変更(特にサイズダウン)、ホイールスタイル変更の話をあまり聞かないのが不思議です。
****************************************

【余談】
筆者も経験がありますが、改造派は大幅な軽量化による変化を体感できて、見た目もいい社外品マグネシウムホイールに目が向いてしまうのだろうと思います。
但しレースで使用されているものを見てもわかるように、ホイールというものは特に脱着作業時に傷がつきやすく、マグネシウム製の場合はどうしても酸化(腐食)=強度低下の原因となるのと、
ベアリングやブレーキローター脱着などで傷めてしまう可能性もあり、タイヤ交換含めメインテナンスは知識と技術力のある経験豊富なショップ・工場に依頼するのがお勧めです。

見過ごされがちですが、スポーツ走行向けホイールは軽量化のためハブダンパーの容量が小さく(純正品との重量差はこの構造の違いも大きいと思われる)、
早い場合は数千キロ程度でもスプロケットにガタ(回転方向の)が出てくることがあるようです。
社外品ホイール購入の際は、専用ダンパーラバーのスペアを多めに確保されることをお勧めします。

マグネシウムホイールの走行中の破損の話は直接聞いたことはなく、軽さも感動的で走行性能への影響も大きいことは身をもって知っていますが、
今の筆者は部品レベルのコンディション維持にはあまり神経を使いたくないので、サイズ選択などの必然性がない限り、メーカー純正のアルミ製を使うつもりです。
****************************************

ちなみに今回使用するM400純正ホイールは、今まで使用していたものと同様、
スポーク部がマルケジーニ3Rスタイル(ブレンボ製造)のもの。
※少量販売されたらしいアフターマーケット品のアルミ製マルケジーニ3Rは、スプロケットハブ部分がマグネシウム製と同様の別構造になっていて、まったくの別物ですが、大して軽くないそうです。念のため。

キャブレター時代のSS/Mオリジナルのホイールは、ヤマハ初代FZR系と類似した、外周に近いほどスポーク部の横面積が大きくなるスタイルで、3次元に形状が変化していく翼断面スポークの凝ったものではあるのですが、
筆者はマルケジーニ3Rや初期マルビックのように、横から見て外周に近いほど細くなる方が好みで、メーカー曰く若干軽量なようです
外周に近い部分の質量が小さければ、当然慣性モーメントも小さいし。

迂闊にも現物同士で重量を比較するのを忘れてしまいました。
同形状の手持ちスペアで測定したところ、
4.5インチ幅リム+160/60-17タイヤ=12.6㎏(ピレリディアブロ)
5.5インチ幅リム+180/55-17タイヤ=14㎏(今まで使用していたもの=ピレリエンジェル)
(いずれもブレーキローター(245mm径)含む)
その差は約1.4㎏。馬鹿にはできません。
タイヤ品種に違いはありますが同銘柄。摩耗はほぼ同程度。

【見た目の変化】
撮影アングルが違うので参考まで。チェーンとタイヤのクリアランスは明らかに違いますね。
上は交換前の180幅タイヤ、
下(タイトル写真と同じ)は交換後の160幅タイヤです。
alt

alt
見た目のボリューム感は、サイズ表示の差(2cm)だけとは思えないほど印象が違います。
美は見る者の目に宿るといいますが、筆者としては細身の方がSSのキャラクターには合っているような気がします。
バイク全体が一回り小さくなった感じで、VTスパーダのように見えなくもない(笑)

****************************************

【装着後の変化】
ハンドリングの変化は、最初の四つ角を曲がる際にわかるほどです。比べればごく自然で、
やはりタイヤの摩耗がハンドリング(リーンの過渡特性)に大きく影響していたようです。

まだ攻め込むほど走り込んでいませんが、コーナリング時のリーンアングルは明らかに減っているようで、タイヤの接地跡をみても左右とも端の方の数センチは殆ど使われていません。

今までは体全体で曲がることを意識して先行動作を心掛けていましたが、
今度は特に意識しなくても浅い曲がりのカーブならばやり過ごせてしまう感じです。
ある意味面白みが減ったような気がしないでも無い(笑)

記憶の中の750F1(足回り大変更後)のハンドリングにかなり近づいたように感じます。
空気圧、前後車高やサスペンション設定など、いろいろ試して楽しみたいと思います。

Posted at 2025/06/25 10:17:27 | コメント(0) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記
2025年06月23日 イイね!

DUCATI SSの整備【59】キャブレター再調整

DUCATI SSの整備【59】キャブレター再調整キャブレターのジェットニードル クリップ位置変更で、吹け上がりなど改善あり、とレポートをしましたが、
その後の推移で徐々に排気音が重くなり、スロットルのツキも緩慢になる様子があって、
点火プラグをチェックしてみると明らかに水平シリンダー側がくすぶっていました。

とりあえずパイロットスクリュー調整で様子を見たのですが、改善の様子がないので、
面倒でも思い当たる可能性を一つずつ潰していくより仕方ありません。
****************************************

●油面(フロート高)確認・調整
一番初めに確認すべきだったのですが、当初はどちらの気筒もくすぶっていたこともあり「そう狂うこともないだろう」と高を括っていたのが正直なところ。
片側(水平側)のみ点火プラグがくすぶってしまう事態に至り、確認してみたところ、
フロート高で1mm以上の違い(水平側フロート高(上から吊るされる)が低い=油面が高い)がありました。
alt
直立シリンダー側のフロート高に合わせて様子を見たところ、フィーリングや排気音の改善はあったものの、点火プラグの焼け具合にはあまり変化がなく、やはり水平側がくすぶり気味になっています。

気になるので数日後、再び分解し確認してみたところ、まだ1mm弱、合わせたつもりの水平側のフロート高が低いので、再度調整。
同形式のキャブレターを使うヤマハTDMのサービスマニュアルを見ても、専用工具を使った実油面測定しか寸法指定がないので、とりあえず燻らない側の垂直側に合わせました。
ツキや回転の滑らかさはさらに改善し、水平側点火プラグの焼けも若干改善した。

【余談】
ミクニBDSTキャブレターはダウンドラフトと称するも、実際は”強スラント型サイドドラフト”と呼べそうな構造で、各ノズルの吸い口(=ジェット類)の取り付け位置(角度)のみ変更したような造り。

フロートチャンバー実容量は非常に小さく、ポンプ圧送が前提の構造と思われます。
わずかなフロート高の違いで実油面の違いは大きくなりそうで、車体の上下左右への動きに伴うG(重力加速度)や油面高が、各ノズル吸い上げにも影響を与えそうな気がします。


●パイロットジェットを水平側のみ1ランク絞る
油面を見直しても、依然点火プラグの焼き色は水平側がくすぶり気味なので、
不本意ながら対症療法として水平側のパイロットジェットを変更して傾向を探るためことにしました。

垂直側は#52.5のまま、水平側のみ#50としてみたところ、両気筒間の点火プラグの焼け色の違いは明らかに減少し、ほぼ同程度の焼け色となったので、ひとまずそのまま様子を見ることにしました。
パイロットスクリューは再度調整しなおし。水平側の戻し回転数を増やしてアイドル時の流量を補正するかたちになりました。


●スターターバルブ リターンスプリングの調整
以前分解した際、樹脂製のスターターバルブにカーボンのような堆積物があり、様子を見るため片側のキャブのみ柔らかい真鍮ブラシで除去していた記憶でした。
迂闊にもどちらの気筒だったか記録がないので、バタフライバルブの連結を外すことになり面倒だが、燃焼不揃いのわずかな可能性でも突き止めるべく、思いついた部分は再度分解・確認してみました。

するとどうやら記憶違いで、両気筒ともブラシで清掃済み。拍子抜けでした。。。
せっかく手間をかけてばらし組みをするので、この部分からのリークの可能性を減らすべく、
リターンスプリングに薄いワッシャーを一枚かませて圧着力を上げてみた。
****************************************

【再組み付け、実走テスト、同調確認】

◆キャブレター組み付けの際、バタフライバルブの開き始めで、アイドルポートが見え始めるタイミングを揃えておくと、アイドリング時の同調はほぼ調整不要
念のため後ほど暖機状態でバキュームゲージで測定するが、微小の調整でOK。

◆組み立て後、ケーブルを装着したキャブレターをインシュレーターに差し込んで、
バンド締めをする前に、二基を貫通する連結ボルト(2か所=下の写真、左上端と右下端)を一旦緩めて、スロットルグリップを何度か全開→全閉を繰り返し、バタフライバルブシャフトの整列を出してやる。
alt
スロットルグリップが一番軽く作動する状態で、インシュレーターバンドとキャブレター連結ボルトを締め付ける(M5ボルトなので、ドライバーで締める程度のトルクでOK)。

◆オイルクーラー移設の結果、固定ボルトを外し、水平側シリンダー前方にずらさないとパイロットスクリュー調整ができない。頻繁に路肩で作業をするのは面倒なのが正直なところ。
(同じ位置にあるM900も同様だろう)
とはいえアレンキーとマイナスドライバー各1本ずつ(と夜間は懐中電灯)あればできるので、民家から離れた場所を見つけて調整。
出先でオイルクーラー取り付けボルトを失くさないよう金属製トレイに置くようにしたい(100円ショップの調理器具売り場で入手可能)。
※作業後、オイルクーラーを元の位置に装着するのをくれぐれも忘れないように。出先で路面に引きずって破損したら自走不可能になる可能性大。

パイロットスクリュー調整の際はアイドリングをできるだけ下げておき(1000rpm弱)、
1/4回転程度ずつ締めこんだり緩めたりして、それぞれの気筒ごとにアイドリング回転が上がるところをひとまず探す。
よく判らない場合、締め方向・緩め方向とも調子が悪くなるところの中間あたりを目安にする。
1/16回転程度を最小単位にして仕上げ。

◆ただしアイドリングが上がるところが最適とは限らず、低開度(1/8程度)のブリッピングを繰り返しながら、全閉から軽く吹けるスクリュー開度を探してやる。両気筒の調整が合うとダウンシフト時の回転合せもし易い。

◆気温が30度近くともなると、暖機後のアイドリングでどんどん油温が上がってしまう。
温まり過ぎるとキャブレター内のガソリンが自然気化しやすくなり、空燃比は実走時よりもリッチな方に振れると思われる。
現在はオイルストレーナー部分で測定しているが、表示100度くらいを目安に作業を終えたい。

◆軽く吹けあがる位置でパイロットスクリューの調整をして、今回の作業は一旦終了。
調子はまずまずといったところ。
Posted at 2025/06/24 21:48:51 | コメント(2) | トラックバック(0) | 日記
2025年05月11日 イイね!

DUCATI SSの整備【58】点火プラグの再生

DUCATI SSの整備【58】点火プラグの再生ご無沙汰いたしておりました。
前回から随分間があいてしまいましたが、整備は抜かりなく(?)続いています。

5月は業務多忙で、その後も整備と試運転に忙しく(笑)記事を書くのがつい後回しになってしまいました。
備忘録や思考整理の意味もあるので、後追いですが整備の記録を綴っていきます。
****************************************

気付いたら手持ちの新品が残り1セットになっていたので、
廃品箱に放り込んでいた、試運転でくすぶった点火プラグを、思い付きで再生してみました。
全て走行距離はせいぜい数百キロ程度なので、電極摩耗は問題ないレベルです。

昔は分別も考えもなしに、くすぶった点火プラグをスチールブラシで磨いていたのですが、
考えてみれば中心部の絶縁体表面に金属成分をこすりつけて絶縁性能を落としていたわけで、赤面の至りです。。。
****************************************

一年ほど前、あくまで試してみる目的で仕入れてみた、屋外(開放)作業用のブラストガンとメディア(吹き付ける砂の類い)セット出物
文字では読んだことがある、昔のプラグクリーナーよろしく、サンドブラストでクリーニングを試してみました。
alt
段ボール箱をキャビネット代わりに、安全メガネと防塵マスク、手袋装備でブラスト初挑戦!

間近に作業を見たことがなく、どの程度の強さで吹き付けるのかなど、さっぱりわからないので恐る恐る着手したものの、トリガー引いても吹き出さない。。。
調べてみると使いっぱなしにされてノズルに至る経路が詰まっていたようで、ノズルとガン内部を掃除して試してみると、恐怖を覚えるほどの強さで吹き付けるわけでもなく一安心。
但し想像以上にメディア(アルミナ砥粒)が跳ね返って散るので、全身砂まみれ(笑)作業帽も必須でした。

alt
ブラスト後(左)と作業前、違いは一目瞭然。
ブラストを当てた先端部分は付着したカーボンばかりか、めっきも吹き飛ばされています。
****************************************

実際に点火性能が復元しているのか?
初めの一本をプラグキャップに差し込んでテストしてみると、新品同様にスパークしていて、してやったり♪
気を良くして、残りのくすぶったプラグも全てブラストクリーニング。
alt

問題は、ブラスト後のメディアの清掃です。
ひとまずエアブロー後、ガラス瓶に点火プラグと灯油を入れてすすぎましたが、
幾度も繰り返してもメディア(とカーボン)が出てきます。
alt
写真は2度目か3度目のすすぎの後の沈殿物の様子(すすぎ後、少し時間が経ってからの撮影)。
4度目以降は容器と灯油を毎回替えながら、沈殿物が出なくなるまで、結局6回ほど灯油ですすぎました。

もしかすると目に見えないレベルの異物は残留しているのかもしれませんが、
筆者の場合750F1まではエアクリーナーなしで平気(?)で乗っていたので、ひとまずこれで良しとしました。

※昔のプラグクリーナーを使った場合、その後の洗浄作業はどんなふうにされていたのでしょうか? 経験者のアドバイスをいただけると幸いです。
****************************************

洗浄後はすぐ使えるように電極ギャップを確認・調整(0.7mm)しておきます。
めっきが剥がれているので、すぐ使わない分は錆びないように、パーツクリーナーなどは使わず灯油分は紙に吸わせただけの状態で保管します。

【余談】
昔の筆者はお恥ずかしい話、電極ギャップ寸法など無頓着に、買ってきたまま交換していたのですが、
バモスホビオで頻繁に点検交換するようになって以来、ギャップを測定・調整してから使用するようになりました。
毎回NGK製品を購入しますが、意外なことにギャップ指定のあるもの含め、±0.2mm程度のバラつきがあります(例えば品番末尾11=ギャップ1.1mm指定)

筆者は購入経験がありませんが、イリジウム電極などはギャップ調整不可の筈ですし、
それ以外の一般品でも新車装着用納品の場合など、ギャップ管理はどうなっているのか?不思議でなりません。
あるいはアフターマーケット用に限っては、調整前提で厳密な管理をしていないのかもしれませんね。
****************************************

筆者はメーカー指定同等品の、NGK品番【DCPR7E】(端子分離型)を使用していますが、今どき一本ワンコインでは到底買えないので、
半ばダメもとで試してみた点火プラグ再生は、かなりの節約になりました。
alt

とはいえ、ブラスト後の洗浄(作業者本人と衣類含む)が大変なので、
くすぶったプラグがある程度溜まったところでまとめてクリーニング再生・洗浄するのが得策と思います。

Posted at 2025/06/23 20:02:20 | コメント(0) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記
2025年05月06日 イイね!

DUCATI SSの整備【57】変速タッチの改善 & 乾式クラッチ考

DUCATI SSの整備【57】変速タッチの改善 & 乾式クラッチ考
致命的とは言えないレベルではあるが、変速タッチが重く、ダウンシフト時に時折ミスが起きるのが気になっていた。

変速フィーリングはトランスミッション本体やペダルなどに主原因はあるが、卑しくも”商品”として広く一般向けに販売された車両。
明確な故障や不具合がない限り、スロットルやクラッチの遊びや応答性、レバーやペダルなどの動きの軽さや滑らかさ、無理のない乗車姿勢といった、関連操作を含めた車両&運転者全体で「動的」に考える必要があると思います。
****************************************

●ギヤペダルリンケージの最適化
【変更前】
alt

【変更後】(※シフトロッドが車体から離れて見えるのは撮影アングルの違いゆえ、為念)
alt
・シート座面を実質10mm以上高くしていても筆者の体格では膝の曲がりがきつい。
 必然的につま先は下向きにしたいので、以前よりもさらにペダルを下向きに調整。
・ピボット奥のワッシャー厚み変更で、ペダルとシフトロッドを1mm内側に追い込む。
 (曲げモーメント減少のため、ギヤチェンジシャフト支持部(クランクケース内ベアリング)に、たとえ僅かでも近い内側に寄せる)
・ペダル軸/ギヤチェンジシャフトとシフトロッドが、上から見て90度で交わるよう、
 ロッド位置シム調整&チェンジシャフトレバーのクランプ位置(スラスト方向)調整。
 直角でなくても連結部の作動が円滑なのがピローボールの美点だが、軸と交わる角度が90度からずれると回転力と曲げモーメント以外に、スラスト方向にも力が掛かり好ましくないように思う。
 (車体中心線に平行なフットペグブラケットの外面と、シフトロッドが平行になるように)
・動きが重い片側のロッドエンド(ピローボール)を、僅かにがたつきがあるが動きの軽いもの(中古保管品)と交換。これに関しては適材適所で個体選択すべき。
・ギヤチェンジシャフトオイルシールにメタルラバーを吹き付けて潤滑

●クラッチラインのエア抜き
冷間時は少ないショックでニュートラルからローギヤにシフトできるが、温まるとショックが大きくなりガチャンと音がするようになるのがいたたまれない。
暖機が進むにつれ熱膨張でプレート/ディスク間のクリアランス減少、あるいは面歪みの増幅で切れが悪くなると思われるが、エア噛みでストロークが減少していないかも気になるところ。

・すでにフルード交換後、2度行なっているが、再度フルード交換がてらエア抜きをおこなう。
※スレイブ側は、それなりに高温になるクランクケースカバーに取り付けられている上、
筆者の住環境(市街地)の場合、”通算ストローク量”(ストローク量×回数)がブレーキシリンダーのそれよりはるかに多いので、ブレーキフルードより早く褐色化する。(劣化と同義ではないのかもしれないが)
alt
ホースの中間部が高くなっているとエアが滞留するので持ち上げておき、スレイブシリンダーからマスターシリンダー・リザボアに向けてなるべく直線的にして、
各部をプラハンマーで軽く叩き、段差や角などに引っかかっているエアに衝撃を与えて移動のきっかけを与えてやる。
結果、想像以上に両シリンダーから気泡が上がってきた。

※リザボア別体型マスターシリンダー(横置き)は見た目のレース車両イメージを狙っていると思われるが、ホース差し込み部で内径に段差ができるためかエアが滞留しやすい(抜けにくい)ようだ。
余程カウルとマスターシリンダー上面のクリアランスがない場合を除き、余計なコストを掛けるメリットがあるとは思えない。
(そもそもストリート車両の場合、隣接して高さのあるハンドルスイッチが必ず存在するはずだ)

※クラッチ本体側は整備未着手につき期をあらためて構造・現状確認を兼ねてディスク周辺だけでも分解整備を行いたい。
********************************************

【余談】
但し「乾式」(=オイルに浸っていない)という言葉から想像されるほど、例えば旧BMW RシリーズやグッツィVツインのような乾式単板とは違って、切れはそれほど良くないようだ。

実際、通気穴からプレッシャープレートの動きを見ているとストローク量はわずかで、500ccのパンタSLに端を発する軽量コンパクトを旨とした基本設計(軸間距離)を変えず、
大排気量=高出力化に対応して、摩擦係数を高め、ディスク枚数を増やしてクラッチ容量を大きくするための乾式化(750F1中期以降)と思われる
必ずしもレース前提の構造ではないであろうが、思想としては競技車両と軌を一にしているように思える。
(初期のパンタSL登場当時から、面積が小さい分は圧着力で補っていて、日本車よりも早い時期から油圧作動を取り入れていたが、元来レバーの引きは重い)

※ドゥカティに限らず、乾式クラッチ採用の目的はオイル攪拌抵抗を無くすため、との記述を二輪誌では多く見かけたが、的外れな気がする。
筆者の意見では「可能な限りのクラッチ小径化(あるいは外径維持)」=軸間寸法最小化(=エンジンユニットコンパクト化)と慣性モーメント(=質量×回転半径)軽減、摩擦係数を高めてクラッチ容量増大が主な目的、副次的には更なる多板化が比較的容易で、整備性の向上もあるように思う。
【追記】
忘れていたが、フリクションディスクライニングの摩耗かすがオイルに混入しないこともメリットと思う。

読者諸兄のご意見はいかがでしょうか?

****************************************

【整備後の操作感】
クラッチラインエア抜きの効果に大きな期待を抱いたが、意外やクラッチの切れや操作感に大きな違いは感じられない。多少無効ストロークが減った(気がする)程度。
ではあるが、変速時のペダル操作力は明確に軽くなり、変速時の節度の感触は向上した

恐らくはペダル角度変更とピローボール交換の効果が大きいと思われるが、
ちょうど最近入手したクシタニ製レーシングブーツのフィット感や足首の動かしやすさも功を奏しているように思う(ファスナーやかかと周辺の樹脂プロテクターを排除した造りでお勧め!)。

細かな事柄の積み重ねが違いにつながると信じて、今後も煮詰め作業を楽しみたい。

長年の愛好家としての経験や読書などの情報を基に「なぜそうするのか」科学的な考察を意識しつつ無い知恵を絞った改善作業を自ら行い、結果を確かめる試運転を行うことは、
ドゥカティの「機械としての造りや考え方の面白さ」に心奪われた一マニアとして無上の喜びであり、
好ましい結果が得られた場合は嬉しさのあまり寝付けない夜もあるほどで、我ながら大人げないとも思う(笑)

Posted at 2025/05/10 14:04:48 | コメント(1) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記
2025年05月03日 イイね!

DUCATI SSの整備【56】キャブレターニードル調整と整備性改善【追記あり】

DUCATI SSの整備【56】キャブレターニードル調整と整備性改善【追記あり】キャブレターのスライドバルブのリターンスプリング交換したところ、スロットルオフ時の挙動を扱いやすくなる効果があったので、
いよいよお楽しみのスロットルオンの方向での改善を図ってみました。

●ジェットニードルクリップ段数変更(タイトル写真参照)
点火プラグはしっかりと「真っ白に」焼けていたので、クリップ位置をメーカー標準「上から4段目」を、「上から5段目」(最下段)に変更してみました。
下に行くほど細いテーパー形状のニードルがスライドバルブに対して高い位置になり、初めからメインノズルの穴とのすき間(=燃料吐出面積)が大きくなるので、広範なスロットル開度領域で燃料を増量する効果があります。

****************************************

●エアボックスの加工(メインテナンス性の改善)
今回の作業ではキャブレター本体をエンジンから取り外しはしませんが、
それでも
・カウリングサイドパネル左右
・エアボックス/バッテリーケース/点火系部品ユニットと関連配線類
・燃料タンク留めバックルの受け金具
といったところを取り外す必要があります。

900MHRや750F1ではキャブレター脱着はいたって容易(エアクリーナーなどない(笑))だったことを思うと、所要時間や復元の手間は(独善的ですが)結構なストレスになります。
そこで今回、カウリングサイドパネルを外さなくてもエアボックス/バッテリーケースを脱着できるのではないか?と思い立って、工夫してみました。

alt
エアボックス右側、キャブレターとのジョイント部のすぐ後ろにリブが立っている部分に穴を開け切り拡げてやり、キャブレタージョイントバンドを逆向きに装着することで、バンド締付ボルトにアクセスできそうです(左側は既にこの部分が切除されているようで、ヒントになりました)。
alt
↑2点の写真比較
わかりづらいですが下の写真中央あたりのフレームパイプすぐ上、エアボックスの奥にキャブレタージョイント部のバンド締め付けボルト(マイナス溝を切った六角ボルト)が、上の写真よりも見え方が大きくなっています。
これなら何とかなるだろう、とやってみると、細く長い軸のマイナスドライバーでならば、辛うじてアクセスできました。マイナス溝に対しブレード幅が狭いですが、強く締め付けるものではないのでOK。

ボルトを回す際に、頭を押し込んでバンドを回してしまわないように注意は必要ですが、ひと手間減るのはありがたいです。
※この点ヤマハ車はジョイント締め付けバンドが回らないよう、ゴム部品に位置決めの突起があり、工夫の余地は低いもののよく考えられていると思います。
****************************************

【試運転の印象】
組み直してみると、エンジン始動時から違います。
暖かくなったせいもあるかもしれませんが、セルボタンを押し込むと即座に始動。
アイドリングの安定性や発進時の粘り(エンストしづらさ)も向上しています。
点火プラグを新調してからは、音質の重苦しさもなくなりました。

走らせると、低開度からエンジンの回り方が軽く滑らかになって、回転の上がりが速く、低負荷・低回転域でもギヤチェンジが気持ちよく決まります。
吹け上がりの軽さは「これぞドゥカティ!」と叫びたくなるもので、いつものテストコースをもう一周したくなる誘惑に駆られるほど(笑)、乗っていて楽しくて仕方がない♪

今のところ、パイロット領域とメイン領域の繋がり具合にも特に問題はなく、
以前気になっていた低負荷4000rpm近辺での力感が薄くバラついた排気音になる領域も、音のバラつきは変わりませんがトルク感はあり、開けた際の回転の上がり方(加速度)はかなり改善されています。
この中速レンジから軽々と吹けあがっていく感覚が筆者の好きなドゥカティらしさの片鱗で、
メインジェットを5~10番ほど上げるとさらにシャープな吹け上がりになりそうな予感がします。

筆者が以前親しんだ、加速ポンプ付きのデロルトPHMやFCRの”押し出し感”のある中速域とは違った、”切れの良さ”のようなフィーリングになりそうな気がして楽しみです。
今しばらくは現在の設定で足回りの調整を行いつつ、条件の許す場所で上まで回して運転者の感覚を慣らした後、先々は更なる変更を試してみたいと思います。

【追記】
ちょうどSS800ieで友人が来たので乗ってみてもらいました。
前回はキャブレターを当てずっぽうで調整したばかりの好調とはいいがたい状態で送り出していたので、「好きなだけ乗ってみて」と再度の雪辱戦(笑)。
「エンジンにせかされない感じがいいね」と機械としてのコンディションや扱いやすさには好評をもらいましたが、
「ロックまでハンドルを切ると右ミラーにブレーキレバーに添えた手が当たる」=左タイトターンで不意にブレーキを効かせてしまいそう、という指摘があり、切れ角を減らすことで対処することにします。指摘に感謝!
****************************************

試行錯誤の連続とはいえ、この辺りの調整はキャブレター自家整備ならではの醍醐味といえる領域と思います。
いくら技術力の高いショップの整備でも、個々のユーザーの好みを反映させたり、ライディングに合わせるのは、メカニックが現象や対処法を理解していて、余程コミュニケーションが取れていない限り難しかろうと思います。
Posted at 2025/05/04 05:00:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | 整備日誌 | 日記

プロフィール

「リタイヤ3台だけというのが不思議なほどの激戦オランダGP、今回もことごとく逆風下の角田は大健闘9位!流れが好転するといいね。」
何シテル?   09/01 11:43
灸太郎くん(キュウタロクン)です。 職業・思想・信条・立場など違えど 共通の話題で交流できるのは良いですね。 記述は残ることを意識しています。 ...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/9 >>

 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

リンク・クリップ

デーモンカー 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/03/04 10:02:12
熱意こそ原動力!セルフメイドGTO 
カテゴリ:改造
2023/09/16 17:45:53
 
人車共OH中 - サムライコンテッサ 現行エンジンを分析する! 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2020/06/16 18:52:16

愛車一覧

マツダ ユーノスロードスター マツダ ユーノスロードスター
第三期、またまたユーノス(笑) (新車当時、周囲では誰もロードスターとは呼びませんでした ...
ホンダ バモスホビオ 灸三郎くん (ホンダ バモスホビオ)
ステンレスたわし実験車 ”灸三郎くん” 号です♪ 慣れ親しんだアクティ一門の欲張りバージ ...
イタリアその他 その他 マランカ125 (イタリアその他 その他)
MALANCA ― 知る人ぞ知るイタリアの125ccスーパースポーツ、 マランカ125の ...
ヤマハ RD125-II ヤマハ RD125-II
2ストローク二気筒”リトルツイン”。自作Junkyard Special。 胸のすく吹け ...

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2024年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2017年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2011年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation