マークXが今年の12月23日で生産終了になった際、元町工場で開かれた生産終了セレモニーは、その様子がニュースになるなど話題になりました。
時の人気車が生産終了になることは珍しいことではありませんが、ニュースになるのはマークXとその前身のマークⅡが偉大なクルマだった証でしょう。
タイトル画像につけたのは、8代目の100系と呼ばれるマークⅡの兄弟車だったチェイサーで自分がかつて乗っていたものの写真です。背高のクルマが増えた今見ると、全長の割に共住空間となるキャビンは狭く見えます。これを、伸びやかでかっこいい形と見るか、大きいわりに狭くて無駄が多いと見えるかは、人それぞれだと思います。
マークXはスポーティーな大人のセダンとして売られてきましたが、もともとマークⅡはスポーティーよりもラグジュアリーを前に出したクルマでした。初代はコロナの上級車種として登場、途中ハードトップが追加になり、4代目以降はよりスタイリッシュなハードトップが主流となります。1980年代以降のハイソカーブームで日本中にあふれ、私が子供だった80年代から90年代にかけては、近所でも道路でもお店の駐車場でもたくさん見かけました。自分の父も70系と呼ばれる5代目のマークⅡのハードトップに乗っていました。
昭和63年に6代目が発売となり、その販売台数は頂点となります。当時はまだメインが5ナンバーだったとはいえ、全長が4.7mもあるクルマが月に2万台以上、そこにチェイサーやクレスタといった兄弟車も加えると3万台以上売れたときもあったんですから、すごかったんですね。
そんな大人気だったクルマが四半世紀を経て、生産中止に至ったことについて考えてみたいと思います。
(1)ミニバンの台頭によるセダンの退潮
ミニバンが本格的に普及しだしたのは、1994年に出た初代オデッセイ以降だと思います。当時はまだミニバンの後席ドアはヒンジドアが主流でしたが、背が高いクルマは広くて快適ということが認知されました。90年代後半になるとコンパクトなミニバンが充実し、マークⅡより小柄なラウムやスパシオ、もっといえばキューブやデミオでも大人4人が快適に乗れることが分かりました。
人間、一度いいものを知ってしまうとなかなかそれをやめられないものですが、車内の広さもそうでしょう。
軽自動車はワゴンRが高さに広さを求めて大ヒットしましたが、その後タントがもっと広いを開拓し、今ではスーパーハイトが主流になっています。
(2)クルマが贅沢品から実用品に替わった
乗用車が普及しだした頃はクルマは贅沢品でした。そして、昭和の時代は高度成長とともに上級志向がありましたから、次に替えるときはもっと上級なクルマが欲しいという志向がありました。
その最たるものが1983年に登場した7代目クラウンのCMで打たれた「いつかはクラウン」だと思います。当時のクラウンは、法人ユースがメインのセンチュリーなどの例外を除けば、国産車の最高級車でした。
マークⅡとその兄弟は、クラウンの次の位置づけでしたが、当時のカタログやCMには「高級車」の文言が多用されていることからも、その思いが窺い知れます。
しかし、クルマが一般的なものになり、特に田舎では一人一台が普通になった今、クルマは贅沢品ではなくなりました。
となると、上級志向も消え、自分が求める用が足せればいいので、必要以上の贅沢なもの→高級車は求められなくなったわけです。
(3)贅沢装備の大衆化
昭和の時代はもっと上級なクルマを求めたと書きましたが、当時は簡単に言うと大きなクルマほど装備が充実していました。パワーステアリングやパワーウィンドウといった快適装備は、上級なクルマから採用され、しかも世代交代ごとによりよくなっていきますから、みんなそれにあこがれたわけです。特にパワステは、有ると無いのとでは快適性に大きな差が出ます。
しかし、今や懐かしい響きの「フル装備」…エアコン、パワステ、パワーウィンドウは当たり前になりました。軽乗用車でも無いのを探すのが難しいほどです。そして、法整備もあってクラスを問わない安全装備の充実により高剛性ボディーやエアバック、ABS、横滑り防止装置といった装備が軽や小型車にももたらされました。
今でも高級車のみに用意される装備はありますが、一通りの便利装備は小型車にも用意されるようになり、そういった点でも高級車を求める意味がなくなりました。
(4)自動車性能の底上げ
昔といっても25年ほど前の軽自動車は、特にターボなしのAT車ですと高速道路でスピードを維持することがつらいものでした。当時の軽は3ATが普通。上り坂に入って加速したくても、ステップが離れていますので一段下の2速に落とすことができません(オーバーレブになってしまう)。
1500CCクラスの小型車も30年以上前は3速ATが珍しくありませんでした。エンジン性能の余力から、軽のように坂で減速はしないまでも、エンジンの唸る音が常に入ってきたわけです。
マークⅡクラスは80年代前半には4速ATが採用されており、高速道路でも唸るエンジン音が響き続けることはありませんでした。
今は、軽やコンパクトカーはCVTが多く、CVTですと常に最適なギヤ比を設定できますから、加速したいときは高回転でパワーを稼ぎ、定速走行では低回転で静かに走ることができます。
以上4点をまとめると、がんばってマークⅡを求めなくても、「広くて」「快適で」「充分な性能」を持つクルマが手に入る。じゃあそれでいいよね。
これが、マークⅡやマークXが求められなくなってきた理由にあると思います。
・・・と長々書いてきて自分が云うのもなんですが、実はほかにも理由はあると思います。次回はそれを検証したいと思います。
Posted at 2019/12/29 22:33:17 | |
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