
日本経営管理教育協会が見る中国 第391回--大森啓司(日本経営管理教育協会会員)
2015年11月30日、国際通貨基金(IMF)は、国際金融と外国為替相場の安定を目的に人民元を来年10月に5番目の国際通貨(ドル・ユーロ・円・ポンド)に加えることを発表した。今や中国は世界で一番の輸出大国なのだから、当然のことと思われる。ただ、私の周囲の中国人の意見を聞くと、今回のIMFの決定を必ずしも歓迎しているとは思えない。今回は、筆者が過去に感じた中国の貨幣、人民元の社会的な信用性についてまとめてみた。
1.信用できない中国銀行
「時々ニセ札がでてくるから気をつけてください」。私が2年前に北京の民族大学に語学留学した際、中国の友人が私にくれたアドバイスだ。ニセ札がどこからでてくるかというと、大学構内にあった中国銀行のATMからである。中国銀行は日本の都市銀行と同様、国の貨幣経済を管理しているはずである。その中国銀行からニセ札がでてくるのであるから、たまったものではない。ただ、今でも100元紙幣は必ずどの商店でも透かしの確認をしているのがいい例であろう。元来、性悪説をとる中国人だが、銀行も信用しないのが原点にある。
2.在日中国人ですら信用していない中国という国家
私には月に2回通っている鍼灸院がある。先生は中国人で奥さんは日本人、日本にはもう20年住んでおられ、私が中国のことに興味を持っていることもご存じで、この話題になった。
彼にこの話をすると、「信用できない」と断言された。中国国民は自国を信頼していないというのだ。
中国が人民元の相場を世界市場に委ねるというのは、もともと無謀な話なのかもしれない。中国政府はこれまでどちらかというと、一貫して穏やかな改革を進めてきた。人民元がSDR通貨(特別引き出し権)に採用され、世界の仲間入りという満足感がある一方で、為替介入を最小限に留める義務がでてくる。彼は、中国政府にそんなことは期待できないと言う。先進国のように金融の自由化ができておらず、まったく信用できないと。
3.試される政府の規制緩和
12月10日、中国人民元は4年4カ月ぶりに安値をつけた。経済減速の余波が波及したに違いない。加えて為替介入を最小限に留めた結果かもしれない。今年の成長率は7%前後で推移したが、通貨供給量は10月末までに目標を少し上回った。融資を増やし、景気を下支えるするように政府が促した結果とみられる。しかし、これもどれだけの透明性や効率化が図られたのかは未知数だ。
人民元がドルのような信頼される国際通貨になる日が訪れることはあるのだろうか。人民元の本当の実力が試されるのはこれからだ。(執筆者:大森啓司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)
:サーチナ 2015-12-30 14:00
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2016/12/13 07:03:55