
本日は昨年11月21日に発表され、11月27日より発売が開始されたトヨタ アクア G ‟GR SPORT”に試乗しました。このクルマは昨年トヨタの新しいスポーツカーシリーズとしてGAZOO Racing Companyがチューニングを行う‟GR”シリーズのクルマになります。試乗グレードはのGR SPORT”(2,322,000円)になります。今回は標準モデルのSグレードとの比較を交えながらの試乗記になります。
エクステリア

GR SPORT フロント

標準モデル S フロント

GR SPORT リヤ

標準モデル S リヤ
兄弟モデルだから仕方ないとはいえ、フロントはヴィッツ”GR SPORT”にそっくりですね。
そのことはさておいて、アクアは元々低燃費を追求するためハッチバックモデルとしては背が低めでしたが、専用フロントバンパー、専用ラジエーターグリル、専用リヤバンパー、そして専用サイドマッドガードの装着によりロー&ワイドがさらに強調されたスポーティエクステリアになりました。
しかし、標準仕様が写真の15インチスチールホイール+フルキャップとは・・・。17インチタイヤ+アルミホイールのパッケージが別にあり、また16インチタイヤ+アルミホイールがオプション設定されているとはいえ、ここの部分は少しメーカーも割り切っているなぁと感じました。なお、メーカーオプションの16インチタイヤ+アルミホイールを装着または17インチパッケージを選択した場合は最小回転半径が16インチタイヤ装着で5.7m、17インチパッケージを選択した場合で5.8mと標準仕様の15インチタイヤの場合の4.8mよりも大幅に大きくなるので注意が必要です。
インテリア

GR SPORTのダッシュボード

標準モデル Sのダッシュボード

GR SPORTシリーズのみに標準装備されるアームレスト付センターコンソール

リヤシートのニークリアランス。172㎝の私が運転席のポジションを調整した状態でのニークリアランスは10㎝ほど。
インテリアは標準モデルのSではポロ・フィット・デミオにはかなわないものの、ヴィッツ・ノート・スイフトよりはクオリティが高く感じられます。トヨタのクルマだけあって「見せ方」が上手いですね。ソフトパッドが使用されていないのですが、シボの入れ方やピアノブラックパネルの配置で上手くクオリティを上げています。GR SPORTでは標準モデルに加え、助手席前ダッシュボード部分の合皮の貼付、カップホルダーやフロントドアスピーカー部分にのロームメッキ加飾、ルーフやピラーのブラックカラー化、そしてGR SPORT専用のアームレスト付きコンソールボックスの追加などによりスポーティでクオリティの高い仕様となっています。
室内の広さについては全長・全幅・全高がそれぞれ4070㎜・1695㎜・1455㎜と全長・全高が最近登場したポロ(全長4055㎜・全高1450㎜)に近い数値となっていますが、アクアは空気抵抗を低減するためにフロントウインドゥの傾斜がきつくフロントシートのポジションが少し後部に配置されることもあって、リヤシートのニークリアランスはデミオ・スイフトよりは広いもののポロ・ヴィッツ・フィットよりもやや狭い10㎝ほどの空間になりますが、窮屈な感じはなくきちんと座れる空間が確保されています。
シート

GR SPORTのエンブレム付専用フロントスポーティシート

標準モデル Sのフロントシート
アクアのカタログに「座面が長くシートバックを高くしたゆったりサイズのシートを採用」と記載されているとおり、標準モデルでもコンパクトカーとしては大き目のサイズのしっかりした掛け心地のシートとなっていて、その出来はポロ・ヴィッツと同等であり、フィット・デミオ・スイフトよりも優れていると感じます。GR SPORTに装着される専用スポーティシートは標準モデルよりもサイドサポートがしっかりとしていて、合皮+スエード調の生地のクオリティも高く、標準シートよりも少し硬めな掛け心地もあって、日産ノート e-POWER NISMOのスポーツシートにはかなわないものの、その出来は標準モデルのシートを大きく上回っています。このスポーツシート掛け心地が優れているため、今回の長時間の試乗でも腰が痛くなることはありませんでした。
エンジン・トランスミッション

搭載される1NZ-FXE 1500CCエンジン+モーターのハイブリッドシステム

トランスミッションは電気式無段変速のみの設定
GRシリーズの中でも‟GR SPORT”はパワートレーンには手を加えないので、標準モデルもGR SPORTも共通のパワートレーンになります。搭載されている1500CCハイブリッドシステム(最大出力100PS)は20年以上前に初代プリウスから搭載されていて、熟成に熟成を重ねてきているもので完成度も高く、アクアはGR SPORTでも1100㎏と軽量であることから1500CC+αの加速力があり、急加速時にもたつきを感じるもののその加速力に不満を感じることはありません。ただ、GR SPORTは後述するシャシー性能が優れているため、より加速力を高める「POWER」モードスイッチがあると良かったかな、と感じました。
また、今回の試乗では渋滞及び信号の少ない条件のいいコースを走行したこともありますが、30㎞/ℓを切らない燃費を記録したのは驚きとともにトヨタのハイブリッドシステムの凄さを改めて感じたところです。
サスペンション・乗り心地

GR SPORTに装着されていたタイヤは185/60R15 ブリヂストンエコピアEP150

標準モデル Sに装着されていたタイヤは同じく185/60R15 ブリヂストンエコピアEP150
標準モデルの印象は「燃費が良く、静かで少し運動性能が向上したヴィッツ」という感じです。熟成が進みよりスムーズになったハイブリッドシステムや高遮音性ガラスの採用などにより静粛性が高く、全高も1455㎜とヴィッツよりも45㎜低いことがカーブ走行時のロールの少なさにも直結していると思います。走りそのものは必要十分な操縦安定性を備えていますが、欠点が2つあって、まず1つ目は乗り心地があまり良くないことです。このクルマはショックアブソーバーの縮み側の減衰力を強化することで操縦安定性を確保しているのですが、縮み側の減衰力に対してプラットフォームの剛性が足りず不整路面を走行する時には結構突き上げを感じます。またショックアブソーバーの伸び側の減衰力を乗り心地確保のために弱めているのですが、これが少し弱すぎるのか突き上げた後の揺れの収まりが悪くフワフワした揺れが続く傾向があります。欠点の2つ目はステアリング操作に対するフロントノーズの動きが鈍いことです。これは老若男女問わず誰が運転しても大丈夫なようにとの配慮もあるかとは思いますが、ちょっと鈍すぎですね。もう少し反応が早いほうが運転しやすいかなと思います。
GR SPORTの印象は「ゴツゴツした乗り心地の先代ポロ」といったところで、標準モデルの2つの欠点が見事に無くなり、運転が楽しめるクルマになっています。スプリングが強化されたこともあってショックアブソーバーの減衰力は伸び側も縮み側も強化されていて、フロア部分のスポット溶接打ち増しやバンパービームの追加でプラットフォームが強化されていてもゴツゴツ感は標準車よりもさらに増してしまっているのですが、フワつきや揺れは見事に無くなりました。また専用チューニングされたパワーステアリングによって応答性が増し、ステアリング操作に対してフロントノーズが素直にステアリングを操作した方向へ向くようになり、減衰力が強化されたサスペンションと相まって山道での走行が楽しめるようになっています。これらのことから標準モデルよりもスポーティ感が増しているのはもちろんのこと、運転していての安心感というかクルマへの信頼感も大幅に増しているように感じました。少し気になる乗り心地のゴツゴツ感ですが、例えていうならスバルWRX S4 GT-S並みといったところでしょうか。どうしても気になるならSPOON社のメンバースペーサーであるリジカラを装着するとこのゴツゴツ感は低減されるかもしれません。
総括
GR SPORTとして展開される前のアクアG'sには登場したばかりの時に試乗したことがあり、その頃のモデルは非常に足回りの硬いスパルタンなモデルで、横に同乗したセールスマンがその乗り心地に悲鳴をあげていたことを思い出します。その頃のモデルから度重なる改良がされた最新のGR SPORTは洗練さが増して乗り心地も良くなったと思います。
今回は長時間試乗する機会があったので色々なコースを走行しました。特に山道や大きなカーブを走行する時の楽しさが印象に残りました。
2,322,000円という車両本体価格はけっして安くはありませんが、気になる方は是非試乗してもらい標準モデルのアクアとの違いを感じていただければと思います。
このブログの撮影機材
カメラ Panasonic LUMIX G8
レンズ Panasonic LUMIX G X VARIO 12-35㎜/F2.8 ASPH. POWER O.I.S
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試乗 | クルマ
Posted at
2018/04/21 18:08:37