⇔

朝の通勤電車

乗り込んで吊り革につかまったら

隣の小柄な初老の男性が
ちょっと大きめの本に見入っていた

地図だ


電車経路図とか市街地図とかではなく
道路地図

電車の中でロードマップ見てる人も珍しいなぁ
とちょっと気にしていたら

その地図はどうも見慣れた色使い

ツーリングマップルだ！

ツーリング用にお勧めの道が紫色に塗られていて

見通しの良くないカーブが続く、とか
木々に囲まれ奥深い雰囲気、とか
コメント付きのやつ

この人ツーリングするような人なんだろうか？

めくっているページを見ると
どうも福島県あたり

紅葉でも見に行くのかなぁ

しばらくして小名浜のページを熱心に見ているなぁ
と思ったら

ポケットから赤のボールペンを出して
何か書き込み始めた

目的地が決まったのかな？
と思ったが

地名もなにもない
道に色もついていない
細い田舎道のような場所に
⇔を書き込んでいる

？？？

目的地かなにかなら○を書くような気がするけれど
両矢印ってことは区間を意味しているのだろう

長さからして５～６ｍｍ地図上で１ｋｍほど

そこに一体何が有るというのだろう？
地図から一体何を読みとってそこにマーキングしているのだろう？

小名浜のページの左下の方に４箇所ほど両矢印を書き込んだ
そこは茨城県の福島県寄りの場所

そこに何が有るんだろう？？？

またページをめくってはじっくり眺めるが小名浜のページ以外には
矢印を書き込むことはなかった

私が降りる直前
いわきのページを開いて
老人はまたペンを取り出した

いわきにも何か有るのか？
と見ていると

”むつみサーキット”の文字を赤ペンで囲んだ

○ではなく雲みたいな形に・・・

あぁこの老人は一体何者なんだろう？
むつみサーキットで何をするつもりなんだぁ？？

謎が一層深まったところで降りる駅に付いてしまった



帰宅して同じ地図の同じページを広げてみるけど
両矢印を書き込む理由はさっぱりわからない