さて、早くも毎年恒例、秋の大遠征~東北編も4日目…中盤に入ってきました。
4日目は今回の遠征のメインディッシュでもある日本百名山の鳥海山登頂が目的です。
10月上旬頃より体調を崩していたところに同月23日に初のコロナ陽性となってしまい、
この週末には体力の限界に挑む東北遠征が待っているのに…と途方に暮れてましたが
自宅待機5日間で何とか解熱もし万全では無いものの症状も半分以上治まった状況。
初日は移動だけだし翌日も本格的な登山もなくひたすら温泉巡りだけだったのも幸いにして
3日目の登山ではかなり体調も回復したかに見えましたがその夜体調悪化し嘔吐…
ということで、4日目の予定は体調との相談を常にしながら、ということになったんですが、
今回の遠征で一番ハードなのが見込まれたのが4日目の予定なのでした(爆
車での移動こそ100キロ弱ですが、登山計画がかなりハードでギリギリな線だったので、
遭難や事故にならない為にも何かあればすぐに撤退、と胸に決めてから出発しました。
何故ハードな上にギリギリなのかと言うと…
まずその1、登山口へのアクセス道となる鳥海山ブルーラインは晩秋になると通行規制で
朝8時から夕方5時までしか通行出来ず、麓のゲートが完全シャットアウトされてしまうので
朝8時過ぎてからしか登山口へ行けず、登山開始が朝9時近くと大幅に遅くなってしまいます。
そして、ゲート閉門時間が17時なので、どれだけ遅くても16時半までには下山していないと
そこからゲートまで間に合わず、ゲートが閉まると登山口で車中泊するハメになってしまいます。
因みにこちらはグーグルマップで見た鳥海山ブルーライン秋田県側のゲートになります。
そしてこちらは山形県側の鳥海山ブルーラインのゲートになります。
因みに関係者の話では、山に誰が残っていようが時間通りに必ず閉門しちゃうそうです(大汗
その2、日本百名山である鳥海山は本来であれば1泊2日で登る山であること。
登山アプリには標準的な山行時間を元に登山計画が出来るようになっているんですが、
それによれば、今回のコースだと往復約15キロで9時間半、累計標高差1500mです(爆
これ、ちょうど富士山の一般的な登山と全く同じ距離、時間、標高差となるんですよね。
なので、それなら普段から日帰りしてるから自分の場合はまぁ大丈夫だな、と思ったワケです。
しかし…今回は条件がいくつもあるのでちょっと話が変わってきます。
朝9時に出発したら一切休憩も取らずに登って下りて18時以降の下山になってしまいます。
ということは、休憩をすればその分遅くなるし、そもそも16時半が日没時間となっているので
17時を過ぎたら真っ暗です。前述のように17時に麓のゲートが閉門してしまうので、
16時までには登山を終えて、16時半までには駐車場を出ないと帰れなくなるのです(大汗
ということは、物凄く速く山へ登るか、一切休憩を取らずノンストップで小走りするしかない(汗
そして、3つ目の難題。実は一番恐れていたのがこれなのですが…それは、積雪期である点。
そう、いくら残暑が長いだの猛暑だの言えど、そこは東北です。もう11月に入る時期です。
雪が積もってないワケがないですよね、ええ。本来ならもう大雪があっても不思議でない地域。
鳥海山は東北地方の中でも福島県の燧ヶ岳に次いで2番目に標高の高い山。
というか、鳥海山より北にこれより高い場所が存在していません(笑
それでも今回登れるのは残暑が長くて積雪が平年と比べてはるかに少なかったから。
で、事前の情報から…山頂付近で最大50センチを想定していました。
50センチ程度ならアイゼンとスノーシュー不要、チェーンスパイクは必須、ピッケルは???
ってな具合で、気温としても最低マイナス5~6℃ということだったので特別防寒は不要と判断。
とは言え、ダウンとか一式はビバークする想定で持参しますけどね。果たしてどうなることやら?
というワケで、まずは前日…秋田県かほく市にある道の駅、象潟ねむの丘で車中泊。
もう車中泊というか、直前に嘔吐したり色々あって倒れ込むように寝入ったので写真もあらず。
翌朝、ゲートが8時以降にしか開かないので体力温存の為に少しでも多く寝るべく寝てました。
ここからゲートまでは20分足らずだったので7時半過ぎてから出れば十分だな、と。
で、実際目覚めたのが7時半近かったです…慌てて車内で登山ウェア一式着替えました(汗
そしてゲートが開いた頃を狙って鳥海山ブルーラインを象潟口、鉾立登山口へ向けて走ります。
どうでもいいけど、この「象潟」って「きさかた」って絶対読めないですよね…(汗
前日は雲が多くて天気が心配でしたが…お~、その名の通りブルーラインです!
日本海側、秋田市~男鹿半島方面はギリギリ雲に覆われてこの時点では見渡せず…
8時半ちょうど、鉾立登山口手前の駐車場に到着。平日のせいか駐車場は閑散…
慌てて残りの準備をして荷物をチェックして、時間も無いのでさっさと出発します。
さすがにこれから登ろうとしてる人は殆どいませんでしたが、数名いたので声掛けすると
この駐車場の脇にある小屋で宿泊してる方や、鳥海湖まで散策する人ばかりでした(汗
それでは、参ります。登山口はこちら。山頂付近はガスってて何も見えず…
登山口の案内板にある赤線は今回の登山計画と全く同じでした(笑
因みに、既に積雪もあり冬季に入っているので小屋やトイレ等は全て閉鎖されています。
初っ端はとてもしっかり整備されている登山道を登っていき…振り返るとこんなです。
駐車は今回、ひょっとして山から見えるかも!?と一縷の望みをかけてド真ん中に(笑
奥に見える無数の風車は仁賀保高原ですかね。その東側は冬師湿原のようですね。
因みに写真手前に映る青い屋根は登山口からすぐのところにある東雲荘という小屋。
うーん…天気大丈夫かしらん(汗
少し登っていくと広大な展望台に着きました。観光客の多くはここまで散策するのかな。
望遠鏡まで設置されてます。天気が良かったらめちゃくちゃ絶景が拝めそうです。
山頂の方角はというと…うーん、部分的に青空は見えるんですが怪しいですねぇ。
右手に見えてる絶壁の尾根をここからしばらく歩いていきます。
そしてその絶壁をよく見ると…滝が見えてました。どうやらこれが白糸の滝らしいです。
三段になってて見事ですね。さすがに秋なので水量はかなり少なくなってはいるものの…
いや~、良い景色。気温は風がそこそこあるので冷たいですが3~4℃はありそうです。
山頂方面がガスっててイマイチなので何度も振り返って日本海を眺めちゃいます。
すると…左手にゴツそうな山が見えてきました。標高1554mの稲倉山だそうです。
これから向かう先、鳥海湖から行けるそうですが蟻の塔渡や鳥海ジャンダルムと呼ばれる
怖い登山道があるらしく…しかし山自体はなだらかに見えますよね。
鳥海山はとにかく歩くよ、長いよ、って言われてましたが…ほんと、長そうです(汗
ちょっと開けた場所へ来ました。賽の河原ですね。こうした地形だとこう呼ばれがち(笑
右手に見える丘は…以前までは登山道があって鳥海湖へ抜けられたらしいです。
この岩の具合と草紅葉がまるで鈴鹿山脈にある霊仙山みたいでかっこいいですね。
気がついたら足元には残雪が…え?まだ3分の1くらいしか登ってきてないのに??
さらに登っていくと…だんだん麓の方もガスって見渡せなくなってきました…大丈夫かしらん。
うーん…日本海側だし、仕方がないよね。
愛宕坂なるところを登って行くと…鳥居と小屋らしきものが見えてきました。
鳥ノ海御浜神社と御浜小屋のようです。ということは…鳥海湖はこの先にあるのかな?
登り切ると…見えました、鳥海湖!まずはこれが見たかったのよね。美しい火山湖。
時間があれば湖の畔まで散策したかったけど…当然ながらそんな余裕はあるハズなく(汗
因みにこちらはミラーレスで撮影した写真です。
少し休憩をした後、先へ進みます。この時、小屋近くで休んでる人が数名いましたが、
みなさん鳥海湖を見に来ただけでした。自分が山頂へ行くと行ったら驚かれました(汗
そして鳥海湖を横目に歩いていくと、先程の稲倉山がもうこんなに小さく見えてました。
山頂までまだ4キロ近くあります…いや、なかなか遠いけど涼しいので頑張れてます(笑
鳥海湖方面を振り返ると…もうガスって微かにしか見えなくなってました…うーん(汗
せっかく登ったのに再び下っていきます…降った先は御苗代と呼ぶところみたいですね。
で、このピークは扇子森という名前がついてます。山頂まではいくつも山を超えねばなりません。
先の方はガスっていて何も見えませんが、本来なら山頂付近がドォーン!…らしいです(汗
このあたりからいよいよ積雪が本格的になってきました。避ける事も出来ません…(汗
深さはまだ20~30センチといったところ。まだトレランシューズのみで歩けました(笑
そう、自分はもう厳冬期以外はトレランシューズです。いわゆる登山靴は履かない人。
後ろを振り返ると…先程いた扇子森のピークが。鳥海湖の方も完全にガスってますね(涙
御田ヶ原分岐まで緩やかに来ました。ここは地図上では御田ヶ原のピークとなってます。
なんか全然天気が読めないですね…こう雲が多いと。
めげずに登って行きます。八丁坂と聞くとキツそうですが…ゆるやかな登り坂です。
先に見えてるのは…鳥海山の外輪山ですかね?鳥海山ってなにげに複雑な山容です。
ガスったり晴れたり目まぐるしく光景が移り変わるのでGPSが無いとまるでわかりません(爆
とりあえず方角は合ってますね、方向音痴に優しい標柱です(笑
んん~??
お、ようやく次なるポイント、七五三掛まで来ました。これで「しめかけ」なんて読むんですね。
ここでおおよそ3分の2の地点となります。そして、ここから少し行くと大きな分岐点です。
往路は計画通り千蛇谷を下って山頂へ直接アタックに向かい、帰路は外輪山の山稜を歩いて
再びここへ戻ってくる周回ルートを取ることにしてましたが、予定通りに行くべきか、それとも
谷底へは下りずに外輪山をグルっと回って山頂へピストンするか休憩しながら悩みました。
左へ行けば千蛇谷、右へ行けば外輪山。今思えば外輪山から登ってピストンすべきでした。
でも、往路と帰路で違うルートの方が新鮮だしなーって欲張ったのがダメでしたね、ええ(汗
この時点ではそんなに雪深いとは思ってもみませんでしたしね。
というワケで、ベンチもあるので計画と地図を再確認しつつ、チェーンスパイクを装着します。
時折ガスが消えて山頂付近がチラっと見えたんですが、3~40センチの積雪と聞いてたし、
実際見た感じもその程度で、ズボっと踏み抜いても膝あたりまでかな?と軽く見てました。
そしていよいよ恐怖の千蛇谷へ崖を慎重に下りていきます。既にかなり恐怖してます…(汗
一瞬凄く晴れて山頂付近がしっかり見えましたが、ルートがあまりわかってませんでした。
というのも、数日前からの積雪で完全に登山道からトレース(足跡)も目印も消えてました(怖
写真だとあまり恐怖感は伝わらないですが…谷底まで100mはあるんですよね…(爆
一歩間違えば確実に死んでしまう。そして登山者が誰もいないので助けてもらえない。
GPSでマメに確認しつつ、ルートファインディングしていきます。
半分ほど下りてきて先程までいたところを振り返ります。既に何度も深雪で踏み抜いてます。
雪の下に何があるのか全くわからないので踏み抜く度にドキドキして心臓に悪いです…
谷底を渡って反対側へ来ました。ここからが地獄でした。登頂までずっと神経衰弱です(涙
写真だと分かりづらいですが…既に4~50センチの積雪があり、雪も踏み固まってないので
一歩一歩慎重に足に体重をかけたりストックで雪を探りながら進むのでやたら時間を要します。
雪が無ければきっと何てことはないこの千蛇谷…これだけ雪があると別次元です、ええ。
そもそも何センチ積雪してるのかもわからないので踏み抜きの恐怖が延々と続きます。
雪から岩が出てるところはとにかく岩の上に足を置くようにしてますが…それも厳しくて、
岩の無い箇所は雪上を歩くしかないんですが…荷重を掛けすぎると膝上まで踏み抜きます。
暫く行くと雪の少ない場所へ出ました。頂上へと誘う標識があってホッとします。
とりあえずここまでは何とかルートは外れてないようで安心…しかし山頂はまだまだ先。
ガスの切れ目から山頂らしき岩稜が目に入ってきましたが…後に山頂でないことを知ります(汗
そしてすぐにガスってホワイトアウトします。何とかルートは外れず標識も発見しました。
しかし、この辺りからさらに雪深くなって何十回と踏み抜きまくりで体力を消耗していきます。
一度踏み抜くと脱出するのも大変。たった10m進むのにどれだけ時間かかってるんだ?と(汗
そして、雪の無い箇所が目に入ったら多少ルートを外れてもそちらへ進んでしまいます…
この時点で時間も相当ロスしていたので撤退すべきか否か…脳裏を過ぎってました。
「頂上へ」の標柱がほとんど埋もれてる姿で雪深さがわかりますよね、ええ(怖
まだまだ緊張は続きます。千蛇谷を登っていった先は…山頂直下のトラバースです。
積雪は4~50センチ、ルートは不確か。1度でも滑ったら谷底へ落ちて助からない状況…
谷底も怖いけどもっと怖かったのが…クラックです。気温が上がれば確実に雪崩になります。
というか、ここで踏み抜いたり振動が伝われば雪崩が発生しそう…足の震えが止まりません。
何とか無事に危険箇所のトラバースに成功。通過してからも全く生きた心地してません…(涙
なにせ命がけなので、100mのバンジーなんか目じゃないくらいの恐怖感でした。
もはやこのルートを引き返すことは不可能…ということは撤退も出来なくなったワケです(爆
そしてようやく山頂手前の大物忌神社、山小屋の御室参籠所が見えてきました…!!
とは言え、この時点で時間は12:45。当初の予定では神社へは正午到着を想定していました。
そして山頂アタックして12時半登頂、13時までに下山開始すれば予定通り戻れる算段でした。
前述したように、16時までに登山口に戻らないとゲートが閉まって麓へ帰れなくなるからです。
下山は比較的緩やかで距離が長いだけなのである程度時間は巻けるとも考えてました。
しかし、実際にはもう下山開始予定時刻まで残り15分…今からここから山頂を目指すことが
果たして正解だろうか…山頂を諦めてこのまま外輪山へ向かうべきか…瞬間的に悩みました。
ここまで恐怖しながら来たのに直前で撤退するのはあまりにも残念すぎる!という気持ちと、
だからと言って無謀にアタックして間に合わず遭難したら残念どころではない!という気持ちと、
色々交錯しましたが…最悪麓へ戻れなくても登山口で車中泊すりゃいいんじゃね?…と、
最終的には軽い気持ちが勝ってしまいました…なので、山頂へアタックすることにしました(爆
といったところで…長くなってしまったので登頂とその後の下山については次回へと…つづく!