やっぱり、バトンってチャンピオンになるだけのドライバーだったんだなあと、つくづく感じたレースだった。
フライアウェイ4戦の最後となる中国GPは、ディフェンディングチャンピオンのバトンが、磐石の走りで今季2勝目を挙げ、ハミルトンも2位に入り、実に2年半ぶりのマクラーレンの1-2フィニッシュとなった。
スタート直前になって雨が強くなり、3周目までにほとんどのクルマがインターミディエイトに交換する慌しい状況中で、ドライのままで走り続けた数少ないドライバーの中の一人がバトンだった。
ドライタイヤのままインターミディエイト組と同等以上の速さを発揮し続け、結局、雨が小降りになりタイヤ交換組が余分なピットを強いられる中で、気が付けば2位走行。
そのまま、ペースをどんどん上げて行き、先を行くニコのミスに乗じて難なくトップに立った時点で、バトンの勝利は決まったようなものだった。
後は適切なタイミングで、適切なタイヤチョイスを行えば良いだけである。
ケチのつけようが無い、ほぼ完璧なレースマネージメントで上海を制したバトンは、冒頭に記したように、やはりチャンピオンに相応しいドライバーだったのだなあと改めて感じた次第である。
てゆうか、ハミルトンに勝てるわけないとか当然のように考えててごめんなさい。
今のところ、ハミルトンよりも、ずっと内容の良いレースを続けてるし、もしかして本当にハミルトンよりランキング上でシーズンを終えてしまうかもしれないなあ。
流石に二年連続タイトル獲得は無いと思うが。
以下、その他雑感。
その1
上昇気流に乗るマクラーレン
今回の1-2フィニッシュ(ハミルトンがちょっとオイタをしちゃったので暫定だけど)にも顕れているように、マクラーレンのパフォーマンスは確実に向上している。
予選で少し躓いてしまった(バトン5位、ハミルトン6位)が、決勝で見せた速さはホンモノである。
特に、件のFダクトの威力は覿面で、最早チートレベルである。
RBRがハイダウンフォースに振っていた事を差し引いても、RBRとは比較にならないストレートスピードを発揮して見せた。
ヨーロッパラウンドに入った後は、今まで以上に開発スピードも上がるだろうし、もしかすると現在までの戦力図をひっくり返してしまうかもしれないな。
その2
働き者ニコ
今回、序盤をドライタイヤで走り続けたドライバーのうちの一人がニコだった。
雨に濡れた難しい路面コンディションでも、インターミディエイトタイヤを履いたドライバーたちよりも速いタイムを刻み続ける姿は格好良かった。
肝心なところでオーバーシュートしちゃって、バトンにオーバーテイクされる隙を作っちゃったのは珠に瑕だが、それはそれ。
RBR、フェラーリ、マクラーレンの速さに僅かに劣るクルマでも、一人気を吐いて、二戦連続となるポディウムをゲットしたのは、素直に素晴らしい事だと思う。
W01に、もう少し速さがあれば優勝も狙えるのだが、前向きに今ある道具で最良のリザルトを持ち帰ってくるニコの仕事っぷりに、チームを引っ張るエースのあるべき姿を見た思いだ。
え、しゅーまっは?
彼の事はそっとしておいてあげてください。
その3
RBR完敗。
マレーシアでの1-2フィニッシュで、漸く悪い流れを断ち切れたかに思えたRBR。
予選では、ヴェッテルがPPを獲得し、開幕から4戦連続でRBRがPP獲得。
おまけにウェバーも2位に入って2戦連続フロントロー独占。
たとえ決勝で雨が降っても、昨年の圧倒的スピードからすれば、今年も勝利は確実。
完璧じゃないか、我がRBRは!
と思っていたのに、今年は雨に見事に翻弄されてしまった。
そもそも、スタートで珍しくヴェッテルが出遅れて、ウェバーに先行されたのがケチの付き始め。
3周目にインターミディエイトに交換したと思ったら、僅かな時間で雨は小康状態になり、ドライに換える為に再度ピットイン。
気が付いたら、フロントローからスタートした二人は、入賞圏内ギリギリのところをうろうろしている有様。
駄目押しで、再び雨が強くなってもう一回インターの履き替えたあとは、最初こそペースが良かったものの、結局タイヤが持たずに終盤はペースを維持するどころか、ずるずるとペースを落としていく始末。
終わってみればヴェッテル6位、ウェバー8位と言う惨憺たるリザルトに。
フロントローからスタートしたはずなのに、どうしてこうなった…。
RB6はRB5よりもタイヤに厳しくなさそうで良い感じだなあと思っていたのだが、単なる思い違いだったようだ。
ちゃんとタイヤマネジメント出来るヴェッテルでさえ、終盤はペースを全く維持できなくなるほどまでにタイヤを痛めてしまうとは全くの予想外。
一発の速さは、依然他の追随を許さないが、タイヤへの入力の問題がこの先アキレス腱になるかもしれない。
ああ、信頼性の問題に続いてタイヤまで。
圧倒的じゃないか、我がRBRは!(問題山積的な意味で)
その4
足場を固めるルノー
はっきり言って飛びぬけた速さはないけれど、確実にトップ4に喰らい付き続けているルノー。
今回も、クビサがアロンソに続く5位フィニッシュを飾り、さらにはペトロフも7位フィニッシュで初ポイントをゲット。
この2人も、序盤をドライで走りきったドライバーだった。
クビサの5位は流石と言うか、ある程度予想された結果だけど、ペトロフの7位は予想以上の結果であり、お見事と言うほかない。
正直なところ、今回もペトロフのドライビングは不安定で、度々コースオフしていた。
しかし、今回は、ミスした分を挽回するような速さを随所で見せ、シューマッハを一発でオーバーテイクしたり、タイヤが死んでペースを上がらなくなったウェバーの隙を見逃さずに料理するなど、確実に成長している様子を見せてくれた。
これで、限界を超えて(限界を掴み切れずにと言ったほうが正確かも)コースオフしちゃうクセが治れば、ちゃんとチームに貢献できるようになるかもしれない。
少なくとも、今回はその可能性を見せてくれたし、今後も期待して良い気がする。
その5
ザウバーの憂鬱は続く。
開幕以来、低調なレースが続くザウバー。
今回も苦しさは変わらず、カムイが頑張って15番グリッドを獲得するのが精一杯。
デ・ラ・ロサは絶不調で予選17位がやっとの状況。
展望は明るくないけれど、決勝では何かチャンスがあると良いなあと願っていたのだが、カムイは1周目に姿勢を乱したリウッツィ巻き込まれてリタイヤ(因みにブエミも一緒に被害を被った)。
デ・ラ・ロサは、序盤の混乱に乗じて一時4位を走行していたのに、またも跳ね馬謹製のエンジンが音を上げてリタイヤと言う最悪の結末になってしまった。
それなりに経験と実績のあるチームだったはずなのに、気が付けば完走率では新規参戦の3チーム並みかそれ以下という有様に涙を禁じえない。
なんと言うか、あまりの惨状にフォローする言葉すら思い浮かばない。
ヨーロッパラウンドに入ったら、少しは事態が良くなったりしたりしないかなあ…。
その6
今週の新規参入チームのみなさん。
ロータスはコヴァライネンが14位で完走して、チームとしては4戦連続で完走を果たした。
雨の混乱に助けられた結果だが、一時は入賞圏内を走っていて、たくさんTVにも映ったし(ただし、オーバーテイクされるシーンしか写らなかったが)、上々の結果じゃないかな。
HRTは、2戦連続で二人そろって完走を果たした。
ラップタイムも既存チームから2秒落ちくらいまで縮まってきたし、なんとかやれて入るようだ。
ただし、自分達の参戦プランの不備を棚に挙げてダラーラを批判している状況はいただけない。
山本左近がフライデードライバーになったみたいなので、彼のツテで入ってくるお金で、もう少しクルマがマシになるといいのだが。
ヴァージンは、予選でロータスに競り勝つくらいになったのは良いが、肝心の決勝で二台揃ってスタートすら出来ずリタイヤするとかどうなっているの。
HRTは亀の歩みとは言え、着実にレースマイレージを稼ぎ始めたと言うのに、ニック・ワースはもっとしっかりしろ。
次回からヨーロッパに戻るので、3チームとも多少なりともアップデートを入れてくるはず。
どれだけ競争力が上がるか、良い意味で楽しみである。
その他、アロンソのフライングとか、昔は鬼のように速かった某セブンタイムス・チャンピオン氏については触れません。
次回はスペインGP。
いよいよヨーロッパラウンドの始まりである。
例年だと、各チーム、大幅なアップデートを持ち込んで、いろいろと愉快なことになるパターンが多かったのだが、今年はアイスランドの噴火の所為で、飛行機が飛ばなくて(即ちファクトリーにクルマを戻せない)てんやわんやらしい。
なんとかなると思うが、チーム関係者のみなさんは徹夜が続く事になるかもしれない。
なにはともあれ、無事に飛行機が飛ぶ事を祈って終筆。