いいタイミングで
BGPがダイムラーに買収されちゃったので、ここらで今年のF1を総括してみる。
例によって総括と言う名の個人的な妄言垂れ流しなので、うっかりここに来ちゃった人は、ブラウザの左上のほうにあるボタンをクリックすると貴重な時間が無駄にならなくて実にステキな感じじゃないかしら。
今年の主なトピックス
・KERS導入等、大規模なメカニカルレギュレーションの変更。
・BGP、トヨタ、ウィルアムズのダブルデッカーディフューザー問題。最終的に合法の結論。
・消滅寸前の窮地から出発したブラウンGP、軌跡の快進撃。
・マクラーレンのライゲート。デイブ・ライアンがチームを追われる。
・マレーシアGP、スコールのため91年以来の赤旗終了によるハーフポイントレースに。
・レッドブル、ヴェッテルの手により中国GPでチーム初優勝を飾る。
・バジェットキャップを巡るFIAとFOTAの対立激化。分裂騒動に発展。
・マーク・ウェバー、ドイツGPでF1初優勝。
・10年からの新規参入チーム、USF1、カンポス、マノーに決定。
・FSW、F1開催から撤退。
・フェリペ・マッサ、ハンガリーGPで前走車から落下したパーツが頭部を直撃しクラッシュ。以降のGPを欠場。
・BMW、09シーズンを持ってF1から撤退。
・ミハエル・シューマッハ、マッサノ代役として現役復帰宣言。結局実現せずルカ・バドエルが代役に。
・鈴鹿サーキット、11年までの日本GP開催契約を締結。
・BMWの撤退により、マレーシアチームとしてロータスが10年よりF1参戦。
・ルノーのクラッシュゲート。ブリアトーレがFIA主催レースから永久追放、シモンズは5年間の立ち入り禁止の判決。
・ジャンカルロ・フィジケラ、フェラーリに電撃移籍。イタリアGPよりバドエルに代わり正ドライバーに。
・ジェンソン・バトン、自身初のワールドチャンピオンに。
・ブラウンGP、チーム創設初年度にコンストラクターチャンピオン獲得。
・FIA新会長にジャン・トッドが就任。
・アブダビGP初開催。
・ブリヂストン、10年を持ってタイヤ供給を終了しF1から撤退を表明。
・トヨタ、09年限りでF1撤退。
・ダイムラー、ブラウンGPの株式を75.1%取得。来期からメルセデスGPとしてF1参戦。
◎ワールドチャンピオン:ジェンソン・バトン
00年のデビュー以来、苦労を重ねてきた(一部、本人にも原因があるが)けれど、10年目にして漸く報われた。
後半の失速ぶりから、早くもだめチャンピオン呼ばわりされているが、序盤の圧倒的な強さと速さを無視したその意見に何の意味があろう。
BGP001が出色の出来だった事を差し引いても、序盤のバトンの速さは圧倒的であり、チームメイトを含む他のドライバー寄せ付けなかった事は特筆に価する。
とは言うものの、後半の失速ぶりが情けなかった事もまた事実。
正確なところは来期のパフォーマンスで判断したほうがいいかもしれない。
◎コンストラクターチャンピオン:Brawn Grand Prix Formula One Team
設立初年度にも拘わらず、見事にタイトルを奪ってみせた。
前身が史上類を見ないほど駄目ワークスだったとは思えないほどの活躍劇。
BGP001の速さを、ホンダの潤沢な予算のお陰だとか、SAFが遺した設計のお陰だとか言う見苦しい意見も散見されたが、何よりも評価すべきはクルマのコンセプトを纏め上げ、消滅寸前だったチームを奮い立たせたロス・ブラウンという人物の類稀な手腕であろう。
来期はメルセデスGPとなるが、引き続きブラウンがチームを率いるとの事なので、そのレース巧者ぶりは遺憾なく発揮されるだろう。
以下はごくごく個人的な評価である。
☆マン・オブ・ザ・イヤー:ロス・ブラウン
今年はこの人しか居ないだろう。
ホンダの撤退から見事にチームを救い、その辣腕でWタイトルを掻っ攫っていったインパクト。
さらには、たったの1ポンドで買いとった前身チームの株式を、ダイムラーに(たぶん)びっくりする金額で売った抜け目のなさも見事としか言いようがない。
そういう意味ではニック・フライもマン・オブ・ザ・イヤーかもしらん。
決して良い意味ではないが。
☆カー・オブ・ザ・イヤー:レッドブル RB5
チャンピオンマシンはBGP001であったが、今季最速の称号はRB5にこそ相応しい。
エイドリアン・ニューウェイが描いたその姿は、正しく空力の権化。
リアデッキを徹底的にコンパクトにするために、わざわざプルロッドを採用するなど、空力思想は他チームの一歩先を行っていたと言っても過言ではない。
その証拠に、ダブルデッカーディフューザーに比べて不利といわれたシングルディフューザーのまま中国GPで圧勝。
そのポテンシャルの高さ示した。
当初はタイヤに厳しいシャシー特性だったが、イギリスGPからエボリューションモデルを採用し弱点を解消。
モナコから搭載したダブルデッカーデフューザーとクルマのマッチングが進んだ後半は、まさに敵無しの速さを発揮した。
その爆速っぷりは、05年にマクラーレンMP4-20を見ているかのようであった。
MP4-20もニューウェイ先生がデザインした傑作マシン。
RB5の速さもむべなるかな。
でも、速さと同時に壊れやすさもMP4/20とダブったのは余計だったのだぜ…。
☆ルーキー・オブ・ザ・イヤー:小林可夢偉
もし、可夢偉がラスト2戦を走らなかったら、今年は該当者無しとするところだった。
ブエミが良くなってきたとは言え、積極的に推す理由は無かったし。
ともあれ、可夢偉のパフォーマンスは鮮烈であった。
今季はテストが極端に制限されたので、事実上ぶっつけ本番で走ったにも拘らず、あそこまで見事なパフォーマンスを発揮できるルーキーはそうは居ない。
いやあ、これは来年が楽しみだなあと思ってたところで、例のトヨタ撤退とかどんな悪夢だこのやろう!
せめてもの罪滅ぼしと言うわけではなかろうが、トヨタがシート獲得のためにバックアップしてくれてるみたいなので、それに望みをかけるしかない。
蜘蛛の糸よりも細い望みだけどな…。
☆テクノロジー・オブ・ザ・イヤー:ワンタッチどーん
ダブルデッカー(マルチ)ディフューザーやKERSとかは誰しもが挙げる技術なので、わざわざピックアップしても面白くない。
と言うわけで、今は亡きトヨタが中国GPで初めて使用した(そして最後の使用となった)ノーズ交換機、通称ワンタッチどーんを今季のテクノロジー・オブ・ザ・イヤーに推したい。
今まで人力でやっていたノーズの交換を、専用の交換機で超効率的に済ませたシーンは、今季屈指の名場面だったのではないか。
これは流行る! と思ったけれど、他のチームが使う事がなかったのが悲しい。
来期でも良いから流行ったりしないだろうか。
☆ベスト・オーバーテイク:アブダブGPでの小林可夢偉
アウトラップでタイヤも冷えて燃料も重かったバトンが相手とは言え、チャンピオン相手に迷いなく一発でオーバーテイクを決めたその度胸とスキルは特筆に価するものだった。
あのオーバーテイクで小林可夢偉の名は世界中に響き渡ったのではないか。
それくらい見事なオーバーテイクであった。
それなのに来期のシートが見つかっていない現実。
嗚呼。
☆ベスト・グランプリ:ベルギーGP
今季、フェラーリが唯一の勝利を挙げたレースであり、フォースインディアが初ポディウムを獲得したレースである。
このレースは最初から最後まで素晴らしかった。
ライコネンVSフィジコの息をつかせぬ攻防戦は、今思い出しても鳥肌が立つ。
勝ったのはライコネンだったが、フェラーリに比べ戦闘力の劣るクルマで最後まで喰らい付いたフィジコも、ある意味で勝者であった。
こう言うレースがあるから、F1はたまらないのだ。
☆ワースト・グランプリ:ヨーロッパGP
バリチェロが5年ぶりの勝利を飾ったレースだったけれど、展開としては退屈極まりない駄レースであった。
開催初年度のよりは僅かにマシとは言え、相変わらずオーバーテイク出来ないレイアウトは論外の一言。
あの無駄に広いコース幅は一体なんだったのか。
こう言うレースがあるから、F1はだめなのだ。
☆モスト・インパクト・トピック:ミハエル・シューマッハ現役復帰騒動
同じ日にBMWのF1撤退発表があったのに、それが一発で霞むほどのインパクトをもったニュースであった。
マッサの不運な事故がそもそもの事の発端だったのに、そのマッサの事故すら過去へと追いやられちゃったのは流石と言うかなんと言うか。
世界中を騒がせるだけ騒がせて、結局、実現する事のなかった現役復帰。
まさに大山鳴動して鼠一匹と言った出来事であったが、ミハエル・シューマッハというネームバリューの偉大さを再認識した一件であった。
そして、最終的に代役となったバドエルの筆舌に尽くし難いパフォーマンスもまた、ある意味でビッグニュースだったなあ。
☆ワースト・トピック:一連の撤退劇
BMW、トヨタが今季でF1を去り、BSも来期いっぱいでF1から去る。
この事実をして賢明なる某島国のマスメディアや識者なる人たちは、揃いも揃ってモータースポーツは時代にそぐわないだの、これからはエコだのと、実に見識高い意見を披露してくれたのであった。
残念ながら私には彼らの意見の根拠がさっぱり理解できなかったのだが、それはきっと私が無知蒙昧なる下賎の民だからなのだろう。
流石、一流大学を出たアタマの良い人たちの意見は一味も二味も違うぜ!
ついでだから、その素晴らしい出来のアタマを使って、モータースポーツの文化的側面から捉えた考察と今後の影響や、そもそもここ10年のワークス台頭時代が異常事態だった点を踏まえての考察をしていただけるとより完璧だと思う。
閑話休題。
ともあれ、大資本を持つ大メーカーが相次いで撤退の道を選んだ事実は重く受け止めねばならない。
ワークスばかりが参戦していた近年が異常だったとは言え、ワークスすらその身を維持できないほどに膨れ上がった参戦費用は、これから到来するであろうプライベーターの時代にも暗い影を落としかねない。
方法は問題があったが、モズレーが提唱したコスト削減は決して間違った意見ではなかったのだ。
一連の撤退劇を受け、ジャン・トッド新FIA会長はF1の将来をどう見ているのか。
F1が末永く繁栄してくれることを一ファンとしては祈ってはいるが、その方法は万人が納得するものではないかもしれない。
各チームの総括はまた今度。
と言うわけで、つづく。