
では次に米海軍のミサイル駆逐艦DDG-54”カーチス・ウイルバー”(満載排水量8900トン)をみていきましょう。
”カーチス・ウイルバー”はアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の4番艦で、イージスシステム艦特有のSPY-1Dレーダを搭載しています。

”カーチス・ウイルバー”の艦橋です。
8角形の板はイージスシステム艦のシンボル、AN/SPY-1Dフェイズドアレイレーダです。
ミサイル巡洋艦タイコンデロガ級のAN/SPY-1A、Bレーダは船体を既存の駆逐艦(スプルーアンス級)を利用して設置したため、かなり大掛かりになってしまいましたがアーレイバーク級は設計時よりSPY-1レーダの配置を考慮しているため比較的コンパクトにまとめています。
”カーチス・ウイルバー”のイージスシステムはベースライン4です。

こちらは”カーチス・ウイルバー”の備砲の127ミリ54口径単装砲Mk45です。
全自動の軽量無人砲で、射撃管制はAN/SPY-1Dレーダで行います。
従来の速射砲が対空射撃藻重視しているのに対し、Mk45は対地・対水上打撃力を重視しています。

127ミリ速射砲弾です。
薄肉の筒状のものが薬莢で、横に展示してある弾頭が砲より発射されます。
榴弾、対空弾、対水上弾、照明弾などさまざまな砲弾を発射することが出来ます。
甲板のあちこちに錆が見られますが、実際この艦はサビだらけです。
1994年の竣工なのでまだ15年程度しかたってませんが、このようなサビだらけは驚きです。
サビひとつなく、丁寧に整備されている海上自衛隊の護衛艦とは根本的に違うのでしょうか・・・
まさしく「使えればそれでいい」を絵に描いたような印象でした。

艦橋前側に設置してあるファランクスMk15 CIWSです。
目標の探知・射撃・火器管制・評価を自動で行う近接防衛システムで、防空網をかいくぐってきた航空機や対艦ミサイルを20ミリ機関砲(いわゆるバルカン砲)により撃破するものです。
ただしフライトⅡAと呼ばれる後期生産型では簡略化のためファランクスを搭載していないものもあります。

こちらは艦橋後方に設置されたファランクスです。
ファランクスはカメラを設置して不審船などの射撃も可能なブロック1Bが普及していますが、”カーチス・ウイルバー”は通常のMk15のままのようです。

ファランクスMk15の弾帯です。
砲弾がしっかり装填されています。
一般公開時であっても砲弾は搭載されているようですね。

こちらは右舷にあった25ミリ単装機関砲Mk38です。
ブッシュマスターで知られる大口径機関砲M242の艦載版で、対水上射撃を行います。

Mk38機関砲を横から。
MK38は米海軍の戦闘艦のほとんどに採用されていていますが、”カーチス・ウイルバー”にはこれが両舷に設置されています。
機関砲としてはこのほかに12.7ミリM2重機関銃が装備されています。

”カーチス・ウイルバーで使われている”機関砲弾です。
巨大な25ミリ(Mk38用)、やや小型の20ミリ(ファランクスMk15用)、小型の12.7ミリ(M2用)が並べられていますが、最も小さな12.7ミリでもM16ライフルの口径(5.56ミリ)の2倍以上の大口径です。

Mk45速射砲と艦橋の間に設置されたMk41 VLS(垂直発射機)です。
ここにスタンダードSM-2艦対空ミサイル、SM-3対弾道弾迎撃ミサイル、ASROC対潜ミサイル、トマホーク巡航ミサイルを装填できます。

チャフ投射装置Mk36です。
防空網をくぐりぬけてきた対艦ミサイルを欺瞞するためにアルミ製の箔等を空中に散布するものです。
海上自衛隊の護衛艦でも広く使われています。

”カーチス・ウイルバー”の上部構造物。
エントツとマストが確認できますが、”カーチス・ウイルバー”の主機はガスタービンエンジンを4基装備していて、105000馬力の出力を誇ります。
またファンネルには”カーチス・ウイルバー”ガ所属しているデスロン15のマークが記載されています。
デスロンとは駆逐艦戦隊のことで、ここから派遣されて任務部隊(第7艦隊)の戦力のひとつとなっています。

”カーチス・ウイルバー”の洋上給油機です。
洋上補給は作戦上かかせないもののひとつで、補給のための操艦技術や補給技術は大変高度なものが要求されるといわれています。
海上自衛隊がインド洋にて給油活動を行っており世界的に評価されているのも、世界的に見ても洋上補給が可能な大型の補給艦を持っている国が少ないことと海上自衛隊の洋上補給技術が高いことにほかなりません。

”カーチス・ウイルバー”のファンネル後方です。
パラボナアンテナが2基確認できますが、これはMk99射撃管制システムのひとつ、SPG-62レーダです。
SPG-62はスタンダード艦対空ミサイルの週末誘導用レーダで、1基につき4発のミサイルを誘導できるとされています。
艦橋前側に1基、ファンネル後方に2基で合計12発のミサイルを同時に誘導ができるとされているようです。

こちらは3連装短魚雷発射管Mk32 mod14です。
両舷に設置されていて、区気圧により324ミリの短魚雷を投射します。
もちろん対潜水艦用で、長距離の潜水艦に対してはMk41 VLSに装填されているASROCを使用します。

こちらは”カーチス・ウイルバー”の搭載艇RHIBです。
支援作業や海上阻止作戦などに使用されるもので15名程度が乗艇できるようです。

こちらはMk53ヌルカ・デコイシステムです。
これを空中に発射し、ローターを展開させて30分程度空中に滞空しながら妨害電波を出すシステムです。

こちらは4連装ハープーン発射機Mk12 mod1です。
艦対艦ミサイルとしてハープーンミサイルを発射するもので、射程は90キロ程度あるものとされています。
アーレイバーク級の後期生産型のフライトⅡA型では軽量化とコスト低減のためにハープーン発射機は搭載していません。

”カーチス・ウイルバー”の後部VLSです。
Mk41 VLSを使用していて、艦橋前側のVLSは32セル、後部には64セルが設置しています。
”カーチス・ウイルバー”は弾道弾迎撃(MD)対応艦なのでSM-3対弾道弾迎撃ミサイルも搭載が可能です。

”カーチス・ウイルバー”のヘリコプター甲板にあるヘリコプター管制室です。
VLSのある後部甲板から一段下がったところにヘリコプター甲板がありますが、ヘリコプター格納庫がないためにヘリコプターの搭載はしていません。
ただしヘリコプターからのデータリンクやヘリコプターへの給油能力はもっているようです。
管制室に貼られた飛行隊(?)のステッカーがなんともアメリカンです。

こちらは”カーチス・ウイルバー”の右舷の歩行路です。
大きく張り出していますが、内側はこのように中空で、ライトがぶらさがっています。
もちろんなかはサビだらけ・・・・整備してるんでしょうか?

”カーチス・ウイルバー”の防火服です。
戦闘艦ですので当然飛弾による火災は想定されています。
ハンマやアックス、面体などスタンダードなものです。
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