1984年にダイハツと中国の天津市微型汽車(現:天津一汽夏利汽車)との間で交わされた技術提携契約に基づき、1986年からG11型シャレードのノックダウン生産が開始されたのが、現在もロングセラーを続ける中華製シャレードの歴史の始まりでした。
シャレードは中国語で「夏利」(シャーリー)と名付けられ、その価格の安さ、丈夫さ、走りの良さから国民車として愛され、今や天津一汽豊田の一車種ではなく、「夏利」という一つのブランドとして確立された存在となっています。
そんな夏利の進化の歴史を簡単に纏めてみました。
・1990年10月14日
G100型シャレードのノックダウン生産開始
それまで生産されていたG11型シャレードに代わり、初期型ショートバンパーのヨーロッパ輸出仕様をベースとした、G100シャレードの1リッター5ドア車の生産が開始されました。

当初はエンブレム類の差異以外は、日本仕様の最廉価グレードCDに準じた12インチホイール、ビニール表皮のハイバックシートの仕様を生産。

後年、1リッターエンジンのソシアルという他の仕向け地には無い組み合わせの仕様が追加された際のマイナーチェンジで、天津独自のデザインのグリル、日本仕様では中期型の後期以降にGT-XX以外の全グレードに採用された北米仕様と共通のビッグバンパー、13インチホイール、布張りのヘッドレスト分割シートに改められます。

内装はヨーロッパ仕様がベースなのでダッシュボードの助手席側トレイ部分に時計を付ける為の穴があり、グレーの内装色以外にも北米仕様にのみ存在したブラウン系のカラーを設定。

この時代のモデルはオーナードライバーが一般的になる前でタクシー用途に大半が使われた為、北京オリンピックの際に執行された排ガス規制の強化が名目の強制廃車処理により、残存台数は少ないようです。
・1997年12月
最初のビッグマイナーチェンジ
徐々に国産化を進めた末に、ヘッドライト、コーナーライト、ボンネット、グリル、フェンダーなどが新造される天津独自のマイナーチェンジが行われるまでに至りました。

オーナードライバー向けにアルミホイール、カラードバンパーが標準装備の上級グレードを新設定。

オプションのアクセサリー付き車。

5ドアハッチバックはリアゲートとテールレンズも変更。

内装はブラウン内装の色味が明るい色に変更された他、オリジナルのシャレードの上級モデルと同じウレタン3本スポークステアリング、センターコンソールが装着され、上級グレードには木目パネルも採用。

従来の1リッター3気筒エンジンの上級版として、トヨタA型エンジンを基に、日中双方の技術協力によって 中国市場向けに新開発された1、4リッター4気筒8A-FEエンジンも設定。

当時の販売店の様子。
・2000年
夏利2000発売

旧態化したシャレードベースの夏利の後継モデルとして、当時最新型のヴィッツ、プラッツがベースの「夏利2000」の生産が開始されました。
ところが従来のシャレードベースのモデルも値下げし、廉価モデルとして併売が続けられました。
・2003年5月
2度目のビッグマイナーチェンジ
鳴り物入りで登場した新型の夏利2000は、結局シャレードベースの夏利の根強い人気には到底及ばず、プラッツ=「雅酷」→「威楽」、ヴィッツ=「威姿」として、あっさり独立した別車種になってしまいました(笑)
その抜けた穴を埋めるべく、従来のシャレードベースの夏利に156箇所に及ぶ近代化改修を加えた新型車の「駿雅」および「紳雅」が作られました。(従来の廉価モデルの夏利も「老夏利」に改称して併売が継続)

外装はエアロ形状の前後バンパー、マルチリフレクター化されたヘッドライト、クリアレンズ化されたサイドウィンカーなどで大幅に近代化。

ソシアルのトランクリッドも新造形の物になり、テールレンズもクリスタルタイプの物に変更。

内装も同じくノックダウン生産されていたL900ムーヴの部品を多数流用した新造形のダッシュボードとドアトリムに変更され、夏利で初めてパワーウィンドを標準装備。

1リッターエンジン車は従来のキャブレター式からインジェクション化。
オリジナルのシャレードの北米仕様にも1リッターのインジェクション仕様がありましたが、こちらはあくまでも天津の独自開発エンジンです。(これをベースとした1、1リッターエンジンも新開発)
2004年8月8日
3度目のビッグマイナーチェンジ
輸出を視野に入れた、「N3夏利」が夏利シリーズの最上級車種として発売されました。

「N3」は3つのN、national(国民的な)、new(新型の)、nice(良好)な車という意味です
N3夏利が発売された後も老夏利は暫く併売されていましたが2005年には廃止され、それに伴い駿雅、紳雅が「夏利Aシリーズ」として廉価モデルの座に収まる事になりました。

N3夏利はユーロNCAP衝突安全基準に対応の衝突安全ボディとする為、フロント廻りが骨格から新造されて全長が伸びて若干大型化。

中国市場専売の5ドアハッチバックはテールレンズがユーロテール風に変更され、ナンバープレートの取り付け位置がリアゲートに移動しただけなので、まだシャレードの面影が残っています。

しかし、輸出機種のソシアルは衝突安全基準に合致させる為にリア廻りも新造され、特徴的だったホイールハウスのサーフィンラインのデザインも、履けるタイヤとホイールが制限されるので普通の形状に変更されてしまいました。

内装は駿雅、紳雅と同じものですが、衝突安基準合致の為のエアバックを装備。

最新トレンドのミラーウィンカー化。

N3夏利は、中東、アフリカなどに「ヴィータ・N3」として輸出されています。
・2008年マイナーチェンジ
外装はN3夏利、夏利Aシリーズのグリルとダッシュボードのデザインが小変更される程度でしたが、天津独自の新型1リッターツインカムエンジンが搭載されました。

N3夏利に搭載された新型のCA3G2型ツインカムエンジンは、従来までのシャレードのCB型由来のTJ376QE型エンジンのシリンダーヘッドをハイメカツインカム化し、エンジンの最大効率、最大回転力は従来型と比べてそれぞれ18%、16%以上向上、燃料消費率も3.5%以上低下している。(ダイハツのCB70ツインカムとは別物)
そして従来からのシングルカムエンジンも点火方式がダイレクトイグニッション化され近代化。

無理やり感漂うイグニッションコイルの取り付け方法が萌え要素(笑)
・2009年
N5夏利発売
N3夏利の上級車として、ノックダウンではなく天津が独自に開発した「N5夏利」がシリーズに加えられました。

こういう真面目に作られたマトモな小型セダンが日本にはカローラ位しか残ってないんで本当に魅力的に見えます。
・2010年
北京モーターショーコンセプトカー出品
完全新型のN5夏利が発売されたことで、流石にシャレードベースの夏利は年貢の収め時かと思われましたが、北京モーターショーにN3夏利がベースの「TFC-H2」というコンセプトカーを出展して、まだまだ作り続けるゾと強烈にアピール!
.・2012年
ビッグマイナーチェンジ(予定)
そして今年、コンセプトカーTFC-H2のテイストが注入され、N3夏利がビッグマイナーチェンジされる予定です。
こうやって、まだまだ作り続けてほしいところですが、よくよく考えてみれば1980年代の日本で日産オースチンや日野ルノー、いすゞヒルマンなんかが最新トレンドのフルホワイト仕様になって生産されているのと同じなわけで恐ろしい話ですね~