2020年11月24日
15年以上前の中古車は買ってはいけない
こんにちは、朝比奈です。
2か月前に買ったXV400ビラーゴ。
やっとまともに乗れるようになりました。
主に電装系のトラブルが購入後発覚。
幸い、Vmaxに長く付き合ってきた経験が生きて
それほど苦労せずには済みましたが。
これからはそれほど心配せずに乗れる車両になったと思います。
ちょっと過激なタイトルになってしまいました。
15年というのは、まああいまいな数値です。20年でもいいかな。
最近、いろいろな要因でふた昔ほど前の中古車に注目が集まっています。
車で言うと90年代のスポーツカー。
バイクだと80年代半ばから2000年頃まででしょうか。
今の車やバイクにはない魅力があるのでしょうか。
当時を懐かしむ層から、かなり若い子たちまで、様々。
その年代の車両を満喫してきた世代としてはうれしいことです。
ですが、手放しでは喜べないというかお勧めできないのも事実です。
よく、同僚や取引先の若い子、息子の友達など色々な人から
この辺りの年式のバイクや車の購入相談を受けることがあります。
でも、基本的にはやめておいた方がいいと答えています。
どうしても特定の車種に乗りたいんだ!という人は止めはしませんが
なんとなく昔のバイクや車がかっこいいなあとか
特に、安いから、という理由の人は強く止めています。
なぜか。
それは購入してからほぼ確実に苦労するからです。
元々の品質が悪い、そう言っているのではありません。
まあキャブレターの始動のコツとか暖気が必要とか走行性能が云々とかは苦労には入りません。慣れもありますし、それも味と捉えられます。
ですが、車両のトラブルは味では済ませられません。
度重なるトラブルはバイクや車自体が嫌になってしまう要因です。
せっかく乗りたい車やバイクを買ったのに
満足に乗れず、さらに出費も増えるんじゃ救われません。
具体的に、どのように苦労するのか。
例えに今回購入したXV400ビラーゴで。
90年代初めの年式、走行は25000キロ程
恐らく3~4人ほどのオーナーの手を経ています。
ちなみに今回の車両は苦労度としてはかなり軽い方です。
購入は大型中古車販売店チェーンです。
納車整備はまあまあ、バイクに詳しくない人ならあまり気にせず乗れる
メンテナンスに詳しい人は、ちょっと突っ込みどころがちらほら
そんな程度の販売店です。
販売店としてはこれでもまだましな方です。
納車時、一般的な消耗品は総取り換え、充電系統の配線の対策済み
あとは一般的な納車整備、点検済みの車両でした。
アイドリングも若干排ガス臭いですが規制前なのでこんなもんでしょうか。
吹け上がりも問題なし。異音も空冷としては許容範囲内。
ぱっと見はまあまあのコンディションでした。
さて実際に走ってみるとどうだったか。
まず、走り出してからしばらくは快調でした。
が、距離にして5キロほど走ると発進時になんだかぎくしゃくします。
明らかに失火しています。点火系統がおかしい症状です。
タペット音も明らかに大きすぎます。クリアランス調整不足ですね。
あとまっすぐ走っているとよくわかるのですが常に右にハンドルを微妙に向けていないとまっすぐには走りません。フォークの取り付けが微妙にずれているようです。
あとリザーブ切り替えスイッチ(燃料ポンプ付き)が効いていません。
サイドスタンド戻し忘れ機能も、始動時の飛び出し防止装置も死んでいますね。
ざっと走ってみただけでこれだけ出てきました。
でも、よく聞く「走る曲がる止まる」の条件は満たしていますね。
さて、自宅で本格的に点検、分解清掃してみます。
まず点火系統。イグニッションコイルの端子周辺はオイルと泥が混ざった汚れでべとべとです。綺麗に落として接点を磨きます。抵抗値を測ってみますが全く安定しません。恐らくどこかで軽く断線している模様。もう部品も出ないので純正相当品に交換です。充電系統、イグナイター、ピックアップ、リレー、ヒューズ他すべての端子は粉を噴いていたり焼けていたり。すべて外して磨きあげます。これで失火の症状はなくなりました。
失火していたということは燃焼室の内部も心配です。
案の定、リアバンク側がカーボンで真っ黒です。上手く燃えていなかったからでしょう。燃焼室のカーボンを強い薬剤で溶かします。アイドリングで排ガスが結構臭いますのでパイロットスクリューを調整しようとしますが固着しています。閉めることは何とかできますが開ける方に動きません。潤滑剤を吹きながらゆっくりゆっくり固着を解いていきます。ちなみに規定量は2と1/2戻しのはずですが大幅におかしくなっていました。また、キャブレターとエアクリーナーケースを繋ぐエアファンネルの片方のクランプがファンネルを噛みこんでいました。販売店がインシュレーターを交換したと言っていたのでその時の整備ミスですね。修正しておきます。そのクランプもボルトの向きが反対向きです。これはいずれキャブレターのインナーパーツ交換する時に戻してあげましょう。
バルブクリアランスも調整しないといけません。測定してみると基準値を若干超えていたり基準値上限ぎりぎりです。走行距離から推測すると新車時から一回も開けていない感じです。基準値に調整して音も静かになりました。
オイルとフィルターも交換しておきましょう。
ドレンボルトを外すとヤマハのガスケットが付いていました。が、いつ交換したんだろう。固着していて剥がれません。明らかに再利用していますね。こんなこともあろうかと新品を用意してあるので交換です。オイルフィルターを外しますが、カバーの固定ボルトのうち二本がなぜかステンボルトになっています。片方のボルトには4枚のワッシャーまで噛ませてあります。嫌な予感がします。予想通りメス側のネジ山を舐めています。だから長いステンのねじを入れてワッシャーで調整してたんですね。ここはクランクケースカバーを外さないとヘリサート加工が困難なので後回しにします。そうそう、オイルフィルターはスラッジで真っ黒、Oリングは硬化していましたので納車整備で交換していないですね。この調子じゃオイル交換もしていないのではと疑いたくなります。
安全装置関連も危険ですのでなんとか原因を探します。クラッチ、サイドスタンド、ニュートラルスイッチが関わってくるのでそのセンサーの導通を調べます。スイッチも分解して端子を綺麗にし動きも確認します。それでも解決しませんので、実際にエンジンをかけ電気が流れている状態で点検します。どこかで不規則にリレーの音がします。イグナイターやリレーのケースの辺りからです。見てみるとリレーの辺りでリークしているのが見えます。車体から離してみると音はしなくなりました。ここが悪さをしていたようです。しっかりと絶縁処理をしておきます。これで安全装置、そしてなぜかリザーブ切り替えスイッチも動くようになりました。
そういえばハンドルがまっすぐじゃない件もありました。
ハンドルストッパーに打痕はないのでフォークの取り付けがずれてるだけと予想します。クランプボルトをフリーにし、車体をまっすぐにしてフォークを何度も大きくストロークさせます。その状態でクランプボルトを締めなおして修正完了です。
ハンドルバーは品のないライザーバーが入っているので純正に交換します。ハンドルは良品中古、ハンドルポストはもう国内にはないので海外から取り寄せて交換します。バーエンドはなぜか接着剤で止めてありポロリと取れてしまったので注文です。同時に、恐らく以前のオーナーの誰かがプルバックハンドルに交換した名残、長すぎるブレーキホースやレバーなども元に戻します。ハーネスの取り回しも滅茶苦茶なので元に戻します。クラッチレバースイッチは爪が折れてグラグラでスイッチとしての機能が果たせなくなっていたので交換です。パッシングスイッチも動かないので分解清掃です。ついでにフロントブレーキキャリパー、マスターシリンダーも分解清掃します。シールの溝には結晶化したフルードがこびりついています。いずれ本体も腐食して使い物にならなくなるので今のうちに除去しておきます。この部分、整備する販売店は見たことがありません。見えない部分ですしタッチが悪くても、こんなもんです、で済ませちゃえますし、シールは結構高価ですから。もしやってあるとしたら良心的な店か、相当状態が悪く液漏れか完全固着していたからでしょうね。マスターシリンダーブーツは切れています。ここが切れていると雨が侵入してシリンダーが錆びます。ヤマハはブーツだけでは部品が出ないので他メーカーから部品を取り寄せます。レバーの取り付け部は硬化したグリスで動きが悪くなっています。洗浄後グリスを塗って組み付けます。クラッチレバー取り付け部にはOリングが入っているはずですが紛失したのか無くなっていました。これがないとクラッチレバーの動作にガタが生じてワイヤーにストレスがかかりほつれの原因になります。無駄な部品はひとつもないので、注文して取り付けます。アクセルの動きが悪いのでワイヤーの内部に注油します。クラッチワイヤーも注油します。ウインカーもステーが曲がっているので修正します。
リアブレーキスイッチの配線がなぜか取り回しが違っています。そしてタイラップでフレームに固定してあります。恐らく何かの理由で外して、元に戻す手間を惜しんだのでしょう。正規の取り回しに戻してあげます。サイドカバーがグラグラして歪んでついています。取り付け部のボルトがやはり変なワッシャーが噛ませてあります。ステーの根元が辺に錆びているので歪んでつかなくなったからでしょう。ステーを修正して錆止め塗装しておきます。同時に固定用ダンパーのゴムも朽ちてぼろぼろで固定できなくなっていたので交換します。シート固定用ボルトも片方が軽くネジ山がつぶれています。このまま使うと取り外しのたびにメス側のねじ山を痛めてしまうので交換しておきます。
と、一見、程度のよさそうでちょっと走った程度だと調子のよさそうな車体ですが、しっかり見てみるとこれだけトラブルが出てきます。
今回のバイクが特別問題だらけだったわけではありません。
大体の車体は同等か、もっとひどいことが多いです。
単純に年数が経って経年劣化と言うのもありますが、複数のオーナーの手を経て間違ったメンテナンスやカスタムをされることも多くなっています。また販売店によるずさんな整備や修理も。
今出回っている車体はほとんどがこんな状態なのです。
なので、自分はよほどの情熱があるか、整備や修理が大好きという人以外にはやめておいた方がいいとアドバイスするのです。
それでもやっぱり古めの中古車がいい、そんな人にアドバイスです。
車なら、人気車種は避ける。なぜなら間違ったカスタムや整備をオーナーがしている可能性がかなり高いからです。みんカラを見ていても頭を抱えたくなるような車がかわいそうになる整備やカスタムをよく見ると思います。そのほとんどが人気車種です。特に電装系はどこが悪いのか原因を特定するのにかなり苦労しますので要注意です。
自分が中古車で前車にプログレ、アルトラパンのNAモデルを選んだのはこれが理由でもあります。弄られる可能性がかなり低いから。
そしてコペンを新車で買ったのも同じ理由。人気車種故、変な手が入る可能性が非常に高いからです。
特に人気車種は特別な理由がなければ新車で買う一択です。
バイクはもっと趣味性が高いので難しいのですが、水冷空冷なら、空冷を。気筒数はできるだけ少ない物を、そしてできるだけノーマル状態の物を選ぶと苦労が少なく済みます。鉄、アルミ部品は年数が経っても大丈夫ですが、プラ、特にゴム部品はせいぜいもって15~20年です。それ以上経つと硬化したりぼろぼろになります。そしてバイクの部品、特に水冷はゴムの部品がとても多いです。水冷4気筒の80、90年代の中古車を買ったらほぼ全取り換えです。部品が出ればまだいいですが(それでもびっくりするくらい高価です。純正部品もどんどん値上がりします)メーカー欠品もかなり多いです。それでも人気車種なら専門店や部品屋さんが同等品を生産していることもありますが、不人気車種は絶望的です。修理すらできないことも多いです。本当に昔のバイクはお勧めできないです。
ただ、ここまで書いておいてなんですが
欠品部品を他メーカー純正部品から見つけたり創意工夫で何とかした時の楽しさも捨てがたい物ではあります。
なので頭ごなしに「中古車はやめておきなさい」とは言えないのが面白いところかもしれません。
おしまい
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2020/11/24 14:01:13
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