“From a decade, I wanna be with you for your love.”
今年、Z34のオーナーになって10周年を迎えました。十年一昔という言葉があるとおり、それだけ長い時間(とき)を一緒に駆け抜けてきたのかと思うと、なかなか感慨深いものです。
昔のことを思い出しながら、いつもより長く書き綴っていこうかなと思います。
1.Zに乗ろうと決意した日
遡ること、私がまだ幼稚園児だった頃。
父親がZ32に乗っていたこともあり、子供の頃からZが好きでした。まだ車の名前なんてわからない頃、父親のZだけは「ぜっと!」と呼んでいたそうです。
初期型のツインターボでTバールーフ、BBSのホイールを装着した銀色のZ32……うっすらと、いまでも覚えています。
母の話では、
「と~ちゃんゼット~♪と~ちゃんゼット~はやいよ~♪」という謎の歌を口ずさんでいたという、めちゃくちゃ恥ずかしいエピソードまであったりします。(※親戚にも裏を取りましたが、マジで歌ってたそうです。)
それから十数年が経ち、あっという間に高校生となりました。
まわりの友達が男性ファッション誌を読んでいるとなりで、私はオプション2を読んでいるという……三つ子の魂百までってホントだなぁ(;´∀`)
そんなある日のこと、元S13乗りで日産車が大好きな母から
「フェアレディZの新型、近くの日産に展示車が来たって!」と聞き、翌日の放課後、制服のまま自転車でディーラーまで向かいました。
そこにあったのは、黒いZ34型のフェアレディZ。店内に入り、勇気を出して
「Z、見せてもらえませんか…?」と店員さんに聞いてみると、
「もちろん!好きなだけ見ていってよ」と笑顔で答えてくれました。
初めて見たZ34は、なんというかグラマラスで、
“大人の女性”という印象でした。思春期の少年がお姉さんに恋心を抱くような、そんな気持ちになったのを今でも覚えています。
このとき、子供ながらに
「社会人になったらこのZに乗るんだ!」と決意し、カタログや諸元表をたくさんもらって家に帰りました。
さらに時は過ぎ……社会人2年目になった私は、悩んでいました。
酒もタバコも夜遊びも一切せず、子供の頃から憧れ続けた
「フェアレディZに乗る」という夢を叶えるために貯金し続けた結果、そこそこな金額が貯まりました。
とはいえ、社会人になると、良くも悪くも利口になります。せっかく貯めたこのお金、分不相応なスポーツカーに突っ込むより、もっと賢い使い方があるんじゃないかと。投資信託や個人年金だとか、ハイスペックな生活家電だとか、将来の結婚資金だとか……。
年収を超える金額を払って、スポーティーという名の
“生活を犠牲にするような車”を買うのは、どう考えたって馬鹿げている。「もう少しオトナになれヨ」…そんな言葉が、頭の中をかき回すのです。
でも、私の答えは
「理屈じゃ割り切れない、どうしても惹かれるものがある。だから、俺が選んだ選択肢こそ、俺にとっての最適解なんだ」でした。
子供の頃の夢を叶えるなんて、最高にカッコいいじゃないか。そう自分を鼓舞して、ついに私は動き出すのでした。
2.運命の出会い
希望するZ34を見つけるべく向かったのは、昔から父親がお世話になっている輸入車専門店でした。
フェアレディZを買うのに輸入車専門店?と思うかもしれませんが、これには理由があります。もちろん、父親と付き合いがあったからというのもありますが、それ以上に
「私にとっての主治医であり、私のカーライフをずっと支えてくれるお店で買いたい」という想いがあったからです。
このお店は、良い車を販売したら終わり……という考えではなく、メンテナンス、車検、カスタムなど、実際に乗ってからの付き合いがとても大切だと考えてくれているお店でした。
また、社長さんはとても気さくで真面目な方でしたし、メカニックの方も「大丈夫っすよ~!」が口癖な何でも直しちゃうスゴい方でした。なので、ここ以外で車を買おうという気は全く起きなかったんですよね(^_^;)
とはいえ、フェラーリやメルセデスといった輸入車を扱うお店に、国産スポーツカーを探してほしいとお願いするのは勇気がいりましたが……社長さんからの返事は
「いいですね!フェアレディZ、僕も好きですよ。良いZ34を探しますね!」という温かい言葉でした。
1~2ヶ月くらい待ったでしょうか。社長さんから電話があり、まだ1万キロしか走っていない、3年弱落ちのほぼ新車かつフルノーマルのZ34が見つかったとの連絡を受けました。
後日、現車確認ということで初対面。このZこそ、今の私のパートナーとなるZ34です。
諸々の手続きを済ませて、あとは納車を待つのみ。ここからの時間が、最も長く感じました。納車の2日前から全然寝られなくなり、前日はほぼ一睡もしていないという状態でした(笑)
こうして、Zが我が家にやってきました。
嫉妬するか、所有するか……。Z34の挑発的なキャッチコピーが、このときの自分には強烈に刺さりました。
いま、フェアレディZを所有している。このときの感動は、おそらく一生忘れることはないでしょう。
3.自分らしさの表現
Zが納車される1ヶ月ほど前、榛名山でとあるZ32乗りと出会いました。その方こそ、群馬オフの幹事を長らく勤めていた
ノリックさんであり、
「群馬オフというZの集まりをやっているから、ぜひ遊びに来てよ!」とお誘いを受けました。
そしてZが納車され、初めて参加した群馬オフで衝撃を受けました。フルノーマルの極上車から、原型がないレベルまでモデファイされた個体まで……。オーナーそれぞれの「色」が反映されたZたちと出会い、次第に私も
「自分の色で染めた、自分だけのZに乗りたい」という気持ちが大きくなっていきました。
ここで、また大きく悩むことになります。果たして、自分が目指すスタイルって何なのかと……。
エアロやバイナルでバチバチに仕上げるというのも、個性を出す方法のひとつです。しかし、なんとなく
「純正のこのシルエットがなくなるのはイヤだ」という自分がいて、何もできないまま1年が過ぎました。
ある日、家族と
タカラヅカ・スカイ・ステージのトーク番組を見ていたときのこと。
“ド派手な衣装とヅカメイクってすげーカッコイイけど、私服と普通なメイクのタカラジェンヌのほうが見ていてドキドキするな……そうか!俺がZに求めるスタイルはこれだ!!”
……と、輝夢に電流走る――!(ざわ・・・ざわ・・・)
そうして、ひとつの答えに辿り着きます。それが
「純正の延長線上」というテーマでした。
例えば、外装であれば、派手なエアロを組んだりワイドボディ化をしたりせず、純正のシルエットを残す。内装であれば、追加メーターをダッシュボードに何個も並べたりせず、落ち着いた雰囲気を維持する。
つまり、車に興味がない人に
「ちょっとだけイジった程度で、ほぼノーマルだよ」と言って信じてもらえる雰囲気に仕上げることが、私にとっての
「自分らしさ」だと悟りました。
そのテーマを表現した結果、シンプルなリップスポイラーとダウンサスを組わせ、ワイトレでツラを出しただけのシンプルな仕様に辿り着きました。
ちょっと物足りなさも感じるけど、このくらいが丁度良い。こうして、この仕様でなんと8年を過ごすことになるのでした。
4.辿り着いた自分自身の「答え」
Zのオーナーになって10年目のある日。
新居(※正確には
Zのための家付きガレージ)の工事に係る契約を結んでアパートに戻ると、妻が真面目な顔をして私に話しかけてきました。
「大きなことを成し遂げたお祝いに、何でも好きなものをプレゼントしてあげる。金額も気にしなくていい。だから、本当にほしいものをよく考えておいて」
こういうとき、たいていの人は腕時計や貴金属といったものが思い浮かぶと思うのです。ただ、私は骨の髄まで車好き……そんなことを言われたら、もう一つしかありませんでした。
怒られるかもしれないとドキドキしながら、妻に答えます。
「あのさ……Zにどうしても履かせたいホイールがあるんだ」
はぁ~~~~と超絶大きなため息をついて、
「馬鹿みたいにクルマが好きなのは知ってるけど、この状況でZのパーツがほしいとかバカなの?ねぇバカなの?」と呆れた顔をしながら言い放つ妻。
でも、その後で
「まあ、予想はしていたけどね。いいよ」と、ニヤッと笑うのでした。
次の休日、ホイールショップにふたりでお出かけ。前々から(何なら納車したときから)履かせたいと思っていた、
ADVAN Racing GTを買ってもらいました。金額は怖くて未だに聞いていません……。
(画像引用元:
YOKOHAMA ADVAN Racing GT Premium Version)
帰り道、妻に
「プレゼント、まさかZのパーツでOK出るとは思わなかったよ……」と話すと、妻は
「まぁ、普通はね。でも、ホイールなら目につく部分だから良いかなと思ったのよ」とのこと。
私がキョトンとしていると、妻が続けます。
「Zに乗るとき、絶対に視界に入る部分でしょう?そのたびに私のことを思い出すから、危ないことや無茶なことはやめようって思うじゃない。死なれたら困るのよ……だから、あれは犬の首輪ってトコね」
なるほど、そういうことだったのか。悔しいけど敵わないなぁ……なんて思いながら、ちょっと素直じゃない年上妻のカッコよさに惚れ直しました。
こうして、妻からプレゼントしてもらったホイールを履くべく、足回りをすべて見直していくことになります。
サスペンションはダウンサスからTEINの車高調に交換。加えてフロントアッパーアームをV36型スカイラインセダンの純正品に変えることで、車高を落としてもフェンダーに干渉しなくなりました。
スペーサーを使わない。フェンダーからはみ出さない。でもツライチは妥協しない。主治医の元に何度も通い、試行錯誤を繰り返しながら、ようやく納得のいく足回りに仕上がったときは嬉しかったです。
足回りのカスタマイズと並行して、外装もバージョンアップしていきます。くすんでしまったヘッドライトを交換し、サイドとリアにカーボンのパーツを加えてシルエットを引き締めました。
外装で目を引くのが、チタンテールマフラーの輝き。バージョンニスモ純正マフラーから、群馬県富岡市のマフラー屋さんである
ロッソモデロのスポーツマフラーに交換しました。
もちろん内装も一新。シートをRECAROのセミバケにした他、ハンドルをクイックリリース化して、NARDIのLEADERを装着しました。
じつは、内装のパーツ選びにはちょっとした拘りがあり、
私の親友(ER34乗り)がBRIDEのシートとMOMOのステアリングを装着しているので、私は逆にRECAROとNARDIを選んだというワケですw
そして、純正の3連メーターを撤去して、そこにDefiの水温計・油温計・油圧計をイントール。これは内装で最も拘ったポイントで、自慢のひとつでもあります。
こうして仕上がった、まさしく
「マイ・フェア・レディ」と呼べる私のフェアレディZ。
10年前に掲げた
「純正の延長線上」というテーマが、ついに完成した瞬間でもありました。
改めて思うのは、家族と仲間の支えがあったからこそZに乗ることができたし、今日まで乗り続けてこられたということ。
そんな私のZは、たくさんの人の想いと、私自身の夢が詰まった
『いちばんの宝物』です。
28年前と同じ場所で、今度は自分のZと一緒に記念撮影。すっかり大人になりましたが、中身は当時から何も変わっていませんね(笑)
私が大好きな曲のワンフレーズですが……
“もしも、例えばの話で
あの日 ここで会わなかったら
こんな今 考えもしないよね”
まさに、このとおりかなと。このZと巡り会えたことで、今の私があります。仕事を頑張れたのだって、たくさんの仲間に恵まれたのだって、Zが私の傍にいてくれたから……本当に運命の出会いでした。
初めて出会ったあの日から、この気持ちはずっと変わっていません。そんな大好きでたまらない貴婦人と、これからも末永く付き合っていきたいと思います。