WLTP Gear-Shifts Calculatorに関する第5回です。
※WLTP:
Worldwide harmonised
Light vehicles
Test
Procedureの頭文字。「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法」と訳される。
MT車でWLTPの試験をする際の変速位置の計算機“
WLTP Gear-Shifts Calculator”について、
第3回では資料を翻訳し、
第4回では“正規化した全負荷パワーカーブ”を掘り下げました。
第5回となる今回は必要なパワーP
requiredを取り上げ、最近は見かけることがまれになった走行性能曲線図を作成しようと思います。(単に作成するだけでオチとかまとめはないです)
必要なパワーP
requiredは次式で計算されます。詳細は第3回の資料の翻訳を読んでください。

使用する数値は計算機の
3.Usage - 3.4.Python usageに記載してある値を用います。
f
0=100 [N]
f
1=0.5 [N/(km/h)]
f
2=0.04 [N/(km/h)
2]
kr=1.1
TM=1500 [kg]
また加速度a
jは次式で定義されます。
P
requiredの式は項が2つあります。第1項がタイヤの転がり抵抗や空気抵抗などを合計した走行抵抗を表し、第2項が加速に必要なパワーを表していると考えられます。
第1項だけの数値=走行抵抗と、0.05、0.10、0.15Gの加速に必要な数値=走行抵抗+加速抵抗を計算してグラフ化します。
ところで。
計算してみて気づいたのですが、第1項の走行抵抗は速度200km/hのときにちょうど100kWになります。
f
0×200=20000
f
1×200
2=20000
f
2×200
3=320000
上記3つの合計=360000
3600で割ると100になる。
こうも切りの良い数値だと恣意的なものを感じます。また計算機はこれとは違う値をデフォルト値として持っていそうな気がしますが、気にせずこのまま続けます。
走行性能曲線図の縦軸はN(ニュートン)にします。使用する車両データの数値はやはり計算機の3.Usage - 3.4.Python usageに記載してある値を用います。エンジントルク[N・m]から各ギアでの駆動力の計算に少々難儀しましたがたぶん合っているでしょう。セーフティ・マージン=0.9を掛けています。一定速度の走行(第1項だけ)と0.05G、0.10G、0.15Gで加速する場合の、計4つの走行抵抗値を重ねます。一般的には勾配ですが、今回は加速度にします。
単なる好奇心で作成した走行性能曲線図ですが、1つ発見がありました。
1478秒から始まる超高速フェーズにおいて1533秒で6速から5速へシフトダウンしているのですが、これは直後に控える80km/hでの約0.1G加速でパワーが足りないからです。

走行性能曲線図を見ると6速の駆動力は0.1G加速の線を全域で下回っています。従ってシフトダウンせざるを得ません。
実際に6速でパワー不足になるのは1538秒からなのですが(次表参照)、第3回の翻訳で「4.変速位置に関する追加要件 (g)」に記した通り、高い速度域での加速で低いギア(5速)を2秒以上(この場面では5秒間)必要とするので直前の高いギア(6速)を低いギアに修正しています。(この追加要件てこ~ゆ~コトなのね。翻訳したけど実のところはあんまし分かっていなかった)
おまけ、他のグラフたち;
3.Usage - 3.4.Python usageでは「v_max = 195,」(最高速度195km/h)と入力するのですが、セーフティ・マージン無しの走行性能曲線図は6速の駆動力が190km/hを少し越えたところで一定速度の走行抵抗と交差しています。デタラメな数値を入力しているわけではないんですね。
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WLTP、WLTCモード | クルマ
Posted at
2016/11/07 22:16:28