
(いまさらだけど)マツダ技報によるとi-DM※はバネマスモデルの運動方程式を解いて白青を判定しているそうな。ならばバネマスモデルをシミュレートして様々な条件での動きを知ることはi-DMの理解、活用に役立つであろう。シミュレートは表計算ソフトで行ないグラフ化する。
※インテリジェント・ドライブ・マスター
運動方程式は下記である。
m・a + c・v + k・x = f(t)
x:質点の位置、初期値=0
v:質点の速度、初期値=0
a:質点の加速度、初期値=0
m:質点の質量=1
c:ダンパーの減衰係数=1
k:ばね定数=1
f(t):車両の加減速による入力
※念のため補足しますが、上記数値はシミュレートのための仮の値であってi-DMが実際に使用している数値ではありません。数値の具体はマツダ技報には記載がありません。
この運動方程式をどうやって表計算ソフトでシミュレートするのかという点は割愛して、シミュレート結果のサンプルを見てみる。
f(t)にステップ状の波形を入力した場合

入力を時刻:0において瞬時に0から1に変化させる。質点には質量があるので応答に遅れがある。時刻:2.42で質点の位置は1になる(静的安定位置に一致する)が、運動エネルギーによってオーバーシュートして時刻:3.63のときに最大値:1.163になる。以後ダンパーによって運動エネルギーが減衰して1に収束していく。
マツダ技報には「丁寧な運転」と「荒い運転」の判定の指標として「体の動きのオーバーシュート現象に着目した」とある。また「以下のように指標を定義し判別を行う」と続く。
指標値(定数) K
id=F(E
ov,ΔG)
E
ov:オーバーシュートが持つエネルギー
ΔG:オーバーシュートを引き起こした加速度変化幅
この指標値K
idを超える場合が「荒い運転」で下回る場合が「丁寧な運転」と定義するらしい。
マツダ技報を読んでいて、ここで私のアタマはフリーズしてしまう。判定を行なう際に指標値K
idと比較する値の計算式の詳細が書かれていないのである。K
id=F(E
ov,ΔG)がそれなんじゃないの?と思うかもしれないが、関数Fについてこれ以上の言及がないのである。E
ovとΔGを使ってどう計算しているのか?
分からないものはしょうがないのでザックリとした解釈で話を進める。オーバーシュート後に揺り戻しがあれば荒い運転、揺り戻しがなければ丁寧な運転と解釈する。
さきほどのグラフに戻ると、質点の位置がオーバーシュートして最大値1.163になったあと1に収束するので、オーバーシュート後に揺り戻しがある。つまり荒い運転である。
このような揺り戻しが起きないような入力について考えてみよう、というのが本記事の真の目的である。
入力を瞬時に変化させているから揺り戻しや、それを引き起こすオーバーシュートがあるんだろ、という意見が出て来るかもしれないが、その辺の考察は後回し。
本題に戻り、揺り戻しが起きない、否、揺り戻しを打ち消す方法である。
その方法とはズバリ、オーバーシュートして最大値に達する瞬間にオーバーシュート分だけ入力を追加する、である。

グラフでは入力と位置が重なっているため揺り戻しの有無が分かりにくいかもしれないが、速度に着目すると入力を追加した瞬間から0のままである。つまり位置は変わっていない、揺り戻しはない。
どうだろう? 見事に揺り戻しを打ち消しているよね。
次に入力の大小について。入力を1よりも大きくするとどう変わるのか。興味深い結果が得られた。

入力の大小に関わらず、静的安定位置に一致する時刻と最大値に達する時刻は同じだった。
また、入力と最大値を表にまとめた。

入力の大小に関わらず、オーバーシュートする量[%]は同じだった。
これらは何を意味するのか? どう解釈すればいいのか?
おそらく。
走行タイプ1の青ランプが点く操作とは、操作のタイミングあるいはリズムは同じで操作量だけが違う、ということなのではないだろうか。またオーバーシュートする割合は同じなので、ドライバーが所望するGに対してオーバーシュート分を見越して最初の入力を小さくすることが感覚的に可能なのではないだろうか。
未熟な私の想像なので、おそらく、である。
おまけ1;
瞬時に入力を0から1に変化させるのではなく、時間をかけて直線的に変化させてみる。

時刻:0から入力を始めて時刻:5で1になるように直線的に時間に比例するように変化させた。時刻:5以降は1のままとした。
結果はグラフを見ての通りで、オーバーシュートが発生し揺り戻しもある。
かける時間が短かかったのでは? もっと時間をかければ?
ちょっと待って。青1を点灯させるためにシミュレートしているのだから、時間をかけてゆっくりというのは目指すところが違う。よって時間をかける案は却下。
タッチ_さんのブログを読んでいらっしゃる方なら「はじめユックリ、徐々に早く」 をやればイイのでは?と思うかもしれません。時間の2乗に比例するように変化させます。

揺り戻しが発生しています。むしろ直線的に変化させる入力よりもオーバーシュートが大きくなっています(=揺り戻しも大きい)。なぜかは各自で考えてね。
「はじめユックリ、徐々に早く」はドライバーの操作について述べているのであって、車両にこのように加速度を発生させよと言っているわけではないのかな?
おまけ2;
もしもダンパーの減衰係数cを任意に変えられたら。例えば1から2に変更したら。

ダンパーが強すぎてオーバーシュートしない。i-DMがこんな大きな減衰係数を使用しているとはとうてい考えられない。
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Posted at
2017/01/29 12:12:40