
2007年。
日本の自動車市場に2台の2ドアモデルがデビューしました。
生み出したのはともに
日産自動車、日本車史上最高のスーパースポーツ「
GT-R」、そして伝統の名前を受け継ぐ「
スカイライン・クーペ」です。
実は日本車においては2ドアクーペは"絶滅危惧種"になっていました。
そんな中で久しぶりに高性能&高級2ドアモデルが誕生したのですから、景気拡大傾向が続いていることのひとつの証になるのかもしれません。
しかし。
1989年を振り返ると、やはりこの年に「
スカイラインGT-R」が誕生。16年ぶりのGT-R復活は大きな話題となりました。
更に一年後れて1990年には「
ホンダNSX」も登場、諸費用込みで1000万円に届こうというプライスタグも注目されました。
この
ホンダNSX、登場直後から大人気で新車供給が追いつかず、中古車市場では新車価格以上のプレミア付きで販売されました。
先頃発売された「
GT-R」でも起きた現象です。
よりラグジュアリー嗜好の車種としては「
トヨタソアラ」が大人気。
初代で築き上げた先進的かつ他を圧倒する高級感が二代目にも受け継がれ、男女Sれぞれから高い支持を集めていました。
またライバルとしては少々販売面では苦戦していたものの、「
日産レパード」も硬派なイメージで存在感を見せていました。
さらに1989年にマツダの販売チャンネル再編によってEUNOS(ユーノス)が誕生すると、翌1990年には世界初の3ローター・シーケンシャルターボエンジンを搭載した「
ユーノスコスモ」が誕生。
このほかにも「
ホンダレジェンドクーペ」や「
スバルアルシオーネSVX」など、1989年~1992年当時は日本のメーカーから魅力的な高級グランツーリスモたる2ドアクーペが多数リリースされていたのです。
時計を現在に戻して2007年・冬。
日本メーカーからリリースされる2ドア高級クーペは先に紹介した「
GT-R」と「
スカイライン・クーペ」、あとは「
レクサスSC」くらいのものです。
1989年頃と現在の日本における自動車市場にはちょっとした共通項があります。
新型「
GT-R」の誕生。
そして1989年の「
トヨタセルシオ」デビューは、2006年の「
レクサスLS」誕生に通じる印象があり、いずれにしても高価格車の新型が次々に誕生しているということは共通項として挙げて良いでしょう。
しかし特に2ドアモデルはなんとも盛り上がりに欠ける感じがします。
「
GT-R」こそデビュー間もなくは一般の報道でも多く取り上げられましたが、この話題も車好きの面々は別にして、一般的にはそう長く続かないでしょう。
なんとなくですが、既に車そのものが"憧れ"や"話題"の対象では無くなってきているように思えます。
1989年頃は新車の話題が一般週刊誌などでも頻繁に取り上げられ、特に男性向けの情報誌では欠かせないものでした。
世俗的に"クルマ"は女性と遊ぶための重要なツールであり、「デートカー」などという単語すら存在していたほどです。
翻って2007年、今やクルマの話題は一部愛好家こそ大いに盛り上がりを見せるものの、一般的にはより冷静に語られるようになりました。
使い勝手や経済性に主眼が置かれ、必然的に2ドアモデルは話題の中心から外れていきます。
既に価値観は多様化しており、都市部を中心に遊びに行くにもクルマが必須とはならなくなってきました。もちろん公共交通機関の整備が進んでいない地域ではクルマが唯一無二の移動手段ですが、それとて移動手段としての価値が最大の注目を集め、広さや快適さなどを主眼に置いたクルマ選びが世代を問わず当たり前になっています。
もはや「2ドアモデルがデートカー」というのは古い価値観であり、カップル2人でミニバンに乗ってお出かけというのは何もおかしなことではありません。
むしろ多くの遊び道具を積めたり、乗り心地が良かったりと、メリットが数多いものです。
現代の2ドアクーペ、「
GT-R」はやや特殊な存在ですから別にして、「
スカイライン・クーペ」と「
レクサスSC」に1989年頃のクーペのような魅力を感じられるでしょうか。
少なくとも私の場合、あの当時のような"憧れ"や"ときめき"を抱くまでは至りません。
何故でしょう?
私なりに考えての結論は「私が日本人だから」。
そう、「
スカイライン・クーペ」も「
レクサスSC」も、メーカー的には北米市場でのセールスを第一に考えて開発した車なのです。
対して1989年当時の2ドアモデル、「
ホンダレジェンドクーペ」と「
スバルアルシオーネSVX」は北米市場を強めに意識していましたが、「
トヨタソアラ」や「
日産レパード」、「
ユーノスコスモ」は日本市場専用という位置づけで開発されたように思います(一部北米市場でも販売されましたが、開発時のコンセプトワークや想定主力ターゲットはあくまでも日本市場でしょう)。
これは2ドアモデルに限りませんが、最近の日本メーカーは生き残りをかけて海外市場進出での販売を強化しています。
その結果、世界市場という見地からの車造りが主流となり、日本独自の「5ナンバー枠」を外れたボディサイズや大きめの排気量を有するエンジンを搭載する車種が増えています。
善くも悪くも日本独特の車に対する価値観は重視されなくなり、北米という数を稼ぐことが出来る巨大市場を第一にしての開発が幅を利かせるようになりました。
その結果は色々な形になって現れていますが、特に新車市場の冷え込みや若者の車離れはそうした一端のように感じられます。
ライフスタイルがどんなに欧米的になったとしても、やはり温泉に入ると落ち着いたり、味噌汁と白いご飯が一番美味しく感じられることは、世代を問わずあると思います。
肥大化したサイズとエンジン、日本車としてメーカー名や車名を名乗っていたとしても、実際には北米市場をメインに考えて創られた車たち。
まるで和洋折衷の「ラージサイズのライスバーガー」みたいな感じですが、最終的に毎日食べる(乗る)のなら普通の白いご飯を欲するのが日本人であるように思えます。
さて、今回ご紹介した「
トヨタソアラ」や「
日産レパード」、「
ユーノスコスモ」については、
みんカラのフォトギャラリーでミニチュアカーコレクションをご紹介しています。
・
Miniaturecar Collection|トヨタソアラ2800GT-LIMITED(1982)
・
Miniaturecar Collection|日産レパードUltima(1986)
・
Miniaturecar Collection|ユーノスコスモTYPE-B 20B
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Posted at
2007/12/24 06:46:38