チャタリング対策~LSDをバラす!~
目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
中級 |
作業時間 |
3時間以内 |
1
さて、今回は”尻拭い”的作業です。
先日、加速性能アップのためにリアデフのファイナルローギアード化を行ったのですが、その後から変な状態に…
低速コーナーで今までにない”グワグワグワ…”とういか”ゴゴゴゴ…”というか、そんな感じの異音とかなりの振動。
さらに低速になると、コーナーの後半で”ゴッ”という音とともに横にガクッとスライドする始末…
なんだあ??今までこんなことなかったぞ。
色々調べた結果、結局これはLSD(NISMO GT-Pro LSD TTmodel)からのチャタリングであることが分かりました。
雑誌や車のサイトなどでよく書かれているチャタリング異音は”バキバキ”なんですが、実際はこんな音もあるのね…。
ローギアード化が原因か、それとも交換作業でミスをしたのか?
NISMOに相談したところ、①オイル交換(柔らかめ)、②LSDをバラシて洗浄、の2案を教えてくれました。
まあ、それなら両方やっちゃおう!面白そうだからな(笑)ということで、早速作業開始!
LSDを取り出すところまでは前回も紹介しているので、はしょっていきますよぉ。
まずはデフの周辺部品(ドライブシャフト、プロペラシャフトなどなど)をはずして、デフASSYを降ろします。
今回も嫁さんにガレージジャッキ操作を頼んで、引っ張り出しました。
引っ張り出した直後の写真がこれ。
2
そうそう、前回の整備手帳の中で”デフインプットフランジを取り外すためにギアプーラーを使う”というのを紹介していました。
残念ながら写真を撮影していなかったので、今回はちゃんと撮りました。
これです。
真ん中のシャフトをデフインプットシャフト、両脇の爪をフランジに引っかけます。
この後、プーラーシャフトの先端に19㎜のボックスを取り付けて、インパクトレンチを使って慎重に回せばフランジをつかんでいる爪が手前に引っ張られ、フランジが引き出されるというわけです。
これと、長めのバールさえあれば、ファイナルギア比変更のためのR200デフ間スワップは万全!怖くありません(笑)
プーラーでインプットフランジ、バールで左右のサイドフランジをはずし、交換するわけです。
(ギアプーラーには2爪タイプと3爪タイプがあります。場所によって使い分けます)
3
途中作業は…省略!
LSD本体を取り出しました。
すでにリングギアも外されています。
ここから先が今回の重要な部分。
LSDの分解+洗浄です・
色々な種類があるLSD(差動制限デフ)の中で、いわゆる”機械式”というものは内部に複数の摩擦プレートを持っており、このプレート同士が押しつけられることで摩擦が発生(ちょうどクラッチをつなぐように)し、左右ドライブシャフト間の差動を制限します。
メカニカルに摩擦するために、鉄粉などが発生し、これがプレート間に挟まったりして異音や振動を発生してしまいます。
オイル交換頻度を高くしなければならない理由もこれ。
オイルに混じり込む鉄粉をオイルごと流しだして、新しいオイルに交換するわけですね。(オイルの性能劣化も普通のデフに対して早いというのもあります)
…それでもオイルを抜くだけではLSD内に残った鉄粉を完全に除去できません。よって今回、分解してこの鉄粉などを綺麗にクリーニングするのです。
まずはLSDの“ふた”を開けます。
リングギアが接していたところにある3か所のプラスビスをはずします。
LSDの中にはイニシャルトルクを発生するための皿ばねが入っており、ふたにはテンションがかかっています。
ふたをはずすと、中のディスクが飛び出してちょこっと持ち上がるぐらい。
よって、3つのビスは均等に緩めたり締めたりしなければなりません。
プラスビスは舐める恐れがありますので、このようにインパクトドライバを使った方が安心です。
以前何かの作業のときに必要にかられて購入したのですが、意外によく使っています。インパクトドライバ。
4
ビスをはずした後、慎重にLSDをひっくり返して(慌てると中身をぶちまけちゃいます)、ふたをはずしたのがこの写真。
右側に見えるのがふたの裏側。
LSD本体を見ると放射状に溝のあるプレートが一番上に見えます。
これが摩擦プレート(フリクションプレート)。
この下には同心円の溝のある丸いプレート(フリクションディスク)があり、その下はまた放射溝のフリクションプレート…という風に何枚も重なっています。
ちなみにカーボンタイプの場合はフリクションディスクがカーボンになっています。プレートの方は金属。
ワタシのものは両方とも金属タイプです。メタルクラッチ…って感じか。
この大きさと数でLSDの容量が決まります。
大きくて多い方が寿命も長くなるし、直進のイニシャル弱ロックからコーナーでのMAXデフロック(LSDの場合は100%まではロックしません)までの作動遷移がスムースになります。
プレートはマグネットなどを使って一枚一枚まっすぐ持ち上げるように取り出していきます。
5
はい、完全にバラしました!
金属のトレーの上に台所用のキッチンペーパーを敷いて、その上にLSDの中身を並べていきます。
プレートは再使用するので、順番+向きは組み付いていた通りに並べる必要があります。
①合計10組のフリクションディスク&プレート
センターのユニットを挟んで左右に5組ずつ配置されています
②プレッシャーリング2つ
エンジンからのトルクが入るとこのリングがそれぞれ左右に広がってフリクションディスク&プレートが押し付けられます
③サイドギア2つ
フリクションディスクがこのサイドギアの凸凹リングにはまります、フリクションプレートは逆にLSDケース側に引っかかります。
プレッシャリングが広げられてフリクションディスクとプレートが強接触すると摩擦(ロックに近い)が発生、リングギアによって回転されるLSDケースとサイドギア(=ドライブシャフト)の回転が一致して差動制限が働くわけです。説明が下手だな。
④ピニオンシャフト&ギアユニット
これがLSDの真ん中。ピニオンギアが4つあるので”4ピニオン”タイプとなるわけです。
この中にイニシャルトルクを発生する皿ばねとイニシャルトルク値を可変するカム機構が入っています。
で!この部品群、特にプレート&ディスク。
よーく見ると表面に鉄粉がついている!
小さく写真には写りにくいですが、間違いなく付いています。
ばらしたからにはこうでなくちゃ(笑)。クリーニング作業を行います!
6
クリーニング…偉そうに言っていますが、簡単にいえば洗油(簡単に手に入るモノでいえば灯油)で洗ってパーツクリーナーで脱脂するだけです。
作業は地味ですが、とにかく慎重に。
部品一枚一枚、1個1個洗浄ブラシで綺麗にしていきます。
洗浄後、灯油を入れたバケツ(100円ショップで購入)の底にはかなり鉄粉が沈殿していました。マグネットにしっかりくっつきます…
ディスクは綺麗なものでした。傷などなし。
またマイクロメーターで厚さを測りましたがほぼ新品と同じ1.6mm
(いろんなサイトを見ると、LSDのディスクはそんなに削れて薄くなるものではないそうです。意外と持つのね)
この後、新品のオイルを薄く塗って逆の順番で組んでいくだけです。
作業の合間に鉄粉が再び付着しないように気をつけることが重要です。
7
今回使ったLSDオイルはこれ。
チャタリング対策として有名なCUSCOのLSDオイル80W-90です。
NISMOのメカによると、NISMO LSDには日産の純正ハイポイドLSDオイル80W-90でもかなりチャタリングが抑えられるとのこと。
(NISMO純正デフオイル高いですからね…(笑)NISMOメカでも自車はこちらを使うらしい、ははは)
1L入りが3缶。
V35のデフは標準容量が1.4Lなので、3Lあれば2回分になります。
3000-5000km後に残りを使います。
今まで使っていたCUSCO 80w-140は強力な極圧剤のためか、独特の硫黄臭がしましたが、こちらはそれほどでもない。
色もアメ色に対し、レモン色に近い。
これを小さなカップに取り分けて、LSD組み付け時にディスクに塗ったり、ベアリングに馴染ませたりします。
8
…途中省略。
で、LSDをデフケースに組み込んで、サイドベアリングキャップのボルトも規定トルクで締めたところでバックラッシュ測定。
今回も規定内に問題なく入っていました。0.05-0.15mmの規定に対し0.12-3mmほど。前回と同じです。
デフケース内も鉄粉が残っている可能性があるので、中を灯油で洗って脱脂しています。
後は規定量のオイルをデフケース内に流し込んで、デフカバーをシーリング剤を付けて取り付け。
車両に慎重に装着して、周りの部品を元に戻せば完成です!
さて…その効果は。
無事異音は消えましたよぉ!
今までは調整式イニシャルトルクを弱にしても出ていた異音&振動がMiddleでも出ない。
チャタリングは出ませんが、コーナー時はしっかりタイヤはスキール音を出します。
LSDの内部ディスクが綺麗に滑ったり、その後しっかり摩擦したりがちゃんとできている証拠です。
イニシャルトルクもちゃんとかかっており、まだまだ使えます。
ま、今回でディスク交換オーバーホールの予行練習もできたということで(笑)
大満足。
LSD装着車オーナーの方々、やってみれば難しくないですぞ
さあ、自分でやろうぜ!
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