
クルマが維持り状態に突入していることもあり、暇にまかせてアルチューのトヨタ特許を読んだので紹介しておきたいと思います。
今回は、シート(座席)を使った除電とヒューズBOXの除電になります。
あまり関連のない2つのテーマになりますが、既に必要な特許を紹介した後に出てきた残りみたいなものなのでご容赦ください。
トヨタも既に必要な特許を取得しているせいなのか、最近のアルチュー関連の特許は、書類の書きぶりが少し雑になってきている気がします。
とくに、基本原理が同じということもあって、過去の出願を繰り返し引用していて、ページ数の割に内容が薄くなってきているのと、図に模式図を使うことが多く、車両の具体的なパーツを想像しにくくなっていたりします。
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【特開2019-117709 : シート(座席)を使った除電】
まず最初に、この特許(出願中)は、正確には除電機能を有するシート(座席)になります。
普通のシートに除電機能を持たせることも出来なくはないかもしれませんが、張り替え等の大ごとになるか、原理を応用した何らかの工夫が必要になるかと思います。
あと、シートそのものを除電するというより、「シートを利用して車両を除電する」というものになります。
基本的な原理は、前に説明した「エンジンカバーを使った除電」と「樹脂テープを用いた除電」を組み合わせたものになります。
早速説明に入りますが、図がこんな模式図↓しかないので、主な番号と部位を以下に示しておきます。
Ve: 車両
P : 搭乗者
1 : 車体
2 : タイヤ
3 : 路面
4 : シート
5 : フロア
6 : シートクッション
7 : シートクッションフレーム
8 : クッションパッド
9 : ボディアース
10: 隙間
11: 表地(シートカバー)
12: 裏地(シートカバー)
13: アース線
この特許でキーになるのは、シートカバー表地11 と同じく裏地12 、アース線13 になります。
この図↓は、車体1 と裏地12 、表地11 が帯電する静電気の極性を示したもので、表地と裏地をそれぞれ以下のような特性を持つ材料にします。
表地11 : ナイロン や アラミド などの ポリアミド や レーヨン → プラスに帯電する材料で構成
裏地12 : ポリ塩化ビニール 、ポリエステル系樹脂 、ポリエチレン 、ポリプロピレン(ポリオレフィン系樹脂) → マイナスに帯電する材料で構成
シートカバーの表地と裏地が擦り合わされることで、表地はプラスに帯電し、裏地はマイナスに帯電するので、その裏地にアース線をクリップ等で接続し、その他端をシートクッションフレーム7 に接続することで、ボディアース9 を介してプラスに帯電している車体1が中和除電されるという仕組みになります。
なお、シートカバー裏地とシートクッションフレームとが近い場合は、アース線に変えてアルミテープ等で接続しても良いとのことです。
また、これらはシートだけでなくフロアマットにも応用可能とのことですので、今使っているシートやフロアマットの材質がわかれば、比較的簡単に対応できるかもしれません。
この図↓は、一般的にプラスに帯電するとされている搭乗者P とシートカバー裏地12 とをアース線13 で接続し、搭乗者を除電しています。
アース線と搭乗者の接続は、クリップか表地の上にアース線の端を配置して、着座したときに接触させる等のオーソドックスな方法になります。
搭乗者を除電することで、接触するステアリングやアクセル、ブレーキ等の帯電を抑えるとのことです。
この図↓は、クッションパッド8 または シートカバー裏地12 にアルミテープ等の放電装置14 を貼り付けたものになります。
この場合のアルミテープの役割は、これまでのものと少し異なり、プラスに帯電している箇所ではなく、マイナスに帯電している箇所に貼っています。
なお、アルミテープの代わりに金属材料や繊維状のカーボンを含有する塗料をシートカバー裏地12に塗布してもよいとのことです。
この図↓は、上図において車体1 と裏地12 、表地11 が帯電する静電気の極性と、車内空気を介して車体1 が中和除電されている様子を示したものです。
アルミテープ等の放電装置14を貼ることで、コロナ放電により周囲にマイナス極性の空気イオンが発生し、これがマイナスに帯電しているシートカバー裏地の静電気と反発して車内に拡散され、空気流によってプラスに帯電している車内(車体1)が中和除電されるという仕組みになります。
この特許についての解説は以上です。
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【特開2020-042928 : ヒューズBOXの除電】
ヒューズBOXは、ボンネットを開けたときに真っ先に貼り付けたくなるくらい貼るスペースが目立っている箇所なので、既に説明の必要はないかもしれません。
この特許では、ヒューズBOXに限らず、電子機器が収納されている樹脂ケースに貼るようにしていますが、貼る位置や量(面積)などをある程度指定しているので、それを紹介したいと思います。
例によって、この図↓の主な番号と部位を以下に示しておきます。
(細かい説明は不要なので、具体的なパーツがわかるような図にして欲しかったです)
A : 自己放電除電器
1 : 除電装置
2 : 正極端子
2a: 正極端子 (バッテリー)
3 : ケース・蓋の断面 (非導電性樹脂材料)
4 : 内面
5 : 外面
6 : 導電性部材
7 : 金属(アルミ)テープ、メタリック・カーボン塗料
なお、A(6と7)は導電性粘着剤を用いたアルミテープでよいかと思います。
電子機器の正極端子が帯電すると、その近傍に位置するケースや蓋の内面は、誘導分極によって負極となり、外面は正極になります。
この図↓は、走行実験を行ったときのケース(蓋)の電位を計測したもので、実線がアルミテープ等を貼ったとき、破線が何もしないときのものになります。
A領域は、バッテリーやアース端子の正極端子側の電位を示し、B領域はケース(蓋)の電位を示したものになります。
B領域のA領域に近い側が電位が高くなっており、アルミテープ等でケース(蓋)の外側を除電することで、電位が下がっていることを示しています。
正極端子に近い箇所のケース外面に貼るのが望ましいことになるので、ヒューズBOXやECUなどのどこに貼るかは、現物を見て決めるのが良いかと思います。
この図↓は、有効放電面積を示すもので、一か所に貼るアルミテープの面積は、9000~9075㎟(平方ミリメートル)になります。
(貼る面積に許容範囲がある理由は、以前の特許で説明でしているため省略します)
これは、内燃機関のみの車両だけでなく、ハイブリッドや電気自動車などの車種に関係なく同じとのことです。
確かに車種による違いはないのかもしれませんが、正極端子がどのくらい密集しているかによって帯電量や必要な除電量は変わるのではないかと思いますので、実際にはトライ&エラーで試したほうが良いような気がします。
この特許についての解説は以上です。
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Posted at
2020/06/28 14:46:51