94年頃、日本車から「コストダウン」「部品共有化率何%達成」という言葉が新型車の記事を読む度に目に付くようになった。
自分が好きだったマツダのランティスは、カタログが変わると装備が落とされていたり、内装のコストダウンとみられる様なことがされていた。
(なんだか安っぽいなー。)
日本車に対する不信感の始まりである。
96年末、書店で徳大寺 有恒 氏 , 岡崎 宏司 氏の「もっとまともな車に乗りなさい」を購入した。
この本は90年代の車社会を議論しているのだが、ゴルフについて両氏の評価は、日本車への不信感をますます抱かせるものだった。
それは─90年初め、日本車がハンドリング向上、パワー280ps、3ナンバーボディとバブル全盛の時代、ゴルフは環境と安全に取り組んでいたというものだった。
─日本車が今頃ブームかの様に安全安全と訴えている中、とっくに本気で取り組んでいたというのである!!─
確かに安全ブームの現在、日本車の安全性は向上しているだろう。しかしブームになったから、エアバック、ABSを拡大装備、その一方で宣伝効果のあまりなさそうな、リアヘッドレスト、シートベルトプリテンショナー、は装備しない…。
日本車に思想というものは無いのであろうか?
日本車って一体何なのだろう?
コストダウンによる低品質感とこの本によって、自分の日本車不信はますます強くなった。
96年、ゴルフのカタログを貰いにファーレンへ行った。
デューオに勤めている友人が「ゴルフはいいよ」なんて言ったのに対し、「ゴルフはうるさいんでしょ?」とか「日本車に対して割高感あるよね?」と輸入車否定派だったのが嘘のようだ。
近くで見るゴルフはとてもかっこよかった。乗り込んでドアを閉めるとパシャッといい音がした。重めのドアと相まって高級感すらある。ただ、そそり立ったインパネと野暮ったいシート地は?だったがこれで十分の気がする。
しかし正直に言って迷っていた。日本車のほうがボディも大きく、装備も贅沢だからである。思想無き日本車と言いながら、その販売戦略に乗せられている自分がいるのである。
ゴルフを見たあと、ブルーライオンへ行った。
そこにはプジョー306スタイルが置いてあった。ゴルフよりもコンパクトに見えた。
プジョーは妻のお気に入りでカタログが欲しいと言うので、ついでに行くことにしたのだ。
プジョーの第一印象はカッコイイけどやっぱりゴルフがいいなと思った。
しかし、かなり気になる車になってしまった。それは、5ドアで5MTでお手頃な値がついたものがあったからである。自分はMTが好きなのだが、その当時ゴルフには5MTの安いものは2ドアしかなかったのである。シャレードデトマソで2ドアの不便さを痛感したので、できることなら5ドアの方が好ましい。
プジョーは何よりスタイル、デザイン共に評論家が絶賛の車だ、自分でもカッコイイと思う。
また、車好きの間でも定評のある車でもある。購入してもケチをつけられることも無いだろうが、しかし、である。フランス車のイメージで信頼性に不安を感じた。壊れたりして大変な思いをするのでは?輸入車未体験の自分はそれが一番気になるところだ。
ゴルフ、プジョーを見てからというもの、輸入車が気になり、以前から購読していたNAVIのバックナンバーを読み返すようになった。
そんな時に何気にめくったページに価格を前面に出したオペルの広告があった。
安売り輸入車みたいなのが嫌だったが、みるとアストラ5ドアの5MTが200万円を切っていた!!当時としては確かにインパクトがある。
でもオペルかぁ…。アストラがあまり評価されていないのは知っていた。ある評論家は「スタイルが日本的、プリメーラを買った方が何倍もいい」とか、「旧世代の車、走りも造りも雑、買う意味を認めず」と散々である。
ヤナセのブランドイメージ以外は自分の中で、オペル=ダサイ、日本車的、さらには車好きに見えない。といった図式が出来上がっていた。
でも安さに惹かれカタログ位は貰おうかなと思った。
カタログを貰いに行く日、偶然?薬局の駐車場にアストラが停めてあった。
近くに寄ってよくみると、全体的にはボテッとしているが、細部はなかなかかっこよく思えた。フロントとリアのフェンダーのデザインと情け無さげなフロントマスクが特に気に入った。
内装も写真で見るよりいい!!ドライバーに傾斜したインパネのデザインがかなり良かった。
カタログを貰って、家で見るとますます欲しくなった。アストラを買おう!!と決めた。が、簡単には決められないので、1ヵ月経っても欲しい気持ちが変わらなければということにした。試乗もせねば、頭を冷やして冷静にならないと…。
1ヵ月後…欲しい気持ちは試乗しても変わらなかった。
買おう!!と決めた!!
ところがである、妻がアストラは止めてと言うじゃないですか。
「何故?」
と聞くと、妻が一言、
「かっこ悪いから…。」
自分、
「…。」
確かにお世辞にもカッコイイとは言えない…。
だけど何か感じるものがあった、アストラ…、評論家の方々もお薦めしないと仰る。
周りがなんと言おうと、それでも自分の判断を信じてみようと契約した。