昨日のあほ話に、うえしまさんからご質問を頂きました。
「なぜボディが定位置で浮いている前提なのか?」
こ、これは……僕が横着していたことがバレてしまうので出来れば解説したくないのですが(笑)、実際のクルマの動きを考えるうえでは大事なことなので、なぜなのか?どうすべきか?を考えてみましょう。
さて、まずこのご質問に正しくお答えするには、本来2つのステップが必要です。
(1)何故こういう前提にするのか?について説明する
(2)説明が不足している部分についてきちんと説明する
ただし残念ながら(2)については、僕では全てを説明することが出来ません!
ごめんなさい。
内容的に自動車工学というより、もはや振動工学の領域に入ってしまうからです。
後ほど説明しますが2自由度モデル(あるいはそれ以上)の運動方程式を理解しようと思うと、物理の基礎を学んでいない僕が扱える範囲を越えてしまいます。
そこで、(2)については「よう分からんけど何となく難しいんだなぁ」という雰囲気が伝わる程度に留めることでお茶を濁しておき、せめてもの償いとして(1)について少し説明しておこうというのが本日の主旨になります^^;
我ながら中途ハンパだなぁ(笑)
というわけで「なぜばね上の動きを含めた説明がなされないか」に関してですが、えーっと……どう言うといいかな…。
例えば難しいものを理解しようとするとき、まず簡単なところが理解できないのでは、その先も理解することは出来ません。
そういう観点からすると、例えばこういう考え方があります。
「タイヤはばねを介してボディにくっついている。だから、ボディに対するタイヤの動きが定まれば、次にボディの上下動を求めてから2つを組み合わせることで、最終的な動きがまとまる。したがって順番としてはタイヤの動きを先に求めたい」
実際は相互影響なのでもうちょっと複雑なのですが、ともかく、まずは簡単なところから理解したいわけです。
ばね上とばね下を同時並行で考えるよりは、まずはどちらかひとつの動きを理解したうえで次に進むようにしたほうが、確実に進むことが出来ます。
振動工学では、振動のモデルを「1自由度」「2自由度」というように段階に分けて理解を促します。
いきなり○○自由度と言われてもよく分からないと思うので、それぞれの説明に使われる図で補足しますね。
例えばタイヤを固定してボディの振動を考えるのが1自由度のモデル。
それに対して、タイヤの振動とボディの振動どちらも考えるのが2自由度のモデルとなります。
ちなみに実際の自動車工学では4輪の動きを踏まえて7自由度のモデルで解析するのが一般的らしいのですが、複雑になりすぎて僕には扱えないので勘弁してください。
ところで1自由度の振動モデルでは、例えば「タイヤに対するボディの振動」、あるいは「ボディに対するタイヤの振動」、いずれか単体の振動を考えることが出来ます。
ボディの場合はタイヤを地面に固定して考え、タイヤの場合はボディを空中に固定して考えるかたちになります。
ちなみにボディを空中に固定して考える考え方のことをアクティブサスペンションの世界ではスカイフックといいます。
実際のクルマは前述のとおり7自由度を持つので、これには当てはまりません。
でも1自由度の振動が分からなかったら2自由度も3自由度も分からないので、まずは簡単なところから始めるわけですね。
ちなみに手持ちの文献を漁ってみると3自由度以上の振動モデルを使って説明されているものはほとんどありません。
持っている中では唯一、KBY株式会社「自動車のサスペンション」(グランプリ出版)だけが4自由度モデルに言及していますが、もはや「おまけ程度に紹介してみました…」みたいな扱いです。
「この本で扱ってるのは振動工学じゃないから、そこまではやんないよ」という無言の主張が感じられます(笑)
そんなわけで、2自由度以上の振動モデルはとっても難しいので普通の人はやりたがらない。
どうしても学びたい人は振動工学としてやる。
というのがこの世界の暗黙のルールになっています。
だから、残念ながら自動車のお話としてはほとんど扱われることがありません。
雑誌やインターネットにはなかなかそういうことは載っていないので、疑問に思われるのも無理はありませんね。
というわけで僕もほとんど書いてなかったのですが、2年くらい前の記事で少しだけ関連しているものがあるのを思い出したので、参考までにちらっとだけ載せておきます。
こちらの記事(
ざっくり計算してみる)の最後の項目の…
この部分ですね。
分かりやすく説明するのが難しいので解説は出来ませんが、とりあえず、計算の一例です^^;
全体を1つの系としてみなした上で重心を求めて、そのぶんを引き算してるだけなので、さほど複雑なところではないはずですが…。
公式を忘れてしまったので改めて見ると自分でもいまいちよく分かりません(笑)
記事というより単なるメモ書きだし、計算も間違ってるし、なんかグダグダで申し訳ありませんが(汗)
さて、そんなわけで今回のお話の結論になりますが、クルマのサスペンションに関する説明について、本来であれば多自由度系の振動モデルを正しく使い、関連する全ての事柄をしっかり説明することが望ましいです。
でも、難しいことなので、なかなかそれが出来ないんですね。
1自由度の振動モデルしか説明されないとき、読む人からすると「本来クルマの動きは2自由度以上の振動なのに、この説明を書いた人はそのことに気づいていないのか?」と思ってしまうことがあります。
気づいていないことと、気づいていながら省略することの間に大した差はないのですが、後者のほうが横着と言えば横着です。
知ってるんなら書けや!って話ですからね(苦笑)
でも、なんとなく知ってることと、正しく理解していることとの間には大きな差があるので、よく分かっていないことに対してどこまで言及すべきか?というのも悩ましいものです。
最初から知らんぷりしてるのが一番ラクなのですが(笑)
ただ、難しいことを分かりやすく説明することは、工夫さえすれば不可能ではない。
というのが僕の信条なので、それが出来ないのは、創意工夫が足りなかったということです。
やはり横着はいけません横着は…。
ごめんなさい。なるだけ精進します(笑)
振動工学に興味のある方は、Googleなどで「2自由度振動系」とかのキーワードを入れて検索すると、そのあたりのページがたくさん出てくるので参考にしてください。
いつもより早く寝床につくことが出来ます(笑)