
スイフト乗り的には超注目!
新型スイフト(ZC72S)に乗ってきました!
グレードは3種構成の一番下のXG(CVT・2WD)、ボディカラーはスターシルバーメタリックです。
先月26日の発表から発売まで随分時間があり、まだかまだかとジリジリと待っていましたが、ようやく発売になってディーラー店頭に試乗車が来たので、早速乗ってみました。旧型スイフト乗りの視点から意地悪く見ていきたいと思います(笑)。
○だった点
・スタイリッシュな外観
もともとスタイリッシュだった先代から大きく変わり映えのしない外観ですが、それでもヒョコッと背が高く見えた先代に比べてロー&ロング&ワイドに見え、コンパクトカークラスの中では断然カッコイイです。ボディサイドやリヤフェンダーの張りのあるデザインは、街中で見かけると一瞬「あれどこの車だろう!?」と目で追ってしまう存在感があります。
・軽量化
同グレード(1.2XG・CVT・2WD)比で10kg軽量化されています。ボディが大型化されてのこの結果ですから優秀だと思います。
・ステアリングフィールの改善
先代よりもステアリングの操舵力は軽くなっているのですが、しっかりしたフィールは先代そのままです。
先代では中立付近がやや曖昧で直進に気を遣わされたり、操舵系の支持剛性が不十分な印象で、舵角を与えた状態で路面のギャップを乗り越えると、どこかワナワナした印象があったのですが、新型は改善されており楽しいハンドリングを強調しています。
・乗り心地の良さ
乗り心地の良さは先代から引き継がれた美点です。路面の継ぎ目など短時間での強い入力、路面のうねりなど長くて振幅の大きい入力ともうまくいなしています。先代同様、脚をむやみに固めてロールを押さえ込んでいるわけではなく、一定のロールは感じるのですが、ロール速度が速くないため安心感があります。
最近はトヨタの車を中心として、オイル流量の少ない貧弱なショックアブソーバーを使っているのか、街乗りでも常にコツコツコツコツした振動を伝えてくる車が多いですが、スイフトは他メーカーのC・Dセグメントの車(トヨタでいえばプレミオ、カローラ)よりも乗り心地が良いです。
ちなみにリヤサスペンションの形式はトーションビーム式ですが、この良好な乗り心地ならばトーションビーム式でも何ら問題ないと思います。
・高級感のある内装
キザシやワゴンRスティングレーなど最新スズキ車のトレンドに沿った高級感のある内装です。
特にダッシュボードはメッキ加飾やツヤのあるオーディオディスプレイ部のパネルなど、コンパクトクラスを超えている印象です。
・シートの出来
先代スイフトもコンパクトクラスとしては相当シートの出来が良く、体圧分布が適切で正しい姿勢を保ちやすく、また正しい姿勢を保って座っていれば長時間運転しても疲れが少なかったです。
ただ、座面前半分がやや「ぐにゃっ」と柔らかく、大腿部裏面の保持性に少し不満があったのですが、新型は座面の固さを増し、膝裏までをよりサポートしてくれるようになりました。
先代同様、コンパクトクラスとは思えないような、大きなしっかりした作りと相まって、ますます魅力を増しています。
・MTの設定
最近の日本車はMTが設定される例が少なくなってしまいましたが、新型スイフトは売れ筋になると思われるXLとXGグレードにMTが設定されているのがうれしいです。
最近はCVTの普及で、以前ほど自動変速と手動変速の燃費の格差が縮まり、一定速度での巡航時などはエンジン回転数をより低く維持できる分、CVTの方が燃費が良いということもあります。
しかし、市街地走行などではやはりMTに軍配が上がります。
また、意のままに車を操っているという運転感覚はやはりMTならではです。
余談ですが、欧州に輸出されている車種なら、大抵の場合MTが設定されているはずで(というかMTがメイン)、日本国内仕様のためにわざわざトランスミッションを開発する手間は無いでしょう。確かに国交省への型式認証のためのコストはかかるのでしょうが、各メーカーは受注生産でもいいので、幅広い車種にMTを設定してほしいものです。
・露骨なコストダウンを感じさせない作り
外観をご覧の通り、新型は好評だった先代スイフトをベースにしたブラッシュアップモデルといっても過言ではありません。
最近はフルモデルチェンジと謳いながら、実際には先代ベースのビッグマイナーチェンジで、露骨にコストダウンしている車が見受けられますが(例:トヨタクラウン、ウィッシュ、ホンダオデッセイ)、新型スイフトはその例にあてはまりません。
スズキは昔からコストダウンに熱心な企業で、当然スイフトもコスト管理を徹底しているのでしょうが、少なくとも外見上・運転した印象からはそれを感じさせません。
各自動車メーカーともコストのコントロールは厳しいのでしょうが、どうせやるならスイフトのように「いかにも安く仕上げました」的なところを感じさせないよう上手にやってほしいものです。
もう少し頑張ってほしい点
・相変わらずいまひとつな燃費
先代スイフトの弱点の一つとして、クラスの標準よりも燃費が悪いということが挙げられました。
新型にはパレットやワゴンRと同様の新型CVTが搭載されていて、10・15モード燃費は21.0km/Lから23.0km/Lと改善されているのですが、試乗中の積算燃費計の表示値は12.0km/Lでした。やや混雑した市街地でゴーストップが多かったのですが、それでもやや期待外れな数値と言わざるを得ません。
ここ数年でプリウスなどハイブリッドカーの燃費がますます向上する一方で、車両価格は低下しているので、コンパクトカーなのに燃費が良くないとなると、下手をするとプリウスの方が短期間で車両価格の高さを回収してしまい、トータルコストが安いという事になりそうです。こう燃費が悪いと何のためのコンパクトカー?と思ってしまいます。
・割安感の薄れた価格
先代1.2XG(CVT・2WD)比で4.7万円値上げになっているのですが、新型はオーディオレスが標準なので、実質的な値上がり幅は8万円ほどになります。先代は価格の割に装備が充実しているのが大きな魅力ですが、このメリットが薄れてしまいました。
・前方視界の悪化
先代に比べてフロントガラスの上下長が短くなっているように思えます。上端が低くなっているのはまだしも、下端が高くなっているため前方視界が悪化しています。
もともと先代もサイドウインドゥ下端が高く、車両直近の視界が良いとは言えなかったのですが、新型はさらに視界が悪化した印象です。
窓が小さいのは高速走行・長距離走行時に周囲の情報が程よく遮られて疲れが軽減されるというメリットもあるのですが、コンパクトカーなのですから、まずは街乗りなど日常の使い勝手を優先させて、視界の確保に努めるべきです。
・改善していない後席空間
先代の弱点の一つに狭い室内空間、特に後席や荷室の狭さが言われていました。新型は先代比で全長+95mm、ホイールベース+50mmということで空間の拡大に期待したのですが、実感としてはほとんど拡大されているように思えませんでした。むしろ、ドア内貼りパネルを凝った形状にしているせいか、先代よりも狭くなっている印象です。
コンパクトカーなので、1~2名乗車を想定しており、室内空間の拡大にはあまり関心を払っていないのでしょうが、フィットやヴィッツの広大な空間や、デミオの限られたサイズでありながら室内空間の広さとスタイリッシュさを両立させているのに比べるといかにもレベルが低いです。
・高くなったリヤハッチ下端
もともと先代からリヤハッチ下端高さは高かったのですが、新型はさらに高くなって実用性が低下しました。開口面積を減らして車体剛性や強度を上げたいということかもしれませんが、実用性にはマイナスです。
フィットやフリードのリヤハッチ下端や荷室床面の低さを見習っていただきたいものです。
・MTとCVTが同価格
○だった点にMTが設定されていると書いたのですが、先代(XG)で8.9万円あったMTとCVTの価格差がとうとうゼロになってしまいました。ムーブ、ミラなどダイハツ各車は以前からMTと自動変速が同価格になっていましたし、スズキも一昨年のワゴンRのフルモデルチェンジの際にMTと自動変速の価格を同一にしていたので、スイフトもそろそろ来るか…と思って覚悟はしていたのですが…
「販売量が少ないものをわざわざ準備するのはコストがかかるから」というのがメーカーの言い分なのでしょうが、コストがかかったであろう新開発の新型CVTもコンベンショナルなMTも同価格というのはイマイチ納得がいきません…
・回転半径がデカいまま・・・
これも先代で気になっていたことですが、タイヤの切れ角が小さくて回転半径がものすごく大きかった(5.2m!)のですが、新型も16インチホイール装着車は相変わらず5.2mと、コンパクトカーとしては異常な大きさです。(15インチホイールのXGは4.8m)
私は先代スイフトのあまりの回転半径の大きさに驚いて、社外品のステアリング切れ角アップキットを入れたのですが、インナーフェンダーや車体との干渉など不都合は全くありません。なんでこんなに取り回しが悪いまま放置しているのか理解に苦しみます。
・16インチホイールって必要?
最下級グレードのXG以外は16インチアルミホイールが標準装備ですが、ベーシックなコンパクトカーに果たして16インチホイールが必要なんでしょうか?
バネ下重量が嵩んで乗り心地が悪化しますし、タイヤ交換時のコストも大きくなります。
総評
先代スイフトはそれまでのスズキの普通車の、軽自動車に毛が生えた程度の安っぽいイメージを完全に打ち破った車でした。欧州車そのものの個性的でスタイリッシュな外観、安い車らしからぬしっかりした楽しい走り、高いコストパフォーマンスなど、これまでのスズキの普通車、というかコンパクトカーの基準を覆す車で、このクラスの車の中でも独特の個性と魅力のある車でした。
基本的に新型スイフトは先代のコンセプトをほぼそのまま踏襲し、長所を伸ばし短所をできるだけ潰した車です。が、長所は伸びているように思えますが、短所がそのまま大きな改善もされず放置されています。
燃費の悪さや後席空間の狭さ、小回りの利かなさなど、このフルモデルチェンジで改善されるかと期待した部分が大きな改善がなされていないのは非常に残念です。
特に燃費については、以前なら少々燃費が良くても車両価格が高いため、ハイブリッド車がコンパクトカーを燃料費も含めたトータルコストで上回るのは至難の業でしたが、ここ数年でプリウスなどの車両価格が低下し、なおかつ燃費は向上しているので、ハイブリッド車の損益分岐点が下がってきています。
スイフトの燃費がこの程度では、いずれハイブリッド車や次世代燃料車の前に埋没してしまうのではないかという不安があります。
と、まあ悪口は書いたのですが、やっぱりスイフトはいい車です。コンパクトなサイズ・キレのいい走り・スタイリッシュな外観・高級感のある内装と出来のいいシート…と、自動車としての本質的な魅力あふれた車です。多分私が現時点で車の購入を検討していたとすると、多分やっぱりこの車を買うと思います。
現時点ではまだスイフトスポーツの登場は未確定ですが、標準仕様のこの出来ならスポーツも大いに期待できます。
また、新型スイフトへのフォルクスワーゲンの関与はほとんどないと思われますが、今後のスズキとVWのアライアンスの内容によってはスイフトがさらに面白い車に進化するかもしれませんね。
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