
新年度を記念しての特別企画、
日産GT-R乗ってみました!!
あ、エイプリルフールじゃないですよ…(汗
一昨年12月の発売以来GT-Rにはずっと乗ってみたいと思っていたのですが、何分高額&このような特殊なスポーツカーゆえに、おいそれと乗る機会に恵まれずにここまで来てしまいました。
本当は発売直後の昨年1月にごく短時間運転できそうなチャンスはあったのですが、当日が仕事だったため泣く泣くあきらめていました。
今回、市街地・高速道路・山道など丸一日いろんなシチュエーションでたっぷりと乗ってみる機会があったので、今更ではありますがレポートしたいと思います。
試乗車のグレードはプレミアムエディション、ボディカラーはブリリアントホワイトパール、シートカラーはブラックです。
なお、GT-Rは昨年12月に最高出力が向上するなどの小改良が施されましたが、試乗車は改良前の2008年1月登録の初期型車であることをご了承下さい。
それから、一般道での試乗でこのスーパースポーツカーのポテンシャルを発揮させることはできませんので、あくまでも日常的な使用+α程度の走り方をした印象とお考え下さい。
○だった点
・GT-Rが存在していること
私は特定メーカーや特定車種に対するこだわりというのはあまり持っていないのですが、それでもGT-Rは特別中の特別な車であると思います。
環境問題、エネルギー問題に加え、昨年来の金融危機や景気後退など、車を取り巻く環境が厳しさを増す中、金融危機前でタイミングがよかったとはいえ、GT-Rのようなスーパースポーツカーが日本のメーカーから出てきたことを一人の車好きとして大変うれしく思います。
いろんなインターネット掲示板等を見ていると「ガソリンが高くて、環境問題も厳しいのに、スポーツモデルを出すのは時代錯誤だ」という意見も見られます。たしかにこのご時勢、高性能なスポーツモデルには反社会的な側面を感じざるを得ません。
しかし、それならば道路上を走るすべての車が実用的で経済的なミニバンやコンパクトカー、ハイブリッドカー、軽自動車ばかりになってしまう社会が、多様で豊かな楽しい社会だと思えるでしょうか?私はそんな世の中はあまりにもつまらない寂しいものだと思います。力の強いもの、速く走れるものに人間が憧れてきたからこそ自動車の技術が進歩し、結果として人間の生活が改善されてきたのではないでしょうか。もちろんスポーツモデルであっても自動車を取り巻く諸問題を無視してよいわけではありませんが、スポーツモデルを完全否定することは自動車そのものの死につながるのではないでしょうか。
自動車メーカーが努力を続けることはもちろん、ユーザー一人ひとりが自動車を正しく使うことによって、GT-Rのような高性能車と将来の生活との共存を図っていけたらいいなと思います。
・実用性が高く日常使用がしやすい
メーカーの日産自身が「マルチパフォーマンススーパーカー」と謳うだけのことはあり、GT-Rは超高性能車にもかかわらず非常に実用性に優れています。大人がなんとか座ることの出来る後席、実用的なトランクルーム、全幅1.9m近い全幅にもかかわらず狭い道でも扱いやすいなど、日常使用でも我慢を強いられたり不便を感じることが少ないです。
超高性能でありながら実用性にも優れているというのは、新時代のスーパーカーとしてふさわしい資質であると思います。
・疲れにくいシート
今回の試乗は半日運転しっぱなしという状況でしたが、体圧の分布が適切なようで、シートが原因で疲れたり身体の一部が痛くなるということがなく、楽に運転できました。
もう少し頑張ってほしい点
・手動変速トランスミッションがないこと
GT-Rのトランスミッションは今流行のツインクラッチ式のGR6型トランスミッションです。ツインクラッチ式トランスミッションはギアチェンジに要する時間が短い、シフトミスの危険性が少ない、トルコンAT並みのイージードライブができるなどのメリットがあります。
VWのDSGを皮切りに、三菱ランサーエボリューションのTC-SST、BMWのM-DCT、さらに最近ビッグマイナーチェンジしたポルシェ911にもPDKと称するツインクラッチ式ミッションが搭載されましたが、ポルシェの場合変速に要する時間や加速タイム等は、PDKがMTをすでに上回っています。
従来、自動変速は運転は簡単だが性能は手動変速よりも劣るのが常識でしたが、ツインクラッチ式トランスミッションの登場によりイージードライブと高性能が両立できるようになりました。
ただしこのことが運転の楽しさを向上させることと直結するとは思いません。確かにツインクラッチ式トランスミッションによって、オートマチック的なイージードライブもできるのと同時に、クラッチペダルがないことによりシフトミスを防いだり、両手をハンドルから離さずギアチェンジできることによりステアリング操作に集中できるなど、イージードライブとハイスピードドライブを高度に両立させることができるのですが、大多数のドライバーは素人で、そんなにしょっちゅうコンマ1秒を削る突き詰めた運転をしているわけではないでしょう。サーキットアタックでタイムを削ることも大事でしょうが、自分でギアを選択して運転をアレンジする楽しみ、回転をあわせてシフトダウンする楽しみなど手動変速ならではの醍醐味を残してほしいものです。
従来型の6速MTとツインクラッチを併売するべきではないでしょうか。
(ちなみにポルシェ、BMW M3ともMTとツインクラッチが併売されています。)
・そこそこレベルのドライバーが運転への関心を失う?
上記のようにGT-Rはどんな技量のドライバーでも簡単に高性能を引き出すことができますが、逆に私のようなある程度運転に自信のある「そこそこレベル」のドライバーにとっては、ヒール&トーなど全く無意味、かなり頑張ってもカウンターを当てるような領域に達しないというこの車は、運転がつまらないと感じるかもしれません。
私はこの車を試乗した際、少しでもこの車の限界に迫ろうと思い山道(箱根ターンパイク)で結構頑張って走ってみたのですが、相当高い速度域でも極めて平和で何も起こりませんでした。(恐らくターンパイクだと200kオーバーの世界までさらっと達しそう)
この車のドライビングの世界というのは、プロ級のドライバーがサーキットを攻めて、高度な限界域を見ることができるか、もしくは初心者級のドライバーが「うわ~すごいスピードが出るな~」と喜ぶか、どちらか両極端という印象です。
・極低速域でのトランスミッションの変速マナー
GR6型ツインクラッチ式トランスミッションは街中でゆっくり走っているときにはオートマチック的なイージードライブを許容しますが、時速20km以下の極低速域ではアクセルのオンオフで、トルコンATにはないギクシャクしたスナッチを感じることがあります。VWのDSGではこのようなことはなかったので、もう一歩極低速域でのドライバビリティを洗練させてほしいものです。
・180km/hリミッターの解除が難しい
GT-Rには他の日本車同様時速180kmで作動する速度リミッターが装着されていますが、この車の登場時から話題になっていましたが、一般道路でリミッターを解除すると車にログが残り、保証が効かなくなるそうです。
反社会的との誹りを恐れずに言うと、エンジン性能だけでなく回避性能も優れたこの車にとって時速180kmというのは日常的巡航領域であると思います。今回の試乗では東名高速の秦野中井~御殿場のような比較的きついコーナーが連続する高速道路も走ることが出来たのですが、一般的な車なら手に汗握る状況でも、この車は本当にストレスなく、かつハイペースで安全に走ることができます。
時折高速道路でプロボックスやADバンなど営業車が180km/h前後と思われるえらいスピードでブッ飛ばしているのを見かけますが、GT-Rのような全ての動力性能を磨き上げた車も180km/h、ABSが備わっているかどうかもわからず、細いタイヤに荷物満載でヨタヨタ走る営業車もリミットが180km/hというのはちょっとおかしいのではないでしょうか。
それから輸入車はリミッターが装備されていない、もしくはBMWやメルセデスなど250km/hですが、GT-RがVWゴルフあたりに高速で煽られるのもつらいものがありますね。
(参考までに、スピードメーターは189㎞/hまで表示されることが確認できました。)
・ヒルスタートアシストの設定
ツインクラッチミッション車には基本的にクリープ現象がないため、登り坂の途中で一時停止してからの再発進を補助するヒルスタートアシストが装備されていますが、停止時のブレーキの踏み方が浅いとヒルスタートアシストが作動せず、止まった瞬間後ろにずり下がってちょっとあせります。止まったときにきちんと床いっぱいまで踏み込む必要があるのですが、この特性を知らないとちょっと危険なことがあるかもしれません。
・ぶっちゃけ運転が疲れる
○だった点で、実用性が高くて運転がしやすいと書きましたが、長距離・長時間の運転はあまりしたくない車です。エンジンをかけた瞬間から「ズドウゥン!!」と豪快なエンジン音が響き、街中での走行中もミッション・デフのノイズが絶え間なく室内に伝わってきます。体調が万全ならいいのですが、疲れているときは運転したくない車です。
きちんと運転すれば圧倒的なパフォーマンスでそれに応えてくれる車なのですが、常に真面目に運転することが要求されているかのようで、運転が楽しみというよりも仕事とか作業のように思えてきます。
また、サスペンションの固さが「COMFORT」モードとして任意で柔らかく調整することができるのですが、COMFORTモードにしてもあまり乗り心地が変わらず固いままです。せっかく調整ができるのならもっと柔らかくできてもいいのではないでしょうか。
試乗時は嫁さんと一緒だったのですが、パッセンジャーには気を遣います。この車の騒音や乗り心地は、ドライバー自身が許容できても同乗者には不快に感じるかもしれません。
・いまひとつ魅力のない内外装
GT-Rにせよランエボ、インプレッサにせよ、日本車のスーパースポーツのスタイルというのはなぜこのようなガンダムルックになってしまうのでしょうか?
GT-Rに乗っているからといって常にサーキットに行くわけでもなく、時にはフォーマルな場やおしゃれをして女性と一緒に…という状況もあろうかと思いますが、正直この車のこのスタイルでおしゃれな場に女性と…とは到底思えません。
ポルシェやフェラーリは高性能スポーツカーでありながらフォーマル・ドレッシーな装いもよく似合うのに対し、GT-Rには全く似合いません。800万円級の車ならもう少し相応の大人っぽさがあってもいいのではないでしょうか。
それからGT-Rはインテリアもあまり魅力的とは思えません。プラスチック類の質感は800万円級の車とは思えない安っぽさですし、シート生地も皮やアルカンターラを使ってはいるのですがデザインが野暮ったいせいか高級感がありません。
また、ナビ、エアコンなどに付帯するスイッチ類が非常に多く煩雑な印象です。同じ機能を持つスイッチがインパネとステアリングで反復しているため使いにくいです。GT-Rのようなスーパースポーツはもっとシンプルで機能的であるべきだと思うのですが…
・紙カタログがないこと(笑)
GT-Rは登場時から紙のカタログがなくDVDのみですが、気軽にカタログを眺めることが出来ないのは面倒ですね。諸元などをちょっと確認したいというときも大変です。
また今年になって登場した上位バージョンのスペックVに至っては紙カタログはおろかDVDカタログもなく、車の内容はウェブ上でしか見ることができないのは、ちょっといかがなものかと思います。
総評
念願だったGT-Rに丸一日いろんなシチュエーションで乗ってみることができ、非常に有意義でした。
環境問題やエネルギー問題に加え昨年からは金融危機や景気後退の影響で、日本メーカーのスポーツカーの中にはホンダNSXのように次期型の開発が凍結されてしまったものもあります。
そんな中、金融危機が表面化する前に登場したというタイミング的なラッキーがあったとはいえ、GT-Rが我々の前に市販車のかたちで姿を現したことは、車好きとして非常に嬉しく思います。GT-Rは日本車の精神的支柱としてGなくてはならない存在で、これからも生き続けてほしい車です。
スポーツカーの人気低下や若者の車離れが言われる昨今ですが、GT-Rを走らせているときの注目度は非常に高く、すれ違うほかの車のドライバーや街行く人からの視線を感じましたし、駐車場に停めていると写メまで撮られました(笑)。社会の車に対する関心が極端に低下したわけでなく、GT-Rのような魅力的な車には依然として人をひきつける魅力があるのだと認識できました。
ただ、GT-Rの中長期的な将来については予断を許さない状況と言えるでしょう。環境・エネルギー問題はGT-Rのようなスポーツカーにとって非常に大きな問題ですし、メーカーの日産はハイブリッド車や次世代燃料車の開発に関してはトヨタ・ホンダに大きな遅れを取っています。日産がGT-Rを出してきたことには車好きとして感謝したいのですが、逆に「こんな車にかまけてていいの?」と心配にもなります。
世界のスーパーカーを見渡すと、フェラーリやアストンマーティンには美術工芸品的な美しさがあり、ポルシェには機械式腕時計のような緻密さ、ランボルギーニには前衛芸術的な魅力、メルセデスベンツには圧倒的なブランド性があるのですが、GT-Rは残念ながら「速くて扱いやすいだけ」の車です。自動車が速さやパワーを前面に押し出すことができなくなりつつある昨今、デザインの美しさやブランド性といったプラスアルファ(というよりもそっちのほうがメイン?)の魅力を訴求できないと、今後が厳しいのではないかと危惧してしまいます。
…と、厳しいことをたくさん書いてきたのですが、やっぱりGT-Rは日本の至宝!もしかしたらガソリンエンジンで走るGT-Rはこれで最後になるかもしれませんが、大事に磨きぬいて次世代のGT-Rによりよい形で引き継がれていかれることを切に願います。
↓↓フォトギャラリーもご覧ください↓↓
NISSAN GT-R乗ってみました その1
NISSAN GT-R乗ってみました その2
NISSAN GT-R乗ってみました その3
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