
三菱
デリカD:2に乗ってみました。
グレードは3種類ある中間グレードのX(2WD)、ボディカラーはパールホワイトです。
皆様ご承知のとおり、この車は三菱デリカを名乗ってはいますが、スズキの軽自動車・パレットをベースとした乗用車・ソリオのバッジエンジニアリング車で、中身は、というか外身も何もかもスズキの車です(笑)
○だった点
・広くて使い勝手のいい室内空間
この車のベースになったスズキパレットや、同様のパッケージングのダイハツタントなどは、軽自動車の枠内にある狭い横幅の割に室内高があるため、高さと幅のバランスが悪くて頭上がなんとなくガラ~ンとしています。
D:2は室内長・室内高はパレットとほぼ同じですが、全幅はパレット比+145㎜、室内幅は+135㎜と拡幅されているため、幅と高さのバランスが良く、広い上に乗っていて不自然さがありません。全幅そのものは小型車枠をかなり下回る1620㎜とコンパクトですが、室内に狭苦しさは全くありません。
シートのアレンジも、後席スライド・リクライニング、前席フルフラットをはじめ、スズキの軽譲りの助手席シートバックを前倒ししてフラットな空間を作り出せる機構など、ボディサイズ以上に空間を有効に活用できます。
・軽自動車に比べて余裕のある走り
パレットは軽自動車としては相当な重量級のため、街中走行でも常に重さを感じますが、D:2(ソリオ)は余裕があります。
D:2(X・2WD) :車重…930kg 出力…54PS パワーウエイトレシオ…17.22kg/PS
パレット(SW・XS・2WD):車重…1030kg 出力…91PS パワーウエイトレシオ…11.32kg/PS
…と、普通車ならではのゆとりがあります。
パレットやタントなど軽の超ハイトワゴンは、自然吸気モデルだと動力性能に全く余裕がなく、ターボ付きだと燃費が悪いというジレンマを抱えていましたが、この車に乗ると車重相応のエンジンを載せるのがやはり自然だなあと感じます。燃費についても市街地中心の走り方で燃費計表示値が17.1km/Lと良好でした。
高速道路・山岳部走行や多人数乗車の機会が多い方は軽よりもD:2にされることをおすすめしたいです。
気になった点
・なんでこれをデリカと呼ぶ?
軽自動車にはスズキワゴンR=マツダAZワゴン、スズキパレット=日産ルークス、三菱ekワゴン=日産オッティなどメーカーを超えたバッジエンジニアリング車が多いのです。別にバッジエンジニアリングが悪いことではないと思うのですが、D:2の場合もう少し外観を変えるとかやり方がなかったんでしょうか?
上記に挙げた車はフロントグリルやテールランプなどを変えて、少しでもそのメーカー・ブランドらしさをアピールしようという努力が見られるのですが、D:2とソリオの違いは前後のメーカーバッジだけという手抜きぶりです。
また、「デリカ」という名称は、代々ワゴン車でありながら中身は本格的四輪駆動車という車に付けられてきた名前なのに(現行D:5は違いますが…)、他社OEMでなおかつ軽自動車ベース、その上メーカーのバッジが違うだけのこの車に安易にデリカの名前を与えるのは、三菱ファンはどう感じているんでしょうか?せめてもう少し三菱独自のエクステリアにすればよかったのに…
・軽なのに普通車のデメリットも兼ね備えているような印象がある
全長・全幅がスイフトやフィットなど通常のコンパクトカーよりも小さいにも関わらず、室内空間が圧倒的に広いのは、ベース車であるパレットのパッケージングの優秀さだと思うのですが、裏を返せば幅の狭ささえ我慢すれば別に軽でいいじゃんということになります。
ボディサイズとエンジン排気量以外はほぼ軽という車にも関わらず、高速料金や税金は普通車で、私が住んでいるような田舎であれば、軽には不要な車庫証明を取得しなければならないなど、軽なのに普通車のデメリットを持っているように思えてしまいます。
・重い、というか渋いステアフィール
電動パワステのセッティングの問題か、ステアフィールが重いというよりも妙にフリクションが大きくて渋い感じです。軽のステアリング機構そのままでタイヤが太くなったりトレッドが拡がっている弊害なんでしょうか?
・ちょっと小さいシート
前席背もたれを倒すと後席とフルフラットになるのは良いのですが、フルフラットにしようとしたためか前席背もたれがやや小さく、軽っぽさ丸だしです。ヘッドレストを最上端まで伸ばしても、身長175cmの私の適切な位置(ヘッドレストの中心が耳の高さに来る)になりません。普段、コンパクトカーなのにたっぷりした大きさのシートのスイフトに乗っているだけに、ちょっと気になります。
それから、最近のスズキの車に多いのですが、シート表皮の素材がツルツルと滑りやすくて、運転しているうちにお尻が前にずれてくるのも困りものです。
・違和感のあるCVTの制御
パレットやワゴンR、スイフトなど最新スズキ車に採用されている副変速機付きの新型CVTがこの車にも採用されていますが、このCVTはゼロ発進時にアクセルを踏み込むと一瞬息つきのようなタイムラグがあるのが気になります。
・リヤシートの背もたれはもう少し倒れた方が…
リヤシートのリクライニング角度はかなり大きいのですが、最も倒した状態でもまだ余裕があります。車中泊や災害時の避難のことを考えると、もう少し倒れてフラットに近くなってくれた方がよりよいと思います。
総評
一応「新車試乗記 三菱編」のカテゴリーに入れた今回のデリカD:2試乗記ですが、何から何までスズキソリオなので、三菱のカテゴリーに入れるのは迷いがありました(笑)
車自体の出来は、ベースとなったスズキパレットの広大な室内空間と空間効率の高さ、質感の高さを受け継いでソツなくまとまっています。なおかつ、パレットではいかにも苦しかった動力性能も、ソリオでは車重相応の1200ccエンジンで、軽自動車よりもはるかに余裕のある走りになりました。
このようにハード自体には不満の少ない車だと思うのですが、それ以外の部分、特に「スズキ ソリオ」としてでなく、「三菱 デリカD:2」としてはやや疑問な点があります。
まず名称の「D:2」ですが、本家デリカD:5の「D:5」ってデリカの5代目という意味だったはずですが、なんでこの車が「D:2」になるんでしょうか?世代と車格がいつの間にかごっちゃになってますね。
それから本文にも書きましたが、あまりに安直にソリオそのままという外観もいかがなものかという感じです。
三菱のコンパクトハイトワゴンと言えば、2002年まで販売されていた
ミラージュ ディンゴが思い浮かびます。ディンゴは広い室内、余裕のあるシャシー性能による安定感のある走り、視界の良さなど、三菱らしい真面目なコンパクトカーでした(外観はブサイクでしたがww)。これだけのコンパクトカーを作る能力がありながら、安易にOEM車に頼ってしまうのは残念です。デリカスターワゴンやスペースギア、パジェロがバンバン売れてた頃の三菱にはスズキからOEM車を供給してもらって、それをそのまま売るなんてチャンチャラおかしいってとこだったのでしょうが、今や完全に立場が逆転しています。正に諸行無常・盛者必衰ですね…
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Posted at 2011/04/30 22:34:30 | |
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新車試乗記 三菱編 | 日記