今年の春にエンドレスからMX72プラスというパッドが発売されたんですが、
名前を見ればお分かりだと思いますが超ド定番なMX72の上位グレードという位置づけのようです。
以前にもMX72の上位グレードとしてMXRSというパッドが発売されてましたが、
コレが上位グレードと言っときながら、そもそもMX72に似てないという驚きの仕様だったので、
評判はあまり芳しくなかったようでMX72プラス発売に伴ってひっそりと廃番になりました。
今度こそ本当の本当にMX72の上位グレードだよとの触れ込みですので、
特に現MX72ユーザーを中心に注目度は高いんじゃないかと思います。
って訳で、早速MX72プラスを入手して試してみました。
実はこの件に関するブログを書くのは3回目になります。
結論から言うとMX72とMX72プラスはとっても似てるんですが、
似てるが故に重箱の隅を突く感じになって書くのが難しい。
微に入り細に入る話を書き出すと、どうしても話が長くなりがちで、
前2回とも文字数制限に引っ掛かっちゃいました(笑)
細かい事を書いていくとまた長くなりそうなんで、
っていうか、元々長文の私が長いと言うんだから本当の本当に長いんで、
大幅に端折ってMX72との違いを書いていきますよ。
また、今回の実験にあたって極力事前情報は入れないようにしてみました。
メーカーの人と話もしてませんし、他の人のレビュー等も読んでません。
事前に知ってるのは、
・MX72の特性はそのままに熱ダレを遅らせたとの謳い文句
・作動温度領域はMX72が50~700度、MX72プラスは50~750度
・摩擦係数はMX72が0.37~0.47、MX72プラスは0.39~0.47
という情報だけで、後は完全に個人の主観に基づいて書いてます。
従って的外れな事を言ったりするかもしれませんが、
こんな風に感じちゃった奴が居るよくらいに思って頂ければ宜しいかと思います。
さて、ここまでで既に長くなっちゃってるんで(笑)、
早速MX72を外してMX72プラスを着け、当たりを着けたら実験してみます。
外したMX72を見ると7部山以上残ってるので特に熱ダレしやすくはなってません。
比較実験を行うには非常に良い状態じゃないでしょうか。
使い切ったMX72と新品のMX72プラスを比較するんじゃフェアじゃないですもんね。
なお実験は攻略度の高い自宅敷地内の裏山で行ってます。
自宅敷地内の裏山なら、もはやノリで乗り方が違っちゃうような事も起こりませんので、
使い方を揃えられるのでこれもパッドの違いだけを抽出しやすいと思います。
また、外したMX72付属の鳴き止めシムを見ると分かりますが、
ゴム成分が熱で溶けて流れ出し炭化してます。
つまり作動温度領域の上限の辺りを使って実験しています。
まぁ、そこに至るまでは普通に街乗りもしてますので、
作動温度領域のほぼ全域で試せてるんじゃないでしょうか。
って訳で早速走り出しますが、最初の一発目の効きが甘いです。
MX72プラスもMX72と同じ50度から効くと書いてありますが、
それ以下の温度では若干効きが悪いみたいです。
まぁ、一発目のブレーキングで作動温度領域に入るので、あまり問題はありませんが。
また、効きそのものはMX72とそんなに変わりませんがバイト感が若干薄いです。
要するにMX72と比べると若干食い付き感が薄く滑りながら効いてるような感触な訳ですが、
これは次の話にも関係すると思われますので纏めて後述します。
で、肝心な高温時の熱ダレに関しては明らかに遅くなってます。
この領域での50度の違いは結構大きいですよ。
自宅敷地内の裏山を走り始めて今年で26年になりますが、
完全に攻略してるコースでも死ぬ気で頑張らないと違いを試せません。
最近通ってる自宅敷地内の庭先じゃなく敢えて自宅敷地内の裏山で実験したのも、
攻略度の低いコースじゃブレーキを正しくやっつけられない可能性が高いからです。
作動温度領域を使い切るまでイジメなきゃ実験の意味ないですからね。
で、MX72プラスは単純に耐熱温度が上がったというだけじゃなく、
そこまで温度を上げた時のペダルの感触に大きな違いがあります。
これは前々からMX72の数少ない欠点のひとつだと思ってたんですが、
MX72は作動温度領域の上限に近いところで使うと偏摩耗が起こります。
MX72は若干セルフサーボ(自己倍力作用)が強いようで、温度が上がって摩擦係数が高くなると、
パッドとローターの接触面の入り口側がセルフサーボによって食い込んで偏摩耗が起きます。
実はブレーキパッドはどれも多かれ少なかれセルフサーボによる偏摩耗はあって、
4ポットのキャリパーは入り口側のピストン径を小さくして、
バランス良くパッドが減るようにしてあったりするんですが、
VABのブレンボ(GRB/GVBや、恐らくGDBやエボ等基本的に同じキャリパーを使う車も)に、
MX72を入れて作動温度領域の上限あたりを使うと、
ピストン径で補正しきれなくなって偏摩耗が起きるものと思われます。
で、偏摩耗が起きるとタッチがユルくなるんですよ…
フルードに軽くエアを噛んだのと同じようなタッチになるんですが、
フルードにエアを食ったんならエア抜きすれば元に戻りますが、
偏摩耗の場合は暫く街乗りしてある程度パッドが減らないと元に戻りません。
MX72プラスはセルフサーボを弱めて偏摩耗を抑制し、
ただセルフサーボを弱めただけじゃ高温域以外は効かなくなっちゃいますから、
低温時の摩擦係数を上げて効きを同等に戻してるんじゃないでしょうか。
なので低温側の摩擦係数は上がってますが特に効くようにはなってませんし、
これがバイト感が薄く滑りながら効いてるような感触の原因なんじゃないかと思います。
つまりMX72プラスという名前ですがMX72になにかをチョイ足しした程度じゃなく、
MX72に特性を似せただけで中身は全然別物のような気がします。
で、私なんかの場合は、ちょっと頑張るとこの作動温度領域の上限に踏み込んじゃうんで、
しょっちゅう偏摩耗を起こすのでMX72プラスは割と良いなと思うんですが、
結構な人数の走る系の人と付き合いがあるつもりなんですけど、
他にMX72プラスの方が合ってそうな人が殆ど思い当たらないんですよね…
なにしろ良くなってるのは高温特性だけで、それ以外の領域は僅かながらも悪くなってるんで、
作動温度領域の上限あたりを日常的に使ってないと旨みがないというか、
悪いところだけを使い続ける事になるので、お勧めできる人が極端に限られるんです。
そもそもMX72がかなり良いんで、作動温度領域の上限を使うのが大変なんですよ。
かなり攻略度が高くないとその領域を使えないんです。
自宅敷地内の庭先なんかでも月に数回来る程度の人じゃそこまで攻略できないです。
週に数回通うくらいじゃないと無理でしょうね。
サーキットなんかでも東は本庄とかもてぎ、西は岡国みたいなブレーキにキツいコースで、
なおかつそれなりに攻略度が高い人じゃないと旨みは少ないんじゃないでしょうか。
たまにはサーキットでも走ってみようかなという感じの人ならMX72で充分だと思います。
本当にメーカーの謳い文句のように高温特性だけプラスされて、
他の領域はMX72と全く変わらないなら他の人にもお薦めしやすいんですけど、
高温特性と引き換えに普段使いの部分が僅かながらも悪くなってるんで、
本当に高温特性が必要な人にしかお薦めできないんですよね。
あまりにも用途が限定されすぎてるんで、これも短命に終わりそうな気配が今からしてます(笑)