
この記事は、
山へチーバくんを探しに(^^♪について書いています。
千葉県と神奈川県から東京湾を挟んでパッシングしたらお互いを確認する事はできるんだろうか?
それは某巨大掲示板での何気ない一言から始まった。
例えばこれが千葉港と川崎港であればまず無理だろう。
しかし最短距離の場所を選べば或いは可能かもしれない。
実際のところどうなんだろう?
かくして馬鹿馬鹿しくも壮大な実験は始まった。
作戦名は「東京湾ピカピカ大作戦」
ちょっと痛いネーミングではあるが、
元々が馬鹿馬鹿しい実験だし、まぁこんなもんだろう。
そんな訳でまずは場所の選定だが、
最短距離を結ぶとなると千葉県側で最初に思い付くのは富津岬。
となると対岸は横須賀辺りになるが、
条件の良さそうな所にあるのはアメリカ軍の基地か日産の工場…
どちらもこんな実験をする為に場所を貸してはくれないだろう。
となると観音崎か八景島の辺りが妥当だろうか。
しかし神奈川側の該当地域の現地調査を重ねてみるも、
千葉側に向けて車のライトを照射するのに丁度良い場所が見つからない。
富津岬は諦め更に捜索範囲を広げて現地調査をした結果、
千葉県の金谷付近、神奈川県の剣崎付近が妥当だという事になった。
更に候補地を絞っていく過程で、ひとつの壁にぶち当たった。
地球は丸いのである。
そんな事お前に言われなくても知ってるよと思うかもしれないが、
普段それを意識する事はあまりない。
我々は当初、海岸線ギリギリの最短距離を結ぶ事を考えていたが、
金谷付近と剣崎付近の13km程離れた場所では、
お互いが同じ高さに立ったとしても、
地球の丸さのせいで相手が40cm程低い位置に見えるのである。
つまりお互いが海面高度ギリギリに車を止めてしまうと、
波の高さによってはお互いのライトが見えなくなってしまう可能性がある事を意味する。
当然、両地点の間を船が通過したらライトの光は遮られてしまうだろう。
そんな事を踏まえて神奈川県側の場所を高台に移し選定をやり直してみたところ、
千葉県側は金谷にある料理屋さん
「かなや」の駐車場、
神奈川県側は三浦市南下浦町の路上が距離こそ14kmに伸びるが条件的に良さそうだ。
用地が決まれば話は早い。
まずはかなやさんに赴き、実験の概要を話し、
夜間に敷地内に進入する許可を取りつける。
いい歳こいてなに馬鹿な事やってんだ?という冷たい視線を浴びせられつつ、
夜間は駐車場を解放してるので構わないですよという言葉を頂く。
神奈川県側は所有者を特定できなかったが、
夜間はそもそもの交通量が非常に少ない場所なので、
交通整理する人員を立たせれば問題ないだろう。
これで用地の確保はできた。
あとは実験をするのみと思ったところで一つの問題が持ち上がった。
金谷と三浦の間にある浦賀水道は漁船や貨物船、タンカーはもとより、
イージス艦や潜水艦、果ては空母まで行き交う国内でも有数の超過密航路である。
そんな所に航路標識と見紛うライトを照射しても良いものなのか…
こんな事が原因で海難事故が起こったらそれこそ洒落にならないだろう。
そんな訳で浦賀水道を管理する第三管区海上保安本部に問い合わせてみたところ、
そもそも海上保安本部が管理するのは航路であって、航路外(つまり地上)は管轄外なので、
やっていいともやっちゃ駄目とも言う権限はないが、
車のライトごときで進路を誤っちゃうようなアレな船長も居ないでしょうとの事。
これで全ての条件は整った。
ところが、ここで某巨大掲示板上で横槍が入り続行は不可能な状態に陥った。
条件は全て整ったにも関わらず実行できないのもなんなので、
以降は私の仲間内で続行する事を決意する。
早速友人達に話してみると20名以上の参加者が集まった。
土木関係の仕事をしてる友人を連れて何度か両地点に赴き、
両地点の海抜や勾配を測量し、対岸のポイントの正確な方位と仰角を割り出す。
この際、コンパスが指す磁北と地図が示す北との微妙なズレの補整も行う。
また車両側でも補正をする必要がある。
通常ヘッドライトの光軸は10m先で10cmほど下がるように調整されている。
仮に水平な場所にホイールベースが2.5mの車を止めた場合、
前輪の高さを2.5cmほど上げてやらないと水平には照射できない。
また千葉側、神奈川側の両地点では高度差が40mほどあるので、
前輪を千葉側では0.7cm上げ、神奈川側では0.7cm下げてやらなければならない。
これはあくまでも水平な場所に車を止めた場合で、
実際には路面の傾斜を補正してやる必要がある。
具体的には測量したデータを元に電話帳やマンガなどの厚さを調整して前輪の下に敷く。
これで車両側の準備も整った。
そしてついに実行する時が来た。
天候は快晴、霞もなし、風も殆どない。
全車所定のセッティングを済ませ、実行予定時刻の午前零時を待つ。
漆黒の闇の駐車場で10台もの車が息を潜めてじっと待つ姿は少し異様な雰囲気だ。
そして午前零時。
ウィンカーレバーをカチカチ操作しながら対岸の明かりを探す。
見えた!
周りでも一斉に歓声が上がった。
対岸はどうだろう?
向こうからもこちらのライトの点滅は見えてるのか?
急いで神奈川側の現場監督に電話する。
どうやら神奈川側でも見えたようだ。
電話の向こうでも大騒ぎになってる。
さあ、さっさと撤収して合流地点の海ほたるを目指そう。
神奈川組の奴等が待ってる。