
20年近く乗っていたシトロエン初代C5セダン2.0L、実際に乗ってみて走ってみて使ってみてどうだったのか。当時の記憶を掘り起こしてみます。
シトロエン初代C5セダン前期型は、初めて購入した普通乗用車でした。それまでに乗っていた車がホンダ・ビートやトゥデイでしたので、その感動は試乗した時から覚えています。
ハイドロラクティブⅢ+の乗り心地よりも、まずシートの良さに感動しました。ファブリックシートですが、ソファのような座り心地です。柔らかいイメージでサイドサポートも弱そうな感じを受けますが、これが意外にしっかりと体をホールドしています。通常、シートに座ると背中のどこかに隙間ができるのですが、これがない。肩からお尻までまんべんなくシートが触れます。シート下面も十分以上の厚みがあって、これが路面からの細かな振動を吸収しています。
ファブリックですが、背中もお尻も蒸れることはありませんでした。初代C5前期型では13年乗りましたが、シートもほとんどヘタることがありませんでした。
どれだけ連続走行しようが腰痛が出たことないシートです。
現在、C5エアクロスに乗っていますが個人的には初代C5のシートの方が好みです。
ハイドロラクティブⅢ+の乗り心地。乗り始めたばかりは路面からの当たりが柔らかい程度でした。「え、ハイドロってこんなもの?」という感じです。ドンブラコという、ゆっくり前後に揺れる船のような乗り心地は市街地ではほとんど分かりません。ただ当たりが柔らかいサスペンションでした。
ところが、高速を走ると一気にこのドンブラコが出ます。前方の車が路面のうねりで激しく上下しても、こちらはそれがゆっくりと上下に揺れて収まっていきます。
こういう動きをすると直進安定性はどうか?と思いますが、サーキットで200km/hで走ってもステアリングはブレることはありませんでした。というかこの速度域でも片手で十分ホールドできるのが驚きました。
4速ATのAL4はワイドギアですが、高速域ではこれが良く出来ていまして130㎞/hからの加速が2.0L・NAエンジンとは思えないくらいの速さでした。某雑誌では「シトロエンは昔から100㎞/hからの加速が、まるで別のエンジンになったような感覚で速い。」と書かれていましたが、確かにその通りでした。
ですので、通常の高速道路では「全然っ楽!」です。車体形状もあるのでしょうが風切り音も気になりません。90~100㎞/hで走るのが一番ドンブラコしています。
とにかく高速道路では疲れない車でした。疲れないので休憩も最低限で一気に長距離を走り抜けてしまいます。義父が茨城県にいて入院していた時は、毎週浜松~茨城間を往復していましたが、片道の休憩は2回程度(トイレと食事)でした。
疲れないので、遠出が苦ではなくなり「往復300km程度は近距離。」という概念が定着しました。
初代C5セダン前期型は高速ではイキイキしているのですが、峠ではちょっと無図がります。ギア比の問題です。1速では回りすぎ、2速ではちょっと回転足りないということです。2-3速でも同様でした。なかなか適切なギア選択が難しく、結局マニュアルモードで2速ホールドが一番速かったです。
コーナーリングは、ハイドロラクティブⅢ+のためスポーツモードにするとサスペンションが硬くなり、狙ったラインをちゃんとトレースできます。ロールも少なくなります。これを解除するとワンテンポ遅れた動きになります。
ダートはどうなのか?

FBMのジムカーナに何回か参加しました。WebCGにまだ私のジムカーナでの写真が残っています。
ダートでもこのハイドロラクティブⅢ+の乗り心地とコンピュータの車高調整機能によって適切なロードクリアランスで終始安定して走ることができます。車はロールしていないんですが、中の人間がロールします。
なお、奥さん。この初代C5前期型で、FBMジムカーナの女性部門に2回参加し1位と2位をもぎ取ってきています。初代C5はサイドブレーキがフロントに効くため、「サイドターンが出来ない!」と文句言っていました。
ハイドロで攻めるのは無理がある?と思いますが、DS21はモンテカルロラリーに参加しています。DS21はハイドロニューマチックですが、63年のモンテカルロラリーで総合2位となっています。ポルシェやアルピーヌA110と互角以上の戦いをしました。道が悪くなればなるほどDS21は速かったといわれています。
このハイドロラクティブⅢも実際攻めてみると、ちゃんと攻めれるサスペンションです。油圧による姿勢安定と常に安定したタイヤの接地があります。
ダート走行の写真を見ると、通常の車ではおかしい挙動をしています。ハイドロのセッティングはノーマルモードです。写真は左180度ターンを終え次の左90度コーナーに入る旋回中なのですが、通常は車体は右にロールし右サスペンションの前後は縮むのが普通です。ですがC5の車体は水平に近い状態でロール量が少なく、右フロントは伸びており、右リアは縮んでいるように見えます。これが油圧制御による姿勢安定です。常にタイヤが路面を離さないのがハイドロの特徴です。
インリフトが構造上起きにくいので、安定して旋回が出来ます。ただ、中の人間にはGが普通にかかりますが。
雪道では。
スタッドレスタイヤであれば、余程の豪雪でなければどこでも走れます。スノーモードがあるので楽です。スノーモードではアクセルレスポンスが緩慢になるので、発進時でもタイヤがスリップすることなくスムーズに発進します。
冠水した道路にて。
愛知に出かけた際、都市部でゲリラ豪雨にあいました。すり鉢状の交差点で水がどんどん溜まっていました。バンパー下まで雨水が溜まっている状態です。
初代C5は10km/h以下ならメンテナンスモードとして車高が最大の+12cm上がった状態で走ることができます。車内の車高調整ボタンを押して最大車高にするだけです。これで冠水路を切り抜けました。
ハイドロならではのテクニックです。ハイドロ乗りの諸先輩方から「こういうテクニックがある。」というのは聞いていましたが、実践するとは思ってもいませんでした。
積載量も多く、当時のDセグメントセダンとしては世界最大のトランク容量です。子供用ベッドから自転車まで、ハッチバックでリアタイヤの張り出しがないトランク形状のおかげで問題なく載せることができました。荷物でバックミラーが見えなくてもバックソナーのおかげで後退時にも安全に止まれました。
峠ではちょっと厳しいというところはあるものの、それ以外に全く不満がなく13万キロを走りました。
初代C5後期型について。

ビックマイナーチェンジをした初代C5後期型、車重が若干増えましたが、エンジンが可変バルブタイミングとなり6馬力、トルクは1.0kgmアップしました。
ハイドロラクティブⅢ+からハイドロラクティブⅢにダウングレードしています。
基本的には前期型と同じです。全長がやや伸び、ガラスの2重化やボディ補強が行われています。
ハイドロラクティブⅢなのでⅢ+よりも市街地からドンブラコ状態でした。これは油圧を制御するスフィアという部品の数が違うためです。Ⅲ+は6つ、Ⅲは4つです。4つの方が油圧パイプが長くなるため、よりゆったりとした乗り心地になります。この市街地でもドンブラコの揺れに「本来のハイドロってこういう乗り心地だったんだ。」と感動しました。
峠にて。
一番違ったのが峠での走りです。AL4は前期・後期ともギア比は同じですが、明らかに後期型の方が速い。後期型は6馬力アップし車重も90kg増加しています。パワーウェイトレシオはどちらも10です。
後期型ではⅢ+であったスポーツモードは無いのですが、過度な入力が入るとサスが硬くなります。これが良い具合でして荷重移動がやりやすく上手くフロントに荷重がかかりコーナリングしていきます。
AL4をスポーツモードにすれば、可変バルブタイミングのおかげでエンジンが高回転まできれい回るため、前期型であった1速では回りすぎ2速では回転が足りないということがありません。前期型では若干もたついていましたが、後期型はアクセルを踏むと踏み込んだ量に応じてキレイにエンジン回転が上昇します。
コーナーリングの旋回速度が速く車体も安定しており、4輪は路面をしっかり捉えているので、前期型よりも速かったです。
初代C5後期型、高知県にいた義母が入院した時、2週に1度、浜松から高知を1泊2日で往復していました。走行距離850㎞ほどを無給油でいけました。前期型よりも静粛性があがっているためさらに疲れない。高知までも片道3回程度の休憩で片道6時間の運転でオートクルーズONにして深夜に100㎞/h巡航していたらいつの間にか高知県に着いていたという感じです。
ハイドロラクティブⅢのゆったりした乗り心地と良いシートのおかげでした。
後期型は全長が伸びた分、ちょっと狭い道での取り回しは不自由しましたが、前後バックソナーのおかげでぶつけることはありませんでした。
後期型は7年ほど乗りました。
初代C5のほどほどの車体の大きさで乗り心地がよく疲れないシート。日常で困ることがなかった積載性。前後のバックソナーでの見えない部分のカバー、高速道路での一定巡行での快適性と安定性。
あまりに気に入ってしまい前期・後期と同じ初代C5に20年近く乗り続けることになりました。
現在C5エアクロスに乗っていますが、初代C5はまだまだ十分に現役で通じると思います。