
先日整備手帳で、
ミッションオイルを試作してバスに入れた話を書きましたが、その中身は簡単に言えば
自分とこのエンジンオイルに二硫化タングステンを少し足したような物。
結果としては(車重4,800kgのマイクロバスでも)一切問題なく機能しているのですが、そうは言っても大体の人は、
「ミッションにエンジンオイル入れたのかよ。」
って思うと思う。
で、タイトルの回収。
「車のトランスミッションにエンジンオイルを使ってもいいの?」
これを"一般論ベース"で説明してみます。
(私の作ったやつは一応検討して内容考えたからね)
答え:
入れても機能はしますが、フィーリングは悪いでしょうし、ギアの摩耗を早めてしまう恐れが強いです。
それは以下2つの理由です。
● 極圧剤の有無
ギアオイルを自分で抜いたことがある人なら分かる、あの鼻につく強烈な臭い。
あれは極圧剤に含まれる硫黄分の臭いです。
エンジンオイルではそんな臭いがしない事でわかるように、ギアオイルにはそれだけ硫黄がたっぷりと含まれています。
硫黄は極圧性能を担う添加物質。歯車の接触部など、強烈な圧力が加わる部分で硫化鉄へと変化し、膜を形成することで金属を摩耗から防ぎます。
※ 余談ですが、ギアオイルにはグレードにGL-4とGL-5がありますが、EP剤(硫黄の含有量)の違いです。
トランスミッションにはGL-4、ディファレンシャルにはGL-5が指定されていて、GL-5の方が硫黄分多めです。
もしトランスミッションにGL-5を使うと、その強い硫黄分でシンクロギアの腐食と摩耗を早めてしまいます。(シンクロギアは鉄製ではない)
「数字が大きいほうが最新版で高品質」という意味ではないので、勘違いしないようにしましょう。
● 潤滑性の違い
エンジンオイルはとにかくスムーズであるに越したことはありませんがギアオイルは別です。
トランスミッションはシンクロギアで回転を調節して変速切り替えをスムーズに行いますが、もし潤滑性が高すぎるオイルをミッションに入れた場合、シフトチェンジの際にシンクロギアが滑り過ぎて中々ギアが入らない可能性があります。

↑シンクロギアは黄銅等、鉄よりも柔らかい金属でできていて腐食に弱いので、硫黄や塩素系の添加剤には気をつけなければならない
難しい話ですが、トランスミッションオイルは滑りすぎても良くないし、滑らなくてももちろん困るしで、適切な摩擦具合があるのです。
第2幕「昔のMINIは?」
ちょっと車に詳しい中年~初老の年齢層であれば当然こういう疑問も出てきますよね?
なんでMINIに限ってエンジンオイルで良しとしているのか?
昔のほうが今よりもオイルの質が低いでしょうに。
ギアオイルをブレンドとかしないの?
私も疑問に思ってちょっと調べてみました。
Castrol Classic Engine Oils
https://www.classicoils.co.uk/engine
MINIのオイルと言えばカストロールのXL。
MSDSを見ても特に特殊な記述は見当たらなかったけど、PDSを見たら「触媒の付いた車には使わないで」って書いてあった。
触媒車に使っちゃいけないと言うくらいにりんや硫黄(いずれも極圧性能を高めるが触媒への攻撃性あり)が多目なのかもしれないね。
ちなみに、XLではなくGTXだとはっきりと「ZDDP使って保護してますよ」って書いてあるけど、どちらにしてもMINI専用のオイルとは謳ってない。
結論としては、MINIの場合はリンや硫黄が多目なオイルを使うことと、そもそも固い粘度を使うことでオイルそのものの油性でカバーしているようですね。
Posted at 2025/03/19 16:17:11 | |
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