
よく聞きますよね。エンジンが摩耗するのは巡航時ではなく始動時だと。
しばらく長い間放置していたエンジンであれば再始動時には確かに油膜切れしているような気がしますが、毎日乗っている車でも夜間の間にすっかりオイルが落ち切って全部油膜がなくなってしまうのかな?
そして、エステルオイルのうたい文句でよく「ドライスタートからエンジンを守る」って聞くけど、一晩中金属表面にくっ付いていてくれてるのかな?
これまた、添加剤中のモリブデンとかZnDTPとかで化学反応で作られた被膜は、エンジン止めた後も次の日まで残ってくれてないのかな?
気になる気になる。
金属面に残ったオイルはいずれ重力で落ちる。当たり前よね。
一晩と言わず、粘度が柔らかいオイルほど落ちるのも早い。
ただ、始動時のオイル供給は粘度が柔らかいほど早く、有利。
低粘度オイルを用いる現代のエンジンでは、頑丈な油膜保護を身上とした従来(旧来)の考え方よりは、常に飽和的な連続供給による物量作戦で保護しています。
ハイブリッド車に代表されるエンジンストップ機能から考えても、油温が低い状態でも素早く供給するためには低粘度である必要性がよく分かります。

オイルの固さによる供給速度の比較(Geminiによる画像生成)
↑なんで燃焼室やらウォータージャケットやらにオイルぶち込んでるねん。
有極性ベースオイル(エステル,アルキルナフタレン)による金属吸着
エステルやアルキルナフタレンは金属に吸着する『極性』と呼ばれる性質を持っているため、全くくっ付かない無極性オイル(VHVI,PAO等)と比べるとドライスタート時においてとても大きなアドバンテージがあります。

有極性ベースオイルによる金属面への吸着メカニズム(Geminiによる画像生成)
ではエステルやアルキルナフタレンといった有極性ベースオイルは、どれくらいの時間金属面にくっ付いていてくれるのでしょうか?
とりあえず表面上のオイル(バルクオイル)は一晩で落ちたとしても、分子レベルで吸着したオイルはかるく数日は保持してくれるようですので、日常使用している車であれば心配なく保護してくれそうです。
ただ、有極性ベースオイルによるドライスタート保護の本質は、「金属面に残る」ことよりもどちらかと言えば「オイルが循環し始めた瞬間に素早く再吸着すること」です。
この速さは外部からの反応を必要としない物理的な吸着ゆえの利点ですね。
*
ただ一方で、極性を持つベースオイルは常用域で金属面に先にくっ付いているため、負荷が掛かった際に添加剤が保護膜を作ろうとするのを阻害してしまう側面もあります。
まぁどちらにしても保護は保護ですが、負荷領域の違いには注意が必要ですね。
またエステルに関しては加水分解しやすい宿命がありますので、しばらく走行して「フィーリングが落ちたな」と感じたら、それ以降はドライスタート保護はあまり信用しない方が良いかもしれません。
(※アルキルナフタレンは極性を持ちながらも加水分解しません)
添加剤成分(モリブデン,ZDDP等)による保護被膜
では逆(?)に、走行中に添加剤成分(モリブデンやタングステンやZDDPなど)によってできた保護膜はどうなのか。
こっちはエステルのような物理吸着ではなく化学反応によって形成された保護被膜(トライボフィルム)ですので化学的に強く安定しています。
当然、一晩そこらで剥がれるものではないのでちゃんとドライスタートから保護してくれます。

添加剤成分による金属保護メカニズム(Geminiによる画像生成)
こうして考えるとドライスタート時の摩耗って言うほどシビアな話でもないのかな…。
それとも、それでもやっぱり削れるものなのかな…。
Posted at 2026/04/02 18:57:46 | |
トラックバック(0) |
オイル | クルマ