前回のブログでオイルのアニリン点とシールゴム収縮・膨潤の関係性を書きましたが、その後掘り下げていたらまた新たな着眼を得られたので書いてみようと思います。
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┃相溶性が高いのは鉱物油の専売特許じゃない
エンジンオイルはベースオイルと添加剤の組み合わせで成り立っていますが、当然これらがきちんと混ざっていないと製品として成立しません。
オイルのSDSを見ると分かりますが、100%化学合成油であっても鉱物油が数%入っているのは、添加材成分がよく混ざるよう溶剤として使っているからです。
例:シェル ヒリックス ウルトラ
鉱物油はそれだけ添加材との相溶性に優れているのです。
一方で、添加材メーカーの商品説明を読んでいると時々PAOとの相溶性△or×みたいな事を見かけることもあります。
PAOは一般に添加剤と混ざりにくい性質があるためです。
なので添加材メーカーはその辺をクリアして「PAOともよく混ざります」みたいにアピールしたりすることもあります。
ではエステルは?
これも特に問題視されることはありません。添加剤とは非常によく混ざります。
ただ高コストなため、一般には添加剤の溶剤として使われることは稀です。
じゃあ一般には?
ISO VG32とかISO VG46とかこういう記述があるのは鉱物油のパターンです。
まぁ業者じゃない限りこの辺の記述を見ることも興味を持つこともないですね。気にしないでください。
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┃極性とアニリン点の共通点
では先ほどの特徴をまとめてみましょう。
鉱物油→よく混ざる
PAO→混ざりにくい
エステル→非常によく混ざる
ということでした。
ここで、前回のブログでまとめたアニリン点の特徴も加えて並べてみましょう。
ベースオイル アニリン点 相溶性
鉱物油 中位 良
PAO 高い 悪
エステル 低い 優
GTL 高い 悪
見えてきましたね。
アニリン点の低さは相溶性の高さと一致します。
加えて言えば、極性の強さもアニリン点の低さと比例します。
こんな一致(傾向)があったとはね。
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┃エステルの極性の高さには注意
ところで、某オイルさんのブログによればエステルは添加材成分を吸着して沈殿することがあるとのことです。
たしかにエステルは相溶性が高いですが、極性が強すぎると逆に引き寄せすぎて混ざるどころか合体してしまう副作用が発生します。
そう、この話は「エステルだから」と一括りで語る話ではなく、「"極性の強い"エステル」の場合の話です。主にジエステルでしょうか。
また同ブログによる、「アルキルナフタレンは添加剤の相溶性を助ける」という話も粘度によって高低はあり、粘度の低いアルキルナフタレンは40℃程度のアニリン点で優れた相溶性を見せるのに対し、SAE40番相当の固さのアルキルナフタレンは90℃程度ですので、おおむね鉱物油と同等とみなすことができます。
結論的には、添加剤ときちんと混ざるにはほどほどの極性(低アニリン点)を持ったベースオイルが一番良いよねって話で、
鉱物油を除いてそれに該当する化学合成油は、POE(ポリオールエステル)やアルキルナフタレンあたりのグループV基油ということです。
Posted at 2025/09/10 22:40:59 | |
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