
日本のオイル規格と比べて欧州のACEAでは全体的に厳し目な印象がありますが、その中で塩基価は特に目を引く数値の一つです。
酸価とは文字通り酸性の値。
塩基価はその逆で、アルカリ性の値を指します。
ではなぜオイルの塩基価の最低基準を定めているのか。
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燃料は爆発(燃焼)した際に窒素酸化物(NOx)を生み出すのですが、これがおそろしく酸性を示します。
その燃焼ガスは100%排気されるわけではなく、ピストンリングを吹き抜けてクランクケースに入り込みます。
これをブローバイガスと言います。
ブローバイガスはオイルを酸化させる為、それに耐えられるようにオイルにはあらかじめアルカリ性を持たせておく必要があります。
それを「塩基価」として評価しているのです。
つまり塩基価が高ければ高いほど酸性に対する耐久力が高いことを意味するので、長寿命と言えます。
でも市販の高性能オイルを見渡しても高くて12程度。
それ以上に数値の高いオイルは(一部ディーゼルオイルを除いて)なかなか見当たりません。
ちなみに塩基価を上げるのは非常に簡単な話で、過塩基性清浄分散剤(スルホネート等)を入れるだけです。
ただそれだけで塩基価はどこまでも上げられます。
そんな簡単な話で長寿命をアピールできるはずなのに、どのオイルもそこまで極端な塩基価をもたせる事はありません。(マリン用オイルは別ね)
なぜか。
ベースオイルと違って添加剤の組み合わせは、「あちらを立てればこちらが立たずの綱引きの関係」だからです。
清浄分散剤(スルホネート等)の過剰添加によるデメリットとして、
●灰分による燃焼堆積物増加(特にLSPIリスク)
●触媒への悪影響(特にDPF)
●金属表面の膜生成による競合(モリブデンや高極性ベースオイルや極圧剤等)
…と、軽く考えただけでこれらの副作用が挙げられます。
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先程書いたように添加剤は綱引きの関係性なので、開発者としては「できるだけ少ない配合でより高い効果を出したい」と考えます。
塩基価の確保が酸化防止(寿命延伸)を目的とするなら、高塩基価だけでなくとも酸化防止剤もあるし、ブローバイ抑制というアプローチだってあります。
各方面からアプローチを取ることで各添加剤の配合率を小さくでき、競合問題へのリスク分散を図ることができるのです。
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同様の話で粘度指数についても同じことが言えますね。
塩基価みたいに、粘度指数も上げるにはポリマーという素材を入れればいいだけなのですごく簡単な話です。
でも(一般には)極端に上げたりはしない。
なぜか。
色んなデメリットがあるから。
この話は以前のブログ
「粘度指数の捉え方(参考)」でも書きましたが、結論だけまとめると、
●ベースオイルの粘度指数は高いほど優れているが、
●製品としての粘度指数が高すぎるやつは低性能
と思って差し支えないです。
どの世界にも通じることやが…
て事ですね。
表面上の数字だけで捉えたがるスペック厨は卒業しましょう。
Posted at 2025/10/14 21:46:24 | |
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