
日本の売り場で日本生産のオイルばかりを目にしていると、API規格やDL-1,DH-2位にしか目がいかないけど、本当に優れたオイルをオープンな情報の中で選びたければ、外国製品,そして出来ればACEAを取得したものを選ぶことになる。
ACEAはヨーロッパのオイル性能規格だけど、大雑把に言ってしまえばAPI規格の上位互換です。
逆に言えばそれくらい評価項目の質がより厳格。
ACEA規格については、360ルブリゾール.comで随時情報が更新されていますので、英語のページですが興味のある方は情報を漁ってみてください。
https://360.lubrizol.com/
また、最新のACEA規格については下記PDFをご覧ください。
具体的に基準数値が確認できます。
https://360.lubrizol.com/-/media/LZA360/Documents/ACEA-European-Oil-Sequences-2022-v2.pdf
今回のブログでは、ACEA規格における主要な評価項目について解説してみたいと思います。
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★★ 軽荷重エンジン規格 ★★
2021 ACEA Oil Sequences for Light-Duty Engines
ガソリンエンジン…A規格
ディーゼルエンジン…B規格
ディーゼルエンジン(DPF搭載車)…C規格
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√ 粘度について…
ACEAの場合は油温150℃時の粘度について基準が設けられてあります。
HTHSという名称なのでぜひ覚えておいてください。
よりシビア環境での評価値ですので、オイルに対する信頼性が担保されています。
もちろん数値が大きいほど油膜保持性能が高いということになりますが、粘度の低いオイル(0w-20等)では一般的に大きな数値は出せません。
各規格の数値は以下のとおり。
A3/B4 … 3.5以上
C3,C4 … 3.5以上
C2,A5/B5 … 2.9〜3.4
C5,C6 …2.6〜2.8
この数値こそが現実の油膜保持性能と言えます。
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√ SAPSについて…
・硫酸灰(Sulphated Ash)
・リン(Phosphorus)
・硫黄(Sulphur)
この3つを総合してSAPS(サップス)といいます。
これらはエンジンの保護性能やオイルの洗浄分散性に対して有効に働く一方、環境や集塵機(DPF等)にはよろしくないということで、規格毎に各成分の最低値/最大値が定められています。
https://ja.avtotachki.com/sul-fatnaya-zol-nost-masla-na-chto-vliyaet-etot-parametr/
A3/B4やA5/B5規格はHi-SAPSと言って保護性能や洗浄性能が高い傾向にあります。
しかし燃焼で生じる灰が多いことから、DPF装着車のディーゼル車には使用を避けることとされています。
なのでDPF車用のC3やC2規格ではMid-SAPSと言って、A/B規格よりもSAPSを低く制限しています。
ちなみに以前のルノー車では更に低いLow-SAPSのC4規格での指定がありました。
一方で、SAPS(というか硫酸灰)がDPFにもたらす影響は実はそれほどでもなくて、むしろ悪影響の親玉は日本のDL-1,DH-2規格オイルによくある鉱物油(Gr.I)にあり、その蒸発性の高さによるカーボンが原因として支配的だとする説明もあります。
もしそうであればDPF装着車ほど化学合成油(GTLやPAO)を優先して使うべきだし、そもそもSAPSはエンジン保護や清浄性のために必要があって入れているものであって、悪者扱いするのは違うような気がします。
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√ 塩基価について…
(Total Base Number)
エンジンオイルの寿命を測る上でとっても大事な指標で、TBNといいます。(もちろんオイルの寿命を決めるのはこれだけではないけど。)
これはオイルのアルカリ値を示す値で、劣化時の酸性化に対して中和する能力を示します。(オイルの劣化原因の一つは酸化です。)
日本メーカーのオイルではこの数値が公表されていることはあまりないけど、ACEA規格ではこれがしっかりと定められておりますので自ずと目安が付きます。
A3/B4 ... 10.0以上
A5/B5 ... 8.0以上
A7/B7 ... 6.0以上
C2 ... 無指定
C3 ... 6.0以上
C4 ... 6.0以上
C5 ... 6.0以上
C6 ... 4.0以上
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★★ 重荷重エンジン規格 ★★
2021 ACEA Oil Sequences for Heavy-Duty Engines
ディーゼルエンジン…E4,E7規格
ディーゼルエンジン(DPF搭載車)…E8,(E9),E11規格
このE規格は大型車向けの規格ですが、共通してロングライフ性能を重視しているようです。
したがって自動的にTBNも高めに設定されています。
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√ 150℃時粘度(HTHS)
→ 全規格において3.5以上
√ 硫酸灰,りん,硫黄(SAPS)
E4,E7…より高SAPS
E8,E11…低SAPS
√ 塩基価(TBN)
E4 ... 12.0以上
E7 ... 9.0以上
E8 ... 7.0以上
E11 ... 7.0以上
どの項目を見てもA/BおよびC規格の上位互換といった感があります。
E規格を取っている時点でHTHSは3.5以上が約束され、硫酸灰の数値の許容値もA3/B4より更に大きくなっています。
ちなみにACEAの中で最も性能の高いのがE4規格になりますが、現在のところ日本でE4規格のオイルを販売している所は無いようで、手に入りません。
というわけで、最後に一覧表にまとめてみました。
自分でも随時加筆・修正していこうと思いますが、読んでいて間違いや指摘がありましたらコメントでお知らせください。
以上よろしくお願いします。
Posted at 2024/01/23 01:27:21 | |
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