
ジャガーXFに試乗してきました。
今回のマイナーチェンジでエンジンが5リットルに拡大されています。
従来からある3リットルはそのまま残し、4・2リットル自然吸気(NA)エンジンとスーパーチャージャー付がそのまま5リットルに拡大されたんですね。
5リットルNAのXFが385馬力/515Nm、5リットル・スーパーチャージャーのXFRは510馬力(!)/625Nmを発揮するモンスターサルーンです。
なので、どんなに凄い加速をするんだろうとわくわくしながら走り出したのですが、これが肩透かしを食らうほど穏やかでジェントルなクルマに仕上がっていたのでした。
もともとXFというクルマはSタイプの後継として開発されたクルマで、ジャガーの中ではミドルレンジに位置するセダンです。ライバルはメルセデスEクラス、BMW5シリーズ、アウディA6あたりでしょうか。XJシリーズは純然たる高級サルーンで、クルマに乗り込むときもスーツを着用したくなるようない独特の雰囲気を持っています。XFは同じジャガーでもグッとカジュアルなクルマ、GパンとTシャツでも気軽の乗り込めるような敷居の低さがあります。
とはいうものの、ライバルの中に埋没してしまうのを嫌い、位置付けを少し上にアップシフトするのが5リットル化の目的だったのではないかという気がします。
操縦性は、すでに定評のあるところで、モダンなFRサルーンと言えるバランスのいい操縦性をもっています。しなやかな乗り味もことさら猫足のしんなりした動きは出さず、サスペンションをきちんとストロークさせながらも軽く引き締まった感触を残したスポーティな味付けになっています。
XFRはさらに硬め同じ付けで、スポーティな乗り味を全面に出しています。ただしゴツゴツ来るような無作法な乗り心地の悪さはありません。
スポーティなたたずまいと、それを裏切らないバランスのいい走りが身上といったところ。
だからこそ5Lエンジンに興味があったのですが、「トルクを増やし余裕を持たせながら走りを変えない」という意思が感じ取れました。
端的に行ってしまうと明らかに電子制御スロットルの開き方を穏やかにしており、グワッ! と飛び出すような乱暴な所作をさせないようにしつけているんです。
そのため2000回転くらいから強力なトルクを期待してアクセルを深く踏み込んでもクルマはジェントルにスイーッと加速し始めます。
スパーチャージャー付きの方がこの点は少し迫力がありますが、これも手に余るほど暴れるということはありません。500馬力急としては驚くほど穏やかである意味のどかな加速の仕方をします。
その効果でやたらにトラクションコントロールが介入しないんですけど・・・。
ただし、4500回転くらいから上の回転域ではレスポンスも良くパワフル(トルクフル)なフィーリングになります。NAの方はどんなにエンジンをブン回してもぶった曲げるほど速いとは思いませんでしたが、さすがにスーパーチャージャーは迫力があります。
それから、DSC(=ESP)の介入がやたらと早いのもちょっとがっかりなポイントでした。コーナーの立ち上がりで、アクセルをちょっと余計に踏むとDSCによってスロットルが絞られ、ブレーキまで効いてしまいます。
それから、スーパーチャージャーには電子制御LSDが装備されているのですが、これが強く効いたと思った次の瞬間にはスロットルととブレーキの制御が入ってしまい、かなりもどかしく感じました。
DSCの介入は早ければ早いほどクルマの姿勢を乱しにくできるので、つまりはそういうことなのでしょう。
そういうことというのは、つまりXFというクルマのあり方です。
あくまでもスポーツカーではなくスポーティサルーンで、手に汗握りながら攻めるような走り方をするクルマではないということです。
そう考えるとXFのセッティングに納得がいきます。
ていねいなスロットルコントロールを必要とする低速域ではスロットルの応答をスローにして、ギクシャクしないようにしているわけです。
そして繊細なスロットルワークが要求されるグリップの限界に近い領域では、早めにDSCを介入させることでクルマの安定性を保つ。
そういうセッティングになっているのでしょう。
あくまでもジェントルに乗るクルマであるということです。
もっともグリップの限界を超えない範囲で走らせるように意識してコーナリングスピードやアクセル操作をコントロールしてやると、意外なほどの限界スピードの高さを見せてくれます。とくにXFRのパフォーマンスには相当のものがあります。
電子デバイスのついていない素のXF(R)は、限界を超えた先までキッチリ作りこんであるのでしょう。そういうクルマの作り込みをしておきながら、電子デバイスを搭載することで、乱暴な走り方をしても破綻をきたさないようにセットアップされている。そういうことなのだと思います。
ちなみにDSCにはOFFスイッチが付いていましたが、オフにしても完全オフにはならず、また介入タイミングもハッキリと遅くなるというほどの違いはありませんでした。
これはハイパワーなクルマを造るメーカーのひとつの見識ではあります。
もっとアグレッシヴにスポーツドライブを楽しみたいのであれば、それは買うクルマが違うよということなのです。そういう人はXKやXKRがありますよということなのでしょう。
XFに興味をもっている多くの人にとっては満足のいく、そして安心できる超高性能サルーンであるといえます。また安心して人に薦められます。
個人的には、せっかくキッチリ作りこんだ限界領域の性能を覗き見できる余地を残しておいて欲しかったという気がするんですけどね。
Posted at 2009/06/30 14:53:36 | |
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クルマ | 日記