
気がつけば10月も中旬に入ろうとしています。
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今月ボクが何をやっていたのかというと、雑誌のロケと原稿書きで汲々としていたのでした。…いや、まだブログ書いてる暇があったら原稿書け!! って言われそうな状況なんですけど(^_^;)
そんな中、A3スポーツバックに乗ってきました。
上の写真は、ちょっと早めに試乗会場に着そうだったので、真鶴道路を先まで行ったところ、工事で対向車線が大渋滞。あわてて山の中腹を走る裏道に入って行くと、こんな道に出たのでした。
この界隈を頻繁に走る人には良く知られた道なのかもしれませんが、景色が良く、気持ちのいい道でした。
さて、A3スポーツバックです。
各部のブラッシュアップとエンジンの変更が行われています。
2・0TFSIクワトロ=2リットル直噴ターボ 200馬力/28・6kgm
1・8TFSI=1・8リットル直噴ターボ 160馬力/25・5kgm
1・4TFSI=1・4リットル直噴ターボ 140馬力/20・4kgm
というラインアップ。
試乗したのは2・0TFSIクワトロのSラインとグネティックライド付き。それに1・4TFSI。
1・4TFSIは、直噴の性能を遺憾なく発揮したとても優れたエンジンです。1・4リットルエンジンとは思えない動力性能を持っています。
もともと直噴エンジンというのは、耐ノッキング性能に優れているんだそうです。
そのため高圧縮比でターボを使えるんです。
どういうことかというと、ターボは過給器で圧縮した空気とそれに見合った燃料をシリンダー内に送り込みます。簡単に言うと、例えば1・4リットルのエンジンに2リットル相当の混合気を詰め込んで燃焼させるために、排気量以上のパワーやトルクが出るわけです。ただし、圧縮比が高いと異常燃焼(ノッキング)を起こしやすくなるので、それを防ぐために自然吸気エンジンよりも圧縮比を落とすのが一般的です。
ちなみにノッキングというのは、チリチリチリ…といった高音の金属のこすれるような音やカリカリ…といった音がします。これは異常燃焼によって起こる燃焼衝撃波がピストンやシリンダーを叩く音なんです。
クルマが極低速でスムーズに走らずガクガクとなってしまうのをノッキングと勘違いしている人がいますが、これはスナッチングと言い、まったく違うものです。
話を元に戻すと、直噴エンジンと言うのは、文字通りシリンダー内に直接燃料を噴射するためだと思うのですが、ノッキングが起こりにくい特性を持っているんです。そのためターボ車でも比較的高圧縮比でエンジンを回すことができるんです。
それの何がいいのかというと、圧縮比が高くできるということは、エンジンの爆発力がより強く引き出せるので、エンジン自体のトルクが高く保て、またエンジンピックアップ(≒レスポンス)が良くなります。それと同時に、排気圧力が強くなるので、同じタービンサイズなら、より低回転からターボを回したり、過給圧(ブースト圧)を高く設定することができるわけです。
1・4TFSIはそうした直噴エンジンのメリットを生かして、わずか1・4リットルの排気量で、まるで2リットルエンジンに匹敵するパワーやトルクと、レスポンスの良さを持っているのです。
まあ、これはアウディに限らず、フォルクスワーゲン・ゴルフ系の1・4TSIエンジンも同様ですけど…。
しかも燃費もいい。10・15モードで15・8km/L。7速Sトロニックが組み合わされています。2つのクラッチを持つ2ペダルMTです。まるでATのようなスムーズさを持っています。しかもトルコンがないので、エンジンパワーがダイレクトに駆動輪に伝わるので、パワーやトルク感が明瞭でとてもスッキリしたエンジンフィールがあります。100km/h時で7速2000回転ほど。高速なら20km/L近い燃費が期待できると思います。
そんなわけで、力強くしかも乗りやすいクルマでした。
個人的に気に入ったのは2・0TFSIのSラインでした。
Sラインだけにスポーティな引き締まったセッティングなんですが、突き上げの角が尖っておらず、歯切れのいいスッキリした乗り心地になっていました。
サスペンションがかすかに動くような領域でもきちんとダンパーが効いていて、クルマにアソビのような動きがでないんです。
しかもハンドルを切ったときの応答性が穏やかなので、クルマがピクピク動かないんですね。非常に落ち着いた乗り味になっています。
パワー&トルクも200馬力/28・6kgmありますから、十分に速いと感じる加速性能を持っています。
そうそう、4WDはハルデックスカップリングを使ったクワトロシステムで、このハルデックスカップリングは例の第4世代が使われているそうです。
試乗しても、ほとんど常時4WDになっている印象で、抜群のリヤの安定感があります。
マグネティックライドはどうだったかって?
こちらは更にスポーティな走りを楽しみたい人向き、あるいは超高速巡航をしたい人向き……です。
乗り心地はかなり硬めです。
ノーマルモードでSラインのスポーツサスよりいくらか硬めに感じます。実際には同等くらいなのでしょうが、荒れた道を走るとマグネティックライドが効いて減衰力を硬めにするので、そんな印象になるのだと思います。
スポーツは、激しくワインディングを攻めるときや、100ん十キロで高速道路を走るとき…つまりアウトバーンを走るようなシチュエーションに向いているといえます。
乗り心地は硬めなのですが、その分ステアリングの応答がしっかり出るので、例えば障害物回避のような場面では明らかにアドバンテージがあると思います。
なので、ハイスピード志向、スポーツ志向の人には向いていると思います。
ただクルマの素性の良さがよりよく感じられるのはSラインではないかと思いました。試乗していないので断言は出来ませんが、2・0TFSIに標準装備となるスポーツサスも良さそうです。
TTもそうなのですが、今回TT、A3スポーツバックのクワトロシステムに採用された第4世代のハルデックスカップリングは、限りなくトルセンセンターデフを使った50対50のクワトロシステムに近い動きをするようにセッティングされていて、高い印象点をつけられると思いました。
気になったところでは、ブレーキが挙げられます。
制動力自体はまったく問題ないのですが、下り坂で、150キロくらいから踏力を一定にして0・6Gくらいのブレーキングをしたとき、パッドとローターの間にガスが入ってしまって制動力が微妙に変化するような感触が出るんです(非日常的な使い方ですけど)。
たぶん、もう少しスポーツ性の高い硬いタッチのブレーキパッドを使うと、こうした状況でのフィ-ルは改善されると思うのですが、乗用車としてのブレーキペダルの踏み応えと扱いやすさを考えると、あまり硬いタッチのブレーキは普段使いにくくなる可能性があるので、一概にどちらがいいとはいえません。
ブレーキパッドに関しては、パッドの材質や特性によって、特に低温時の効きなどにも影響するので、そのあたりも考慮しなくてはいけないところが難しいんですよね。