
先日X3M/X4Mが発表され、本筋?のセダンの3シリーズより前にSUVにS58型エンジンが搭載される、という異例の事態?になりました。もちろんその内にG20型の3シリーズにも搭載されてM3/M4としてデビューするはずですが、デビュー前に今までの6気筒3Lターボについてちょっと総括しようと思います。以前の記事とダブる箇所が多いと思いますが、お暇な方はチラ見してください(爆)。
いつも
大変お世話になっているこの方に、例によって比較グラフを作っていただきました。6気筒ターボの始まりのN54型とその後継のN55型エンジンは出力、トルクともに306ps/400Nmで性能曲線もほぼ一緒なので、N55エンジンから比較で載せています。参考にメルセデスベンツの新型6気筒ターボのM256型も載せていますが、これは「53」バージョンの高性能版です。
BMW最初の6気筒ターボのN54型は3気筒ずつからの排気を一つにまとめたツインターボ(パラレルツインターボ)でした。出力は306ps/400Nmなので当時の「35i」を名乗るのに十分な高性能ですね。
次のモデルチェンジ版のN55型はシングルターボに(名称としては「ツインパワーターボ」なので時たまツインターボと勘違いしている評論家もいますね)なったので一見ダウングレードのようですが、バルブトロニックが追加された事によってアクセル操作に伴うブースト圧の変化に対してより緻密なコントロールが可能になったようです。
全開時のレスポンスはN54型に対して0.5秒早くなっており、もちろん燃費の点でも有利なようです。様々な燃焼状態に応じて最適なバルブ駆動が出来るバルブトロニックとターボの組み合わせはこのエンジンが初めてで、以後色々なエンジンに応用されていきます。
次のB58型は、ディーゼルとガソリンとブロックが一緒といういわゆる「モジュラーエンジン」で、4気筒版のB48型や、6気筒ディーゼルのB57型とボア、ストローク、シリンダーピッチなどが共通で、N55型のオープンデッキからクローズドデッキにエンジンブロックが変化しています。排気側を見るとN55型エンジンと大差無いように見えますが
吸気側ではインタークーラーの配管が変化しており、N55型(左側)はグリル直後に配置された空冷式で吸気の配管が大回りだったのに対して、インテークマニフォールド直結の水冷式インタークーラーになっており、吸気系の配管の長さがかなり短くなっています。これによってブーストがかかった時のレスポンスの向上を狙っているようです。
ちなみに
前回のブログでは空冷のインタークーラーと記載してしまったのですが、よくよく調べるとこの構造で水冷のインタークーラーのようです。
4気筒のB48エンジンも同構造のインタークーラーのようです。
F30型のM3/M4にはB58型ベースのS型ハイパワーエンジンが搭載されるかと思ったのですが、「S55」という型式名の通りN55型をベースにしたエンジンでした。しかし、ターボはN54型のようなパラレルツインターボになっており、シリンダーブロックもクローズドデッキになっていたり、という大幅改造です。
インタークーラーもN55型がグリル直後の空冷式だったのに対して、シリンダーヘッドの直ぐ隣に水冷式のものが搭載されています。ツインターボのタービンからのものと思われる太い配管はシリンダーヘッドの上をまたいでおり、配管の短さや吸気抵抗の少なさとハイパワー対応が感じ取れますね。
そして今回のX3M/X4Mに搭載されているS58型エンジンはB58型をベースにしていますが、こちらも大幅改造です。
S55型と同様に、標準のB58型のシングルターボからツインターボ化されています。
インタークーラーはB58型のマニフォールド直結のものより大型化され、冷却効率が増しているようです。
これらの改良によってグラフ上でも先代までのエンジンに比べてかなりハイパワーの510ps/600Nmの出力です。ただ、微妙に気になるのは、低速からトルクピークまでの立ち上がりの曲線が「下に凸」のカーブを描いている点です。トルクピークに達するのも2600回転と、最近のターボエンジンに比較すると異例に高い回転です。トルクピークに達する2600回転でほぼ直角の屈曲点になっている部分のエンジンのフィーリングがどうなのか興味がありますね。もちろん色々な制御で分からなくしているとは思いますが。
こちらの記事からの引用ですが、480ps版のものでも低速トルクの曲線は全く同一で、トルクピークの維持域の回転数がやや下がっているだけです。エンジンの性能曲線だけから見ると、結構ピーキーな特性のようにも思えます。個人的には、このようなDMEチューン違いで高速側のトルクをちょっと伸ばしただけでグレードアップのコストを取るのは安易な商売な気がします(爆)。
実際にX3M/X4Mが日本に導入されるかどうかはまだ不明ですが、これがM3/M4に搭載された時にどうなるか非常に興味がありますね。性能曲線上はかなり高速よりのピーキーな特性にも思え、SUVには似つかわしくない印象ですが、Mモデルなのでありなのでしょうか。これがM3/M4ならば3000回転以下で走りを楽しむ事は無いでしょうから、しっかりパワーバンドに入って許容範囲でしょうか。
代々のエンジンを見てみると、B58型でロングストロークになったもののS58型はまたストロークは短くなって以前と同様になっていますね。
それにしても、初代のN54型がターボエンジンから想像するよりはややマイルドなブーストだったのに対して、Mモデル用のS型エンジンは最大トルクの発生回転域がどんどん高回転側にシフトしているのが凄いです。最近のエンジンとして6000回転近くまで最大トルクが持続するのは、以前の自然吸気の高性能エンジンに匹敵しますね。510ps/600Nmの出力も一昔前ならV8の4Lターボ並みの性能ですね。標準車のB58型にしても340ps/500Nmといったら、昔憧れだったメルセデスの500Eの326ps/50.0Kg-mを凌駕している訳で、隔世の感があります。
ちなみにメルセデスの新型M256エンジンも、エンジン本体に加えて電動スーパーチャージャーとモーターアシストも搭載しているため、実質のパワーはS55エンジンを上回っているので技術の進歩は凄いですね。
最近はALPINAのエンジンが本家BMWのMモデルに先行する事も多かったのですが、G20系のALPINAがどうなるのか、こちらも楽しみです。
Posted at 2019/03/19 08:41:06 | |
トラックバック(0) |
BMW | 日記