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2021年01月01日

『DMH17系エンジン』 "猛烈な勢い"で量産化

『DMH17系エンジン』 "猛烈な勢い"で量産化 DMH17系エンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 DMH17系エンジン(DMH17けいエンジン)とは、日本国有鉄道(国鉄)の気動車・ディーゼル機関車に搭載されていた直列8気筒、副室式ディーゼルエンジンである。

[写真・画像] 国鉄キハ20形気動車のDMH17Cエンジン。中央に燃料噴射ポンプが設置されている。出力軸となる左側に新潟コンバータDF115A液体変速機を装備。碓氷峠鉄道文化むらにて撮影

1 概要
 名称は、DMがディーゼルエンジンであること (Diesel Motor)、Hは8気筒であること(アルファベットの8番目)、17は総排気量が17リットルであることを表す。1951年(昭和26年)以降1960年代末まで、国鉄の気動車用標準ディーゼルエンジンの一つとしてこれを搭載した気動車が大量に製作され、日本全国で使用された。
 基本設計は太平洋戦争前に行なわれていたもので、重量の割に出力は十分でなく、設計の古さから燃費や始動性も芳しくなかったが、このエンジンを基軸とした標準化が優先して推進されたことや、DMH17系に代わる軽量で高効率な大出力エンジンがなかなか実用化されなかったこともあり、このエンジンを搭載した気動車は、一般用から特急用に至るまで長期量産されることになり、同時期に新製された私鉄向け気動車にも搭載された。
 国鉄のものについては、分割民営化後JR旅客各社に継承されたが、本州3社に継承されたものの一部はカミンズ社や小松製作所、新潟鐵工所製の軽量低燃費で出力の大きい新型の機関への交換が進められ、また老朽化による搭載車そのものの廃車も進んだ。
 私鉄への譲渡車や私鉄の自社発注車でも廃車や新型エンジンへの交換が進み、DMH17系エンジン搭載車は大幅に減少しつつある。このエンジン、特に縦型機関の独特のサウンド(三連符を刻む空気圧縮機と「コロンコロン」「カランカラン」と表現される特徴的な軽みのあるアイドル音、加速時の噴射音やエンジンそのものの激しい唸りなど)を聞く機会も非常に少なくなってきているが、小湊鉄道キハ200形気動車は2020年時点でも全車に本原動機が搭載されており、営業車ではたいへん貴重である。

2 歴史
 ルーツは鉄道省及び民間メーカーの協力により1932年(昭和7年)度に設計された定格100馬力の6気筒ガソリンエンジン、GMF13形エンジンである。鉄道省キハ41000形に搭載されたこのエンジンをベースに8気筒化したものがキハ42000形用の150PSガソリンエンジン・GMH17形エンジン(1935年(昭和10年))である。
 この時代から、ディーゼルエンジンがガソリンエンジンに比して経済性に勝ることは認知されており、鉄道省でも1935年(昭和10年)頃から気動車用ディーゼル機関の開発が試みられた。1935年以降、GMF13形・GMH17形エンジンと同等スペックのディーゼルエンジン開発が計画され、当時高速ディーゼルエンジン開発に取り組んでいた新潟鐵工所、池貝製作所、三菱造船の各社競作により試作が行われた。各社のエンジンはほぼ同クラスの性能・サイズであったが、燃焼室構造などには差異があり、新潟LH8形、池貝8HSD13形はいずれも渦流室式、三菱8150形は直噴式で、部品の相互互換性は無かった。試作エンジンは当時の標準型機械式気動車に搭載され、試験が繰り返された。
 この結果を基に、鉄道省と各車両メーカーによる共同の基本設計が進められ、1941年(昭和16年)には完了したものの、太平洋戦争の開戦と燃料事情の悪化により、量産化・実用化開発は中断した。
 終戦後、気動車用として早急に実用に供しうる高速ディーゼルエンジンが求められたことから、旧式ではあるが既に基本設計や部分試作が済んでおり、資料や試作部品も残存していたこの直列8気筒エンジンが、再度実用化開発の対象とされた。
(第二次世界大戦中の急速な技術進歩によって、開発再開の時点ですでに旧式化していた。1955年に東急車輛製造が台湾鉄路管理局(台鉄)向けに製造したDR2500型気動車にはカミンズ製NHRBS-600エンジン(機械加給12.2L 300HP@2100)搭載)

 1950年(昭和25年)から本格的に量産に向けた改良設計・製作を再開し、1951年(昭和26年)2月にDMH17形エンジンが完成した。初めてこのエンジンを搭載したのは、元ガソリンカーのエンジン換装車であるキハ42013である(当時の経緯についてはキハ07形の項に詳しい)。続いてこれを6気筒に縮小したDMF13型エンジン(初代)も作られた。 
 当初は縦形シリンダーで定格出力は150馬力であったが、適宜改良され、出力は1958年(昭和33年)までに180馬力まで向上した。しかし、エンジンの天地寸法が大きいうえ、客室内にシリンダーヘッド点検(主にグロープラグの点検とバルブ回りの整備)用の蓋を設けねばならず、低床化と騒音・油臭対策が必要となるキハ80系の開発にあたり、横形(水平シリンダー形)に再設計された。それが1960年(昭和35年)開発のDMH17Hで、型式名末尾の「H」は水平 (Horizontal) を意味する[1]。以後1971年(昭和46年)までの約10年間、国鉄気動車の標準型エンジンとして大量に製作された。
 DMH17系エンジンは1952年(昭和27年)以降、私鉄が導入した気動車にも広く採用されたほか、気動車や客車のサービス電源用発電エンジンとして、またDD11形のような小型の機関車や、動力の必要な事業用貨車等にも搭載された実績がある。完全な新製車両でこの系列のエンジンを搭載して製造された最後の事例は、1977年(昭和52年)製の小湊鉄道キハ200形気動車最終増備車2両で、DMH17Cを搭載していた。
 2016年(平成28年)1月現在でも、ごく少数が現役の気動車用エンジンとして実働している。

4 その他
・量産型エンジンの製造は、振興造機(現・神鋼造機)、新潟鐵工所(現・IHI原動機)、池貝製作所、新三菱重工(現・三菱重工業)、ダイハツ工業(現・ダイハツディーゼル)による。
・気動車用として組み合わされる変速機は、振興造機TC2系または新潟コンバータDF115系液体変速機が標準であった。いずれも200PS級のエンジン容量に対応可能で、DMH17系に適合した性能であった。他には機械式変速機と組み合わせられた事例もあり、私鉄気動車や機関車などでは別形式の液体変速機を用いた少数例もある。
・エンジンオイル容量は車種によって異なるが、50リットル前後。
・冷却水容量は車種によって異なるが、約300 - 400リットル。
・2個のスターターモーターや予熱栓(グロープラグ)も備えるが、燃焼室の表面積が大きいため始動性が悪く、特に冬季などは冷却水の凍結防止の見地から、運転時・滞泊中を問わず24時間エンジンを回し続けていることが多かった。寒冷時再始動が極めて困難であるだけでなく、1958年以降製造の一部形式で冷却水を車内暖房熱源としていたことにもよる。
・DMH機関の低出力が早くから問題になっていたため、国鉄では1954年から1955年にかけて出力増大策としてルーツ式スーパーチャージャーによる過給を検討、エンジンメーカー協力で試験された。ベースエンジンをDMH17Bとし、定格出力は無過給の160HPから200HPに向上を図った。振興造機、ダイハツの2社がイギリス・ゴッドフレー製、新潟鐵工は日立製のルーツ過給機を装備してキハ45000に搭載、25‰登り勾配での均衡速度を5ノッチ時に23km/hから36km/hに向上させる成績を挙げた[2]。だが1956年まで勾配路線の日光線で気動車エンジンとして運用した成績は芳しくなく、本命たる気動車用DMHエンジンには制式採用されなかった。DMHエンジンの過給機は、後年、少数の私鉄機関車や発電用モデルで限定的に採用されるに留まった。
・国鉄でのDMH17系は排気管過熱事故を多発させ、これを防ぐ見地から1960年代以降、全出力状態での運転は5分間に制限された。液体式気動車でエンジンが全出力となるのは主幹制御器の「5ノッチ」段階であり、この運用制限は俗に「5ノッチ・5分」と言われた。乗務員は連続勾配などでの運転では、頃合いを見て回転を落とさねばならなかった。
・JR東日本からDMH17系エンジンが一掃されたのは、1988年(昭和63年)3月、キハ58系気動車改造のジョイフルトレイン「アルカディア」が上越線で臨時列車として運転中、エンジン発火事故を起こしたのがきっかけである(死者はなかったが、気動車1両が全焼により廃車)。これに伴い、JR東日本はDMH17系エンジン搭載車について、1992年(平成4年)までに新型エンジンへの置き換えを終えた。
  当時の東日本旅客鉄道会長・山下勇(1911年(明治44年) - 1994年(平成6年))は、元・三井造船会長で鉄道業界人ではなかったものの、戦前に船舶エンジンの開発に携わったことのある技術者であった。アルカディア事故の報告を受けた山下は、すぐさま事故原因の一つとおぼしいDMH17Hエンジンの設計図を取り寄せさせ、図面を見るなり「これは戦前のエンジンではないか。まだこんなエンジンを使っていたのか!?」と驚愕したという(DMH17H自体は1960年の開発ではあるが、原設計の多くはそれ以前のDMHエンジンからの改設計であり、山下がまさに現役のエンジニアであった当時のエンジンの特徴を備えていた)。同様な火災事故の発生を危惧した山下ら首脳陣は、すぐにエンジン更新の指示を発し、短期間でDMHエンジンの置き換えが完了した[3]。

6 主な搭載車種
6.1 旧国鉄→JRグループ
・国鉄キハ07形気動車
・国鉄キハ44000系気動車
・国鉄キハ44500形気動車
・国鉄キハ08系気動車
・国鉄キハ10系気動車
・国鉄キハ20系気動車
・国鉄キハ35系気動車
・国鉄キハ37形気動車
・国鉄キハ45系気動車
・国鉄キハ55系気動車
・国鉄キハ56系気動車
・国鉄キハ57系気動車
・国鉄キハ58系気動車
・国鉄キハ80系気動車
・国鉄DD11形ディーゼル機関車

6.2 私鉄各社
注 : 譲渡車、機関換装車を除く

・DMH17
  羽後交通 : キハ1形
  鹿児島交通 : キハ100形
  加越能鉄道 : キハ15001
  関東鉄道 : キハ42002
  熊延鉄道 : ヂハ200形
  津軽鉄道 : DC200形
・DMH17B
  有田鉄道 : キハ250形
  茨城交通 : ケハ401、ケキ102
  大分交通 : キハ600形
  小湊鉄道 : キハ6100形
  島原鉄道 : キハ4500形、キハ20形
  羽幌炭礦鉄道 : キハ1001
  夕張鉄道 : キハ250形
  留萠鉄道 : ケハ502、キハ1000形
・DMH17B1
  小田急電鉄 : キハ5000形、キハ5100形
・DMH17BX
  茨城交通 : ケハ402
  三井芦別鉄道 : キハ100形
  夕張鉄道 : キハ300形
  雄別鉄道 : キハ49200Y形、キハ100形
・DMH17S
  羽後交通 : DC1、DC2
  小名浜臨港鉄道 : DD351
  留萠鉄道 : DD201
・DMH17SB
  小名浜臨港鉄道 : DD352、DD353、DD451
・DMH17C(B形からの改造を含む)
  茨城交通 : ケハ600形
  岡山臨港鉄道 : 103
  小名浜臨港鉄道 : DD1、DD2、DB253
  加越能鉄道 : キハ180形
  関東鉄道 : キハ532形、キハ700形、キハ0形
  小湊鉄道 : キハ5800形、キハ200形
  上武鉄道 : DB102
  島原鉄道 : キハ26形、キハ55形
  津軽鉄道 : キハ24000形、DD351
  南海電気鉄道 : キハ5501形、キハ5551形
  羽幌炭砿鉄道 : キハ220形
  北陸鉄道 : キハ5300形
  北海道拓殖鉄道 : キハ301
  留萠鉄道 : キハ1100形、キハ2000形
・DMH17H
  関東鉄道 : キハ800形、キハ900形
  同和鉱業小坂製錬 : キハ2100形
  名古屋鉄道 : キハ8000系
  富士急行 : キハ58形

7 ギャラリー
8 脚注
[1]^ もっとも水平シリンダー型のDMH17系機関 (DMH17H) は、これに先立ち、既に1954年(昭和29年)時点で振興造機により、日本車輌製造本店が12両を製造したインド国鉄1000mm軌間向け液体式気動車用として180ps形が製造されていた記録がある(西尾源太郎『気動車行進曲』鉄道ピクトリアル50号、1955年9月)。これは該当車両が、723mmという小径車輪を用いていたことによる低床構造への対処であったと見られる。
[2]^ 吉田正一(鉄道技術研究所)「過給機付ディーゼル動車試験の概要」(『交通技術』1955年8月号 p13-16)に基づく。
[3]^ 山之内秀一郎 『JRはなぜ変われたか』 毎日新聞社、2008年、ISBN 978-4-620-31832-5

9 関連項目
・気動車
・ディーゼル機関車
・日本の気動車史

最終更新 2020年4月13日 (月) 06:09 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)


≪くだめぎ?≫
 原型は国鉄というより、"鉄道省"が開発した1937年(昭和12年)に3両が試作されたディーゼル機関搭載の派生形式であるキハ42500形(初代)で"試験"が始まったモノである。戦後に国鉄が猛烈な勢いで量産したディーゼルエンジン型式である。戦前に登場したガソリンカーをエンジン換装も多数行われた。
 後に昭和後年・平成にて新型エンジン換装も行うべきだったが、廃車までそのままエンジンも使い続けた"伝説"のエンジンと言うべきか。1988年(昭和63年)、JR東日本会長・山下勇(元・三井造船会長であり、戦前に船舶エンジンの開発に携わったことのある技術者)が、DMH17Hエンジンの設計図を取り寄せさせ、図面を見るなり「これは戦前のエンジンではないか。まだこんなエンジンを使っていたのか!?」と驚愕したというモノを平成初期でも使用していたJR自体は・・・。
 山下さんがこのエンジン使用した「白鳥」が北陸トンネル通過をどう思うかも聞きたかった思いもある。
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Posted at 2021/01/01 15:02:18

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