
最高検納得させた地検執念の立証
尼崎脱線事故で社長起訴(2009/7/9)
尼崎JR脱線事故で神戸地検が8日、山崎正夫JR西日本社長を在宅起訴した。兵庫県警の書類送検から10カ月。立証には高い壁が立ちはだかり、最高検と激しい応酬の末、立件にこぎ着けた。
「乗客106人が死亡した大惨事。何とかしたいと思った」と地検関係者。しかし、安全対策の責任者だった現在の経営トップただ1人に刑事責任を間う判断をめぐり
「社長を狙い撃ちにした無理な捜査」と、疑問視する声も出ている。
■頭を冷やせ
当初、最高検の反応は冷ややかだった。関係者の事情聴取を一通り終えた昨年12月。
「危険性を予測できたのに自動列車停止装置(ATS)設置を指示しなかった」として、地検が山崎社長起訴の方向性を打診すると「そもそも過失犯に問えるのか」と突き放された。
今年1月、東京・最高検の一室。地検(大阪高検と最高検の担当者が4〜5時間にわたって向き合った。
「ATSが設置されておらず脱線の危険性が高いカーブは、事故現場のほかにもあったはず」
「なぜ山崎社長1人なのか」。
立証の問題点を指摘する声が響く。
「頭を冷やせ」。そんな強い言葉まで出た。
■ 一変
〃宿題″を出された格好の地検は膨大な資料と向き合い、全国の「危険カーブ」千力所以上を事故現場と比較する作業に取り掛かる。1日数本しか列車が通らないカーブ。駅の間近で全列車が徐行運転するカーブ。事故現場の危険性が次第に際立っていった。
どこを探しても、あえて急カーブに付け替えた例がないことも判明。
「危険性が増したのは明自なのに、事故防止策を取っていないのは明らかな過失だ」。春を迎えるころ、地検の雰囲気は一変する。「何とかなる」
5月27日にはJR西本社に異例の再捜系を実施。ATSの機能を深く理解した上、同様の急カープで1996年に賃物列車が脱線したJR函館線の事故の報告を受けていたのは、山崎社長ただ1人との結論に至る。
「現場の意向を尊重してもいいのでは」。今年1月以降に人事異動もあり、最高検の風向きが変わっていった。6月下旬、ゴーサインが出た。
地検は昨年9月以降、還族や負傷者に異例のアンケートをして捜査への要望を聞いたほか、希望者との画談も重ねた。
「結果の重大性と遺族の声が大きかった」と地検関係者は振り返った。
■市民感覚
ただ、今回の起訴には異論も。ある検察関係者は「山崎社長が刑事責任を問われるのなら、歴代社長や直属の部下、その後の鉄道本部長には責任はないのか。最初から狙い撃ちしているようにみえる。理解に苦しむ」と疑間を投げかける。
4年前の事故当初から捜査にかかわった兵庫県警の捜査員でさえ「果たして山崎社長1人だけで事故を回避できたのか」と首をかしげた。
神戸地検の幹部自らが
「すべての人が手をたたいてほめてくれるとは思っていない」と認める経営トップの起訴。検察審査会制度が改められたことが影響しているとの指摘も。審査会が起訴相当と議決後、検察が再び不起訴にしても、もう一度起訴相当を議決すれば起訴されるからだ。
「検察が市民感覚や被害者の声をより強く意識せざるを得なくなった結果ではないか」。検察関係者は話した。
デーリー東北より
最高検察庁は
1.日勤教育という"ペナルティー"を止めるか。
2.現場にATSを設置してから運行するか。
を迫った内容だと思う。勝手に。
JR宝塚線(福知山線)は阪急線と競合していて、路線改良当初から余裕がない運行時分だった。ベテランの現場担当者(運転士・車掌・駅員)でも、やっとで運行している状態であった。更に事故を起こした列車は特に余裕が無く、優等列車並にベテラン運転手を配置するべきである。日勤教育という"ペナルティー"を使い、運行を維持していた。本来、日勤教育は未熟な運転士を教育・指導する所であるはず。しかし、若手を困難な列車に回すくらいだから、人的に余裕があるはずもなく、指導が出来るはずもない。目下、日勤教育が日常茶飯事化して、ほされる現場だった。このことが神戸地検に執念の立証をさせた"原動力"になったはずだ。
91年の信楽衝突事故から10数年で事故を起こし、これではJR西日本の体質だと言われても仕方がない。この裁判では、当時の安全対策の最高責任者の鉄道本部長の判断ミスと指摘している。その人を平気で、社長にしたJR西日本の幹部たちの判断も問われるだろう。急にJR西日本の社風が変わるはずもなく、それ以前から人的に余裕が無かったから、この急カーブは長い直線上にあり危険と分かっていたはずである。現場を見た人は。
だから、裁判所はJR西日本社長という象徴に対して、「日勤教育」したといえなくもない。その社長が当時の安全対策の最高責任者だったから、執念も持つし、最初から狙い撃ちと思われても仕方がない。
事故は一つのことだけでなく、必ず複合的なことで起こる。一つのミスは必ずバックアップして、事故を起こさないように整えるべきである。人も、装置も。
Posted at 2009/07/12 15:49:43 | |
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